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『情報量の少ないモノクロ映画だからこそ感度が研ぎ澄まされる。』

『ダウン・バイ・ロー』(1986)


☆監督
ジム・ジャームッシュ


☆出演
トム・ウェイツ
ジョン・ルーリー
ロベルト・ベニーニ
ニコレッタ・ブラスキ

☆STORY

 舞台はニューオリンズ。

ザックとジャックが、それぞれ警察がらみの罠にひっかかってOPP刑務所の同じ房に入れられる。

そこに不思議な仲間、イタリア人旅行者のロベルトが加わって、脱獄からどことも知れぬどこかへ、3人は地獄とも天国ともつかぬ冒険の旅を重ねてゆく……。

☆感想

主人公はDJのザック(トム・ウェイツ)
ポン引きのジャック(ジョン・ルーリー)
謎のイタリア人のロベルト(ロベルト・ベニーニ)の3人で、彼らは冤罪で入れられた刑務所で出会うところから始まる。

ただ単に、川の中を歩いたり森の中をさまよったりするが、普通に風景を撮っているだけなのに、幻想的な感覚があって、その風景を見ているだけで飽きない。


というのも、モノクロの映像はすごくおもしろかった。ミニマルで、より情報のないからこそ抽象的に捉えられる。


それがモノクロ映画の良さ。

同じモノクロ映画で言うと、等身大の青春映画の要素が強かった『ストレンジャー・ザン・パラダイス』とは異なり、ジャンル映画の要素を取り入れることで風景のとらえ方に監督の個性が出ていた。


少し作品以外のところで感じたのがウェイツと監督が初めて出会ったのは80年代半ばにバスキアのアート展で華やかな美術関係者に囲まれ、気後れしていたふたりは別のバーに移動して意気投合したみたいな話を聴いたんですが、アートとか歴史などの知識が思いもよらぬ縁に繋がる事ってあるなと。


僕自身ジム・ジャームッシュ監督が好きだって言ってると、僕より遥かに映画歴の長い人と映画について話せたり、はたまた映画とは全く関係のないある実業家の方とも映画を通じて知った偉人がその人が好きな人で可愛がってもらえたりと、アートや芸術、歴史など面白いからっていう入りでもこんな形で役に立つ事もあるんだなと思う。


今ではかなり有名だけど『ライフ・イズ・ビューティフルでお馴染みロベルト・ベニーニもこの当時は無名でカタコトの英語を話す笑顔溢れた役がまさに『ライフ・イズ・ビューティフル』を感じさせるかのような役だった。


そんなふたりのミュージシャンと英語がうまく話せないイタリアのコメディ男優によるオフビートさが本作では描かれている。

演じる3人の個性が独特で、次に何が飛び出すのか分からないというスリルや、「人って、こういうところあるな」と思えるなど、そんなやりとりに引き込まれていくのが『ダウン・バイ・ロー』だ。

そういう抽象的なモノクロ映画だからこそ、会話や行動ひとつにジャームッシュの作風を感じた。

ここからが本題。

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