ラブホの正社員15日目

皆さんはハメ撮りを撮ったり撮られたりした事はあるだろうか。僕はまだない。カメラワークに自信がないからだ。きっと喘ぎ声と共にピストンに揺れる相手の残像のみが映る残念な心霊映像になってしまうだろう。それはそうと、他人の情事を覗き見たい人は割といるらしい。今日はそんなお話だ。

「美女とハメハメ〜ハメ撮り〜🎵」

朝から最低な歌が聞こえる。しかも客室からではない。隣の男からだ。歌の主は亀田さんという同僚である。亀田さんは昨春に印刷会社を定年退職し、週3勤務のアルバイトとしてこのラブホで働いている。女好き、ギャンブル好き、労働嫌いな高田純二似の65歳だ。いつもこの最低な歌を様々な曲のメロディで歌っている。そんな歌がフェードアウトした。

「ハメ撮り〜…白秋くん、これなんだろ」

そこにはコイル電池のような形状と大きさをした黒い物体。中央には透明の突起。ティッシュケースの下に隠すようにおいてあったらしい。小型カメラではないかと思い当たるのにそう時間はかからなかった。その場では触らず警察に通報し、その日の午後には警察が回収にきた。一応部屋の出入りがわかる監視カメラの映像をいくつか共有し、その日は退勤となった。

家に帰りいつものように布団でTwitterを見ているとフォロワーのリツイートした動画が回ってきた。ハメ撮りのアングルで撮られた同人AVだろう。興味本位で再生する。小汚いおじさんと美女が微妙にズレたアングルで絡み合っているその光景に既視感があった。そう、職場の102号室である。客にも見覚えがある。多分隠しカメラの犠牲になったのだろう。見てはいけないものを見てしまった…動画の再生をやめて会社にメールで報告した。

翌月になって隠しカメラを仕掛けた犯人が捕まったらしい。従業員の中でも良客と評判のうちの常連だった。誰も信じられないな、職場に行くのが憂鬱になった。

「美女とハメハメ〜ハメ撮り〜🎵」

亀田さんは最近このフレーズを口ずさまなくなった。「隠し撮りがあった職場でそんな歌歌えるかよ、不謹慎だ」と言っていて可愛らしかった。

その数ヶ月後、亀田さんは解雇されるのだが、それはまた別の機会に。

甘いもの食べさせてもらってます!