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NOAH〜君の想いの欠片を集めて〜⑥全ての欠片が揃う時

小坂くんと名前で呼び合うことになってしまった…
乃亜…
ロボットのNOAHは簡単に言えるのに、何故乃亜はすんなり出てこないんだろう。
声が震えてたのバレてないかな。

乃亜くんはやっぱり優しい。
重いじゃがいもは必ず持ってくれるし、涙を流しながら切ってたら、玉ねぎも途中から変わってくれた。
話も名前で呼ぶようになってからとても楽しい。

そんな時事件は起こった。
乃亜くんが火傷をしたみたい。
女の子には笑顔で大丈夫って言ってたけど、手は結構赤かった。
気づくと僕は駆け寄っていた。

僕が声をかけても同じ笑顔で大丈夫って言うから、無理矢理保健の先生の所に引きずっていったんだ。
僕にまで嘘つかなくてもいいのに。あれだけ赤いから絶対痛いはず。

結局、やっと見つけた先生はガラスで腕を切った子の治療をしていたから、保健委員の経験のある僕が手当をする事になった。

道具をもらって手当をしていく。
僕は手当に夢中になっていて、少しずつ乃亜くんに近づいている事に気づかなかった。
気づいた時にはとても近くに乃亜くんの顔があって、じっと見つめているから、声を出しそうになった。
ドキドキが止まらない。
乃亜くんはなんであんなに優しい目で見つめていたんだろう…

その時、君からキャンプファイヤーに誘われて…
もしかしてこれは夢?
思わずほっぺをつねってみたけど、現実だった。
ってことは、僕は今夜乃亜くんと2人でキャンプファイヤー見るのかな…
想像しただけで心臓が破裂してしまいそう。
深呼吸をいっぱいして夜を迎えた。

約束の時間にキャンプファイヤーをする広場に向かうと、もう乃亜くんは待っていた。木にもたれて足をクロスさせて、携帯を触っている乃亜くんは本当にカッコいい。
「あ、涼夏、ここ座りやすいからここにしよう。」
「うん。」
僕の座るところはすでに砂が払われていて、綺麗になっていた。ほんと、そういうところだよ。いちいちかっこいいなぁ。なんて、ぼーっとしてたら座る所をポンポンと叩かれ、少しドキッとした。
顔、赤くないかな。慌てて頬に手を当てた。

「あ、あのさ、なんで僕を誘ったの?視線感じると思うけど…女子達待ってるみたいだよ。」
この学校のキャンプファイヤーは毎年仲のいいもの同士で見られる恒例行事で、ここで付き合い始める子達もいるみたいだ。

「え、決まってるじゃん、俺は涼夏がいいからだよ。」
顔色ひとつ変えず乃亜くんはそう言った。
勘違いさせるような事言わないでよ…
「え?僕たち今日初めてこんなに話しただけで、昨日まであいさつくらいしかしてないと思うけど…」
「前から話したかったって言ったら変かな?」
落ち着け僕。多分違う。期待しちゃダメだ。
「それって前から友達になりたかったって事?それなら言ってくれれば…」
「違うっ!」
大きな声に僕はびっくりして乃亜くんの顔を見た…怒らせちゃったのかな…僕。
「じゃあ、どういう意味…」
「一目惚れって言ったら?」
は?理解が追いつかない…
「はっきり言ってくれないと、僕わからないよ。」
「俺は涼夏が好き。」
「…」
「返事は?」
「僕も」
「はっきり言ってくれないと、俺わからないよ。」
にやりと笑う乃亜くん。
そんな顔すらかっこいいと思う僕は結構重症だ。
「ぼ、僕も、乃亜が好き」
パーン、パパーン。
突然花火が上がった。あ、もうキャンプファイヤーは終わりらしい。みんながわーっと騒ぎ花火に夢中になっていると、突然目の前が暗くなって、唇に何かが触れた。
しばらくして何をされたのか理解した時、顔が一気に熱くなった。
下を向いて動かない僕に乃亜は
「これからは悩みは俺に相談してね。」
と微笑みながら言った。
最初は何を言われているかわからなかったが、その後耳元で聞かされた事実を知ると頭が真っ白になり、その後怒りが込み上げ、最後は羞恥心でいっぱいになって、どこかに逃げたくなった。

にやりと笑う乃亜を、思いっきりビンタして僕は宿舎に帰った。

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