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『きみのためのエデン』考察・予想

「大金を賭けると こいつも震えるほどおもしろい‥‥‥‥!」

(『賭博堕天録カイジ』1巻)

 そう言って村岡が取りだしたのは「UNO」だった…

 カイジに電流を走らせておいて、実際にプレイするのは地雷式麻雀「17歩」。
 なら「UNO」はなんだったんだよ、と言いたくなるところだ。

 簇生するウェブマンガ市場で、集英社が新たにタテヨミマンガの配信サービス「ジャンプTOON」をローンチした。
 そこで連載を開始したのが原作:斜線堂有紀、作画:Whomorの『きみのためのエデン』だ。

 みんな『ニセコイ』や『五等分の花嫁』といった犯人当て(フーダニット)と恋愛リアリティー番組、あるいはギャルゲー形式のラブコメの組合せが大好きだ。
 だが、みんなが大好きなせいで模作も陸続として後を絶たない。
 いいかげんみんなも、放課後の文化系部活動の部室で男子高校生が「またUNOかよ」とボヤくように飽きあきしていることだろう。

 だが、犯人当て(フーダニット)形式のラブコメも命を賭ければ震えるほど面白い…!

 もちろん、デスゲームもののクソ漫画は濫出しているし、『ラブデスター』のようにラブコメと合体させたものもある。
 だが、『きみのためのエデン』は推理小説家が原作を務めているだけあって犯人当て(フーダニット)が要領を得ている。

・あらすじ

 12年前、1年間に渡り6人の少女とともに誘拐監禁された工場勤務の青年・箱崎有生(ゆう)
 有生の前にある女性が現れる。その女性はともに監禁された少女の1人・東山結唯(ゆい)だった。
 再会するや否や、結唯は有生にキスをせがむ。だが、結唯は頭部が爆発して死んでしまう!

 有生の前に現れる、残る5人の誘拐監禁の被害者たち。
 彼女たちが言うには、ビデオメッセージが送られ、それによると有生とキスをせずに24時間が経過すると爆死するらしい。
 爆死を避けるため、有生と5人は共同生活を送ることに決める。
 だが、有生には秘密があった。12年前、6人の誰かから「鍵」を渡されていたこと。そして、その「鍵」を使えば爆殺装置を解除できるだろうこと。
 6人のうちの誰が記憶の少女かは不明。しかも、残る5人のなかには殺人者までが忍びこみ――?

・登場人物

箱崎有生(ゆう)

東山結唯(ゆい):?
一ノ瀬初奈(はつな):東名音楽大学1年生
赤神愛(あい):フリーター
花室天(てん):晴海芸術大学1年生
月乃いつか:?
春風合歓:宝上大学理工学部1年生

・考察および予想

・本命:花室天
 なぜならCTスキャンを受けているから。

 頭部の爆殺装置を外科的に除去することを試みる展開はかならず来る。
 そのとき、外科的に除去できない理由として、爆殺装置がCTスキャンに反応して作動するという展開になるだろう。爆殺装置の保護のためには、X線感知器と、感光器、感温器くらいは装備しておきたい。一ノ瀬初奈か月乃いつかあたりがいい当て馬だ。
 ここで伏線! 花室天は病弱で日常的にCTスキャンを受けている!
 
考えられることとしては、あらかじめ「鍵」を使用していた、爆殺装置がスタンバイで稼働する以前にCTスキャンで発見していた、あるいは、そもそも現在の人質脅迫事件は自作自演で、12年前の誘拐監禁事件とは無関係などがある。
 メタ読みとして、花室天は『五等分の花嫁』で優勝した四葉に相当するということもある。

・単穴:東山結唯
 首無し死体だから。

 首無し死体だから当然の被害者入れ替わりトリック。
 身代わりを立てて爆殺。屋敷の屋根裏などに潜み、有生の就寝中に爆殺装置をリセットしていた。被害者入れ替わりは自由に動けるようにするため。機会を見て他の被害者を殺害するつもりだった。
 この犯行には当然、共犯者が必要になる。屋敷の主である赤神愛だ。赤神愛は富豪には見えないため、東山結唯が本来の屋敷の所有者で、赤神愛にそう装わせていることが思しい。その場合、赤神愛が屋敷について無知だという伏線が後出する可能性がある。
 殺人犯の爆殺装置を快く解除するということはあり得ず、かつ、東山結唯が現れれば犯人であることは自明だ。よって、赤神愛の爆殺装置を解除し、東山結唯が爆殺装置によって有生と結ばれるという犯行計画だったのだろう。

 だが、この予想は本命でも対抗でもない。
 推理小説は競馬ではないからだ。
 首無し死体が出て真相が被害者入れ替わりトリックというのはあまりに見え透いている。

 それでも、デスゲームものの定番の展開を誤導(ミスリーディング)にしているなら十分に対抗馬でありえた。だが、東山結唯の爆死の不自然さに作中で言及しているようでは、被害者入れ替わりトリックは誤導でしかあり得ない。

・対抗:一ノ瀬初奈
 被害者犯人。

 一ノ瀬初奈は第1の犯行の犠牲者だが、まず助かるだろうし、この犯行は場当たり的で杜撰すぎるため、まず便乗犯の仕業だ。利口な犯人なら、どうせ頭部は爆発するのだから、頭部に外傷を与える方法で殺害し、死因を爆死に見せかけてアリバイ工作をするくらいの小細工は弄するだろう。花室天は便乗犯という小物ではあり得ないため、犯人は赤神愛か月乃いつかだろう。この予想については鉄板だ。したがって一ノ瀬初奈が真犯人であり得る。ただし、犯行が一ノ瀬初奈が救出されることを前提としていて、真の目的があった場合は別論だ。
 被害者犯人というだけの消極的な理由だが、まだ東山結唯という見えみえの誤導(ミスリード)よりはあり得る。
 当然、途中で容疑者が好きだったのは有生ではなく他の被害者だったというサブプロットが挟まるだろうし、それがツイストとして成立するのは当初から過去の因縁を仄めかしている一ノ瀬初奈か月乃いつかだけだ。つまり、このどちらかは当て馬だ。この予想は鉄板だ。

・無印:春風合歓
 探偵役だから。

 「探偵は犯人であってはならない」などのメタ的な理由ではなく、単純に作劇上の探偵役がいなくなる。有生は探偵役であるには鈍良すぎる。
 この予想は鉄板だ。

 クソ漫画なら爆殺装置を解除するなら愛していないとか、いや愛しているから解除するとかグダグダするところだが、さすがにそれはないだろう。探偵役か、そうでなくともその風格のある春風合歓ならばなおさらだ。同様に、春風合歓がハーレムラブコメに相当するコミュニティや、12年前の誘拐監禁事件の再現を目的にしたとして、爆殺装置は稼働させないだろう。


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