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ラブホの正社員4日目

部屋中が濡れる。「部屋」は主語としては大きすぎるのでピンとこないかもしれないが、ラブホで働いているとこんなこともある。今日は4日目の話だ。

部屋は基本2人1組の2ペアで清掃をするのだが、今日は潮と酒でとんでもなくびしょびしょに濡れた部屋に当たってしまった。テレビやソファー、洗面所、トイレに至るまで全てが排泄物と酒で汚されている。部屋中に転がった缶は安定のストロングゼロだ。それを見た僕の心情は、初めて東大寺の大仏を見たときのそれに似ていた。素直に感動してしまった。

排泄物で濡れた部屋はまず、使用してあるシーツを床に投げて水気をとり、その後に薬剤を撒く。消毒も入念に行う。これを部屋を4分割して繰り返す。ベッドの深層に潮が染み込んでいる場合はマットレスを交換しなければならないので面倒だが、今日は大丈夫そうだ。高校の頃に200点満点の数学のテストで8点をとったのだが、赤点が6点以下だったことがあった。同じ安堵を感じている。異臭に吐きそうになりながらもなんとか清掃を終えた。

上記のように、客の使用後の部屋に清掃業務を行う上での問題があった場合は廊下の防犯カメラの映像などから個人を特定し、出禁などの対処をする。潮吹き系の事件の多くは外国の方のダイナミックな行為が原因なので今回もそうかと思い清掃スタッフで映像を確認したのだが、写っていたのは60代後半から70代前半ぐらいの小さな熟女だった。あの部屋に放出された水分は拭き掃除をした体感で10リットルじゃ説明がつかないほどの量だ。何度シーツを絞ったかわからない。熟女に背筋が凍ってしまった。彼女は清掃スタッフの間で「黒部ダム」と呼ばれている。

一寸の虫にも五分の魂、小さな老婆に10リットル。まあそんなもんか。


甘いもの食べさせてもらってます!