見出し画像

NOAH〜君の想いの欠片を集めて〜④四つ目の欠片

野外学習の準備は進み、同じ係の別のクラスのメンバーがわかってきた。各クラスでそれとなく情報収集。

可能性があるのは8人
俺と涼夏くんは同じAクラスだから、うちのクラスにはいないという事だ。

Bクラスは細マッチョとマッチョの筋肉系2人。
Cクラスはダンサー系の2人。
Dクラスは料理男子の2人。
Eクラスは同じ写真部の子と、モデル体型の小顔イケメン。

どこに好きな人がいてもおかしくない集団だ。
油断は禁物。

あ!よく考えたら、女子2人を除けば、俺のクラスは涼夏くんと俺はペアってことになる。

心の中で大喜びしていた俺に先生が話しかけた。
「小坂、並木、食材の買い出しをBクラスとDクラスの4人と行ってきてくれないか。重いものが多いから頼むな。」

野外学習の前の日ついにこの瞬間がやってきた。
6人でお買い物だ。俺は朝から放課後が楽しみだった。

「あ、あの…小坂くん、今日はよろしくね。」
「あ、り、いや、並木くん、よろしくね。」
何というぎこちない始まり。

スーパーでは俺と細マッチョの2人がカートを引き、料理男子2人が仕切ってどんどん食材を入れていく。
涼夏くんも一生懸命言われた食材を入れていく。
何故か、俺のかごまでちょこちょこと走って食材を入れに来てくれる。
一つ一つ丁寧にカゴに入れる涼夏くんを見ながらふと思った。同じクラスって役得。

帰りは食材を12個に分けて持って学校へ。
俺はこっそり軽い荷物を涼夏くんへ渡した。
重いのはマッチョ2人にお任せだ。
なかなかいいメンバーだったなと満足しながら帰って行った。
「ありがとう…」
残念ながら涼夏くんの小さな声は、僕には届かなかった。

その日の帰り道、俺はとても気分が良かった。
今日はなんていい日なんだろう。
野外学習の前に涼夏くんと挨拶ができたじゃないか。
しかも俺の名前知ってたし。

その日も涼夏くんはカフェにやってきた。
「NOAH、NOAH、聞いて。」
珍しくやや興奮気味の涼夏くん。
「僕、好きな人に挨拶できたよ。」
え?
そういえば、今日は6人で買い物した時全員で自己紹介したっけ。ついに涼夏くんの好きな子がわかるのか…
現実に引き戻されたものの、今はNOAHだ。
「良かったね。頑張ったね、りょうちゃん。」
「それがね、その子、僕の名前知ってたんだよ。奇跡だよね。」
いや、多分みんな知ってるよ。
涼夏くん、綺麗な顔してるって噂になってるし。

「他には何かあった?」
「そうそう、写真部の先輩に、今度服選んでって言われたよ。」
え?あの中庭で話してた先輩かな。
モデルみたいなイケメンの。
「え?、行くの?」
「え?もちろん行くよ。初めてできた先輩だもん。むしろ僕が後輩でごめんなさいって感じだよ。」
え、それ、先輩絶対下心あるやつじゃん。
「よく知らない人と2人で出かけると危ないよ。」
「ふふ、NOAH、花乃さんみたい。」
「花乃さん?」
「うん、僕の乳母。僕のお母さんみたいな人なんだ。」
そっか、そういえば2人暮らしだって言ってたな。
花乃さん、ナイスアシスト。
「とにかく、先輩と行くのはやめた方がいいよ。もし、好きな人が見たらがっかりされちゃうよ。」
「え?そうなの?」
「りょうちゃんの好きな人が先輩だと思うかも。」
「そんな…」
「りょうちゃんはその子が好きなんじゃないの?」
「そうだよ。でも、小坂くんはそんな風に思わないよ、きっと。彼は本当に優しい天使だから」
「え?」
「あ、僕好きな子の名前言ってなかったっけ。君と同じ名前の乃亜くんだよ。」
「…」

あ、まずい言葉が出てこない…
どうしよう…
息の仕方を忘れた俺は、おじさんに頼んでNOAHが故障した事にしてもらった。

明日は野外学習なのに…
同じ係で一緒なのに…
俺は動揺して全然眠れなかった…

君の想いの一欠片 
四つ目 好きな人は…俺?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?