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『女子大に散る』

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成熟まぎわの花々を活写しつつ条理なき「大学」を剔抉する連作短編集、各4000字程度・第一部として全10話。
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#語学

『女子大に散る』 第7話・桜色ポリティクス

 面接にやってきた午後の女子大キャンパスは、うららかな晴天の下で不気味なほど静かだった。 「どうぞお掛けになって」 「失礼します」  後に講師控室と知ったところで年配の女性と差し向かった。麗しい言葉づかいに誘われてのっけから談笑してしまう。 「先生ずいぶん背が大きいのね」 「それが中身は空っぽなんです」 「あらあら、そんなことないでしょう」  トヨムラ先生は、当時まだ三年めを迎えようとする看護学部の構想段階から関わってきた初代学部長で、ターミナルケアが専門の元看護師で

『女子大に散る』 第5話・イノチ短シ恋セヨ乙女

 はやばや女子大勤めにも慣れて無聊に喘ぎだした春、百名足らずの新入生のうち最初に顔と名が一致したのはUさんだった。五月連休明けの授業後、教科書を手にやってきた。 「せんせえ」  普段耳にしている間延びの「せんせ~」とは異なる十数年ぶりの「感性」に同じ抑揚で、一瞬返事に窮してしまった。いつも廊下側の前方に一人で座っている理由が閃光していたのである。 「……せんせえかあ」 「あっすみません──」  漏らした感慨にきれいな奥二重が伏せってしまい、あわてて釈明する。 「いや