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#74 専門職の「管理職以外のキャリアパスが見えない」に応える 24/2/8

みなさん、こんにちは。
人事制度、とりわけ報酬制度、評価制度と専門職スペシャリストのキャリアパスを考えてみます。

発端は、人事には、従業員からしばしばこんな声を聞くからです。
「マネージメント職にならないと、給料が上がらない」
「専門職やスペシャリストのキャリアパスが見えない」
この手の、スペシャリストのキャリアパス(金銭報酬含む)がない、見えない、は割と多くの企業人事も課題と感じるところがあるのでは?と考えます。
管理職・マネージメント職以外に用意されていないと、多くの従業員が感じてしまうのはなぜなのか、考察してみます。

まず、ハード面の人事制度を見ます。
当社では、十数種の職種コースを1つの等級制度に載せています。マネージメントも one of themです。現場の仕事を分解すれば、十数種ではカバーしきれず足りません。しかし細分化し過ぎず、一方で専門分野が分からなくなるほどには括らない思想を反映しています。従業員や評価者の実運用にも堪えるよう、最大公約数を志向した結果です。

マネージメントを含めどの職種コースも、給与バンドの上限は同じです(理論上は青天井)。一部、ある地点で、キャリアステップとしてのコースを乗り換えるために上限がありますが、その次の接続と受け皿を設計・設定しています。

ですから、等級制度と報酬制度上は、マネージメント職だけ年収が上がるルールにはなっていません。
では、役職、肩書きの名誉的にはどうか、です。こちらもスペシャリスト職にも肩書きと、専門分野を呼称するタイトルを名乗って良いルールとしています。ですから、スペシャリスト職が自分の専門に誇りを持つこと、箔がつくことなど名誉的な部分も制度フォローはしています。

では、なぜ、従業員がキャリアパスが見えないと感じてしまうのでしょうか。

そう、ソフト面の評価です。
制度で言えば評価制度です。
が、評価制度そのものよりも、その運用実態が、評価を受ける側の従業員にそう感じさせているのです。
運用実態とは、主に2つの論点です。
1つは、上級専門職の人数と出現度(サブ的にその社内露出度)です。
もう1つは、自分自身の評価処遇のされ方です。

まず上級スペシャリスト職の出現度は、マネージメント職との相対比較です。
マネージメント職は組織図上や社内システム等に露出する肩書き、決裁権限など、存在自体が目立ちます。それは出現度が感覚的にわかりやすいことを意味します。
実際に、わたしの所属する会社でも、4,5年前まではスペシャリスト職の上位格付け者は管理職に比べてかなり少数でした。現在も比べてしまうとその分布は、上級専門職のほうが少ないことは事実ですが、在りようはかなり変えてきています。

この「変えてきた」点が、2つ目の「自分自身の評価処遇のされ方」に関係します。
評価者側の上長は、スペシャリスト職にも小チーム内のマネージメントスキルを求める傾向にあります。
たとえば、後輩やスキル若年者を育てる(OJT)、フォローし面倒を見る、などです。
あるいは、スペシャリストたる知見を部門組織にフィードバックする、です。
広義の組織貢献要素を求めがちです。これは当社のビジネス性質上も多分に影響しているため、一概に評価者の上長を責めることはできません。
また、コミュニケーション力や論理性、主体性などの一般ビジネススキルの上達を求めがちな点もあります。
もちろん本質的に、現実的にはそれはめっちゃ大事ですし、成果の半分以上を占める構成要素だと、わたしも考えます。

この評価基準要素を、できるだけ取り除くことを、人事部門が後押ししました。人事部門のリーダーシップの発揮です。
具体的には、評価キャリブレーション会議を主な場面として、何年もかけて、人事から評価者たちに問いを投げつつ、部門の目線を少しずつアップデートしています。
「もっと専門性の部分に主点を当てて評価するとどうなりますか?」
「組織貢献要素から離れて評価するといかがですか?」
「(専門)分野のマーケットバリューだと年収はこれくらいですね」と採用市場の観点からの提示、
「お客様からいくらのチャージがいただける見込みですか。お客様にいくらのチャージを提案しますか」と生々しい問い、
このような、硬軟織り交ぜた合わせ技の論点提示を問いを投げつつ、評価基準の目線を合わせながら、スコープを合わせていきます。

このようにして、「スペシャリスト職の専門分野とその価値を評価された」と実感することです。そのスペシャリストの従業員が少なくとも3割を超えてくると、マネージメント職以外のキャリアパスがない、スペシャリストが評価されにくい、の声は現実とともに少なくなってくると考えます。

その実現に向けて、人事部門はリーダーシップの発揮と人事制度運用で価値を発揮し続けたいところです。

皆さんの会社では、従業員からどんな声がありますか?
それでは、また。

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