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忖度は日本が誇る伝統
「無理させずに、明日も連れてきて良いからね」。
息子(3歳)をチャイルドシートに乗せる私に、そう言ってくれた母。
息子がカゼ気味のため、保育所を休ませ実家で預かってもらっていた。
私は後部座席のまどを開け、息子が「バイバイ」と父母に手を振ってからアクセルを踏んだ。
後部座席のまどを閉めてほどなく、バックミラーに映る息子が私に言う。
「明日は保育所いけるよ。大丈夫。」
祖父母に溺愛されているのは、息子自身が承知のこと。
さっきの母と私の会話を聞いていたのだろう。
「明日は保育園に行くから来ないよ」、そうジィジバァバに言うと悲しむかもしれない。
たからこそ、見送っている2人の姿が見えなくなってから私に言ったのだろう。
多少の忖度(そんたく)ができるようになったのかと、息子の成長を感じた。
『忖度』は本来、ポジティブなイメージの言葉で、自分なりに考えて相手の気持をおしはかることを指す。
また上司、部下、家族、友人など、相手が誰であろうと関係なく使える言葉でもある。
この忖度に、ネガティブなイメージが世間に定着したのは、2017年の森友・加計学園問題からのようだ。
目上の人の気持ちを察し配慮するとの意味合いで、同年の流行語大賞にもなった。
その『ネガティブ忖度』を散々享受してきた日本大学の理事長が先日、脱税の疑いで逮捕された。
相手が何も言わずとも心情を察し、気配りや配慮することが伝統的に重視されるきらいのある日本社会。
この伝統が行き過ぎると、往々にして良い結果を招かない。
森友加計問題にはじまり、日大タックル問題、そして今回の逮捕がいい事例だ。
ただ忖度は、使い方さえ間違えなければ日本が誇る伝統であることに変わりない。
普段はわがまま放題、やりたい放題の息子。
仕事で疲れていても、顔や態度に一切ださない妻の肩を突然トントントン。
そして「カッカ、いつもおいしいご飯作ってくれてありがとう」。
疲れが吹っ飛ぶ忖度もあるからだ。
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