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にじのふぃっしゅ

"あの虹をもういちど、
ぐるりといっしゅう空に回すことができたなら。"
「そうは言うもんだが、もうそれからざっと100年になる。
誰もあいつを捕まえられない。

この世界には光が流れなくなっちまった。
土と特に木の匂いが強いだろう。
そして俺たちを照らすのは月明かりと火の灯り。
みんなそれからぼんやりと生きてやしないか。
いや、あんたにゃわからんか。

真っ暗闇だったこの世界に
ある日神様が太陽の光を流して大地を明るくした
少し熱くなりすぎたから次は水を落とした。
うんとたくさん。
その水がみんなに色を与えて世界ができたってワケさ。
零れた水がじょうはつして空に上がっていったとき
それはそれは、ぐるりと大きな虹が出来たのだけど
その虹も神様はナイフで切り分けた。
そこで逃げ出した切れ端が'にじのふぃっしゅってわけさ。
あの湖に'どぽんと落ちた
それからここは月の街。

今じゃ神様も猫を愛してキノコを育てるただの老人さ
神様はつい最近、酒場で1度だけこういったらしい
あの虹をもういちど~ってな。

あんたはここの世界のじゃないね。
どこから来たかは知らんが試してみるといい。
いかにも、花束に頭をつっこんでるようなあんたなら
どうにかなるかもしれんがな。
分かっているのは、この月のカケラ。
それで出来た釣り針で'にじのふぃっしゅを釣れる。
肝心なのはあいつが何を食べているのか。
それだけが誰にもわからない。
人の夢とかそんなのか、
そもそもさかなの類でもないかもしれないが

あんたにじのふぃっしゅを見ただろ。
あの虹色の湖だよ。
その日によっては赤だか青だか色を変える。
それ自体が大きすぎて気づいていないのさ。
そしてあの下がどうなっているのかも
だあれも知らないところ。」

つづく

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