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1人暮らし事件簿④反省と教訓

すぐドアを開けて
警察官の顔を見た瞬間
私は泣き崩れてしまった

その頃にはもう
怖いという感情は消えていたし
腹が立つ気持ちの方がまだ大きかった
だけど
全身に震えが一気に来て
しゃくり上げながら倒れ込んでしまった

今でも思い出す
あんなに他人の前で
急激に泣いたのは
はじめてだったなって
緊張の糸が切れたのか
現実を実感したからなのか

静かな地域だったし
治安も良い場所だったから
近所の方が驚いて
通報したみたい
当然の如く

端から見れば
ケンカと言うより
マスク無しの男の方が
一方的にシメられている訳で
警察官としては
私の彼氏側を疑ってた様子だったから
泣きながら
事情を事細かに説明して
理解して貰った
外は応援の警察官とギャラリーで
ごった返していた

マスク無しともう1人は警察に連行された
残りの男達の行方は不明
私は翌日警察署で被害届出をした
当時のガラケーに
通話録音機能は無かったから
証拠は残せなかったけど
彼等が自供したので良しとした

警察官が教えてくれた彼等の手口
“新築物件のみを
ターゲットにしていたこと”
“入居1週間以内を標的に”
“1人暮らし用の間取り”
“隣近所が密集していない地域”
“住民は女性”
当然、換気扇の業者でもなく
目的は高額な契約をさせて収益を得ること
場合によってはレイプも考えていたと
ベタなやり口ですね

なぜあの部屋に
女の私だけが居ることが分かったか
彼等は
物件が完成してから
毎日視察をしていた様で
誰がどの部屋に住んでいて
どの部屋の住人が女性なのか
そしてその住人が1人でいる時間を
見計らっていたとのこと

私が住んでいたアパートは全部で8戸
当時居住していたのは私を含めて5戸
その中で女は私1人
あの日ガス屋さんが帰ったのを
外で見ていたらしく
完全に狙い撃ち
隙を突くのも計算だったのかと思うと
心底悔しかった

その地域で被害にあったのは
私がはじめてだったみたいだけど
類似事件は起こっていた

事の顛末としては
お金を取られたり
暴行されたり
大きな被害が残る事は無かったけど
身の危険は感じたし
密室で知らない男数人に囲まれる状況は
さすがに怖く
トラウマになる
当時若かった事もあって
私も負けじと
張り合ってしまった所もあったけど
一歩間違えば
危害を受けたかもしれない

あの時
携帯を肌身に持っていて
リダイアルが彼氏で
その彼氏が奇跡的に
近くを通り掛かっていた時だった
っていう偶然が重なったことで
救われたようなもの
ただ
無力だったのは実感した

後悔はしなかったけど
反省はした
怖かったけど
良い教訓になった

そして次の日から
習い始めた

“極真空手”


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