いつかあなたに出会う未来
彼は楽しそうだった。
ステージの上でギターを弾きながら歌い、踊る。
本番中ふと思いつきムーンウォークをする。
終始ニコニコしながらパフォーマンスし、最後は「ありがとう!」で締める。
そしてキラキラしたステージを去っていった。
一方その頃、普通の一軒家。
テレビにはミュージックステーションが流れ、テレビの前でノリノリになっている少年がいた
当時小学六年生の僕である。
この当時音楽なんて流行モノの曲と親の車の中で流れていた曲しか知らなかった僕だが、そのパフォーマンスを見た途端、彼の虜になった。
イントロが流れ始めてすぐニコニコで彼はこう言う
「どーもー!星野源でーーーす!!」
なんてまっすぐなパフォーマンスなんだろうと思った。
数日後、彼の曲がもっと知りたくなり、TUTAYAでYELLOW DANCERを借りに行った。
当時の僕から考えると、アーティストから入って新しい曲を開拓するなんて有り得ないことだったけど、彼の音楽がとても気になった。
もちろん、借りた段階ではSUN以外の曲は知らないので、一曲目の「時よ」から順に聞いていった。
なんだろうこのリズムは。
初めて聞いた曲たちであったが、体が勝手に踊りたくなるリズムとテンポ。
アルバムの名の通り自分がダンサーになったかと錯覚する。
すぐにウォークマンに落とし込んでイヤホンで聞いた。
深夜になっても布団をかぶって何回も聞いた。
何回聞いても心が踊る。
特に「時よ」「Week End」「SUN」「地獄でなぜ悪い」「桜の森」が好きだった
それから約9年が経って、現在
彼への愛情は全く色褪せていない。
自分が歳を重ねていくにつれて彼への尊敬が上書きされていく。
彼のエッセイやインタビュー、対談などたくさん読んで、
読めば読むほど彼の考え方、生き方にハッとする。
彼とは重なる部分が多い。
出身地、聞き手、血液型、性格、名前の雰囲気etc..
似ているからこそ自分の中の理想がより「星野源」になっていく。
僕は小さい頃から人が好きだけど、人見知りであった。
幼稚園の入園式が終わった後、クラスに集まった時に他の人とどう接していいのかわからず、絵本ラックの後ろにうずくまって隠れていたほどだ。
何度か会話を重ねて、遊んだりして、相手が自分のことを好いてくれているなと安心できるまで本性を出せない。
でも、心が打ち解けたらめちゃめちゃ話すし、自分は陽キャなんじゃないかと錯覚するくらい陽気でいられる。
相変わらず、今でも初対面は苦手である。
でも中学生の頃に彼の本を読んで考えが変わった。
彼のエッセイ集「いのちの車窓から」の中に「人見知り」という題名のエッセイがある。
エッセイの中で彼はこう言った。
”これまで、相手に好かれたい、嫌われたくないと言う想いが強すぎてコミュニケーションを取ることを放棄していた。コミュニケーションに失敗し、そこで人間関係を学び、成長する努力を怠っていた。
それを相手に「人見知りで」とさも被害者のように言うのは、「自分はコミュニケーションをとる努力をしない人間なので、そちらで気を使ってください」と恐ろしく恥ずかしい宣言をしていることと同じだと思った。”
ハッとした。
「その通りです」以外の言葉が出てこなかった。
今まで自分は辛いことを避けて楽をしてきたのに、いつの間にか「あいつはなんか嫌だから関わらない」とコミュニケーションをとる努力もしないで環境のせいにしていた。
この言葉と出会ってからは、その人をまず知る努力をするようになった。
それをした上でその人が嫌いなら嫌いなままでいいと思ったし、好きな人だけ自分の周りに置けばいいと思った。
おかげで今では友達がたくさんいるし、いい思い出をたくさん作れている。
ありがとう。星野源。
僕はまだ彼に出会えていない。
ドームツアーを行なっていた時はちょうど高校受験で行くことが叶わなかった。
色々なフェスに出演していることは知っているけど、やっぱりここまで溜めてきた分もあって、はじめましてをするのは単独ライブがいいなと思っている。
いつか僕はあなたに絶対会ってやる。
会って、たくさんの感謝と尊敬と愛情を送りたい。
だから、もし会えたら…
「笑顔で会いましょう」