職員室の力学をかんがえる

学閥

 現在では教員の出身大学は多様化しているものの、一昔前までは地元の教育大学(旧師範学校)を卒業した者が大半であった。そのような職場においては、職務上の同僚である以前に、出身校の先輩・後輩としてのつながりが大きな意味を持つことがある。

世襲

 教員のなかには祖父母の代から教員をしているという「教師一族」の生まれの者もいる。

恩師門閥

 地元出身であれば、自身が児童・生徒であった頃に担任されたひとと同僚として再会することもある。間接的な知り合い(恩師の同僚や親族)を含めると、非常に濃厚な関係性の紐帯に縛られたコミュニティといえる。

個人の評価は後

 そこでは、個人としての新人教員でなく、「○○先生の一門」「△△学級の卒業生」「□□中学校××部第●代部長」といった過去に所属していたコミュニティにおける地位が先入観として共有される。

外様のディスアドバンテージ

 着任前からのつながりや相互監視が強固な共同体において、新規参入者である非「地元出身者」・非「学閥」の新人教員は、多くの企業における新入社員同様のゼロからの関係構築が求められる一方、採用・任用同期のなかに「地元出身者」「学閥出身者」が存在した場合、関係構築という点で大きなディスアドバンテージを負うこととなる。「非世襲」の場合には、着任時のふるまいの作法も知らず「手土産」を持参しない非常識な新入りという不名誉な評価を受けることにもなる。

面倒見がよいのか

 多くの教員は面倒見がよいとされているが、一方で教員とは、些細なふるまいや思考・感覚のズレに非常に敏感かつ不寛容である。彼らは自分の理解の範疇における悪や不能・不全については寛容であるが、暗黙の了解を忖度する能力があると期待させておきながら、その期待を裏切った「努力不足」の者に対しては不寛容どころか攻撃性をも向けることがある。

流動性とSNSへの期待

 学校・職員室固有の人間関係の複雑さと奇怪さについては、今後教職志望者の減少に伴う臨時教職員・社会人経験のある転職者教員の増加によって改善されていくことが期待できる。また、SNSの発達によって、悩みを共有したり、気軽にベテラン教員アカウントに質問を投げたりすることができるようになっているため、病むまでに至らないケースが増えていくとおもわれる。


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