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日付のある句日記(13)


12月2日
二兎社公演『鷗外の怪談』観劇。永井愛さんのお芝居を観るのは初めて。とても楽しみにしていたが、十二分に楽しんだ。木野花・池田成志のベテラン勢がめちゃくちゃいい味出している。妻しげ役の瀬戸さおりさんがとても愛らしい。キッチュの鷗外がかもしだす“厚み”もよかった。
決められず果たせず成せず雪が降る

12月8日
おすそわけのおかえしに柚子をいただく。あれこれ調べてジャムにすることにした。ゆでこぼした皮を一晩水に漬けて途中で水を替える…など二日がかりで完成。おっかなびっくり味見したらたいへんおいしくて二度びっくり。
吹き寄せてのちのしづかな寒の水

12月10日
出来に気をよくして柚子ジャムを届けたら、さらに柚子をいただいてしまった。今度は柚子ピールを作ってみる。半日水につけて、ゆでこぼしたものを低温オーブンで焼き、糖分をからめる。これまたうまい。普段はこういうものを食べない家の者も手を伸ばす。
硝子瓶持ち上げ影も浮く小春

12月15日
米農家さんからメール便で送ってもらえる切り餅を今年は何種類か頼んだ。中に餅がうすく並んだ封筒が届くのはなかなかシュールだ。
木枯らしに届けられたる封筒か

12月20日
蟹様が届く。冷凍室にうやうやしく収納。
冬蟹を抱いて明日もあかるけれ

12月22日
餅網を新調する。今までのものは丸形で切り餅が三個しか焼けなかったがこんどは四角い。いちどに四個焼ける。
調理器具購つて師走の街走る

12月24日
クリスマスは例年適当な鶏の足などを買い、ケーキを食べてシャンメリーを飲んで過ごす。今年はケーキを市内の菓子店で調達。毎年都内の激ウマ店に買いに行こうと思いつつ予約の時期を過ぎてから思い出す。
願はずに食ひ続けてよクリスマス

12月27日
家の者が数の子を仕込み始める。昔母親に習ったというレシピで、出汁と醤油とみりんのみの薄めの味つけ。私はこれで数の子嫌いが治ってしまった。B5サイズぐらいのタッパーに漬け込んで冷暗所に置く。三が日、これをふたりでむさぼり食う。
ひとつずつ釦をはめる年用意

12月31日
俳句新空間Webの臨時増刊号を更新、そののち胡桃をすって胡桃ダレを作る。家の者は身欠きニシンを煮たりなど。予約していた年越し蕎麦を受け取りに向かい、帰って茹でて昼食。この蕎麦屋さんの年越し蕎麦も5年目ぐらいか。夕食は蟹しゃぶ。ビロードのごとき舌ざわりに悶絶する。日本酒を傾けながら紅白をなんとなく見たり見なかったり。年越し後、ジャニーズカウントダウンを少し見て寝る。
歳晩の重たい蓋をつと放す

2021年の日記を書き終えました。
このnoteに載せる、という決意がなかったら欠かさずかくことはできなかったでしょう。
昨日のことは忘れ、明日のことはわからねえな、という感じで生きているもので、
つくづく自分の性分は日記を書くのに向いてないとあらためて実感しました。
それでも1年分を振り返ってみると、それなりの発見や記憶がよみがえるところがあります。
ともあれ定常的な日記はひとまずこれで終えたいと思います。

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