『女子大に散る』 第10話・薑
臥薪嘗胆が報われて女子大の看護学部に常勤採用を打診されたのは、コロナ禍二年めの春だった。契約を更新した矢先だったが、自分の仕事が前学部長にして稀代の乙女トヨムラ先生の宿願でもあったれば、あと一年くらい時給換算して600円程度でも辛抱できた。
「あら先生、おつかれさま」
定年を過ぎていた先生は、その年度だけ嘱託として残ることになっていた。出勤日は毎週のようにお呼ばれして、お茶とお菓子つきでいろいろ話した。楽しかった。
「いつもご馳走いただいてすみません」
「いいのいい