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目の前にいるのは

彼女だ。
彼女というのは、付き合っている女性
という訳ではなく、
ただ単に1人の女性のことを指しているのだ。

彼女は、
俺がいつも写真を撮る女性だ。
所謂「被写体」
という訳だ。

彼女を
撮るに至った理由には、
運命的なものがある。

あれはいつだったか
いつも通り写真を撮っている時に、
たまたま目に留まった彼女がとても良くて
ついシャッターを切ってしまった。
カシャ
反射的に撮ってしまったため、断りをいれて
データを消そうとした。

だが彼女は、
俺が撮った写真をみて
「綺麗に撮ってくれてありがとう
消さないでいいよ。」
と言ってくれたのだ。
それから数日後、俺と彼女は偶然
大学の食堂でばったり会った。

そして彼女に
また撮らせてほしいと申し出た結果、
今のような関係が続いている。
近場の公園や
動物園
水族館
何気ない路地裏とか
2人で色んな場所に行って
ひたすら彼女を撮る。

彼女と
2人きりでデートスポットに行って、
傍から見れば
カップルに見えたりするのだろうか。

彼女は
いろんな要求に答えてくれる。
細かい手の位置とか
視線とか
顔の向きとか
とてもいい被写体だ。

彼女の
風になびくミディアム
白く透き通る肌
伏し目がちに流す表情
七分丈から伸びるか弱い腕

俺しか
知ることのできない、
彼女の魅力。

いつか
彼女のことを
彼女だと誰かに
紹介する日は来たりするのだろうかと、
ふと考えたりする。

考えるだけ。


#短編小説 #小説 #カメラ

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