アーマードコア6 チュートリアルボスのゲームデザイン
アーマードコア6をプレイして、最初のチュートリアルボスでめちゃくちゃ感動したので、ゲームデザイン面で良いと感じた部分を備忘録的に書きます。
発売初日に早速トレンド入りするくらいに多くのプレイヤーにとって大きな衝撃を与えたチュートリアルボス。とにかく「強すぎる」という印象を与えたようだ。
自分のチュートリアルボス体験
実際、自分も初戦はぼっこぼっこに蜂の巣になった。こんな強いことある!? って思った。ボスのHPは1割くらいしか削れてなかった。1ミリも勝てる気がしなかった。
で、「そういう負けイベントなのね、ソウルシリーズおなじみだなあ」って思っちゃったくらい。でもそんなことなく普通にリトライさせられて「マジかよ…」ってなった。
以下が初戦敗北時の動画。
でもその後、何度も何度もリトライしながら色々試行錯誤した。その過程で…
ミサイルは横から飛んでくるので前進して避けた方がよい
(ゲーム側で教えてくれるものだが)空中に逃げることで爆風を回避できる
ブレードがかなりの有効打になる
ボスの下や側面が死角になっている
などを学んでいき、その結果、7~8戦目くらいのチャレンジで見事に撃破できた。以下がそのときの動画。
すごくない? これほぼノーダメージなんすよ。たまたまブレードでトドメ刺す流れになったけど、その見栄えの良さも含めて、倒した瞬間めちゃくちゃ脳汁出たんすよ。
これまでめちゃめちゃ苦労した弾幕をスイスイ避け、さっきまで「めちゃめちゃ硬くね???」って思ってたHPをゴリゴリ削り、スタッガーを誘発させて一方的に倒す。
圧倒的征服感、圧倒的達成感。この体験だけでもう大満足。「最高のゲームを買ってしまった!」と思った。
ゲームデザイン的に凄いと思ったポイント
難易度のジャンプスケア
ホラー映画とかで突然でっかい音とか鳴って驚かすやつあるじゃないですか。あれと同じことを難易度でやってますよこれ。道中はめちゃくちゃ楽勝、ほんとうに操作のチュートリアルだよねっていう程度の雰囲気。
その後のボスの登場シーンも、まだチュートリアルぽい感じ。そんなに仰々しい登場でもなく、見た目も普通の大きいヘリ。習った操作を使って倒せ! みたいなチュートリアルまとめみたいな敵だと思わせる。
でも実は半端ないくらい強い。
道中とボス戦で難易度の落差があまりにもデカい。プレイヤーは予測と全然違った強さでめちゃめちゃビックリする。ここまで難易度の落差があるゲーム、これまでに自分は見たことがない。
でも、それが怒りには繋がらない。もともと難しいゲームという印象があるので、むしろこの絶望をご褒美だと思う人の方が多いはず。
ここは、シンプルに「すごく面白い体験」が生み出せていると思う。みんなその感動を共有したかったんだろう。そりゃトレンド入りするわね。
SEKIROゆずりの悪循環/好循環による、征服する快感
このゲームには、SEKIROの体幹ゲージのようなシステムがボス側プレイヤー側双方に用意されている。それによって生まれるのは「悪循環」と「好循環」だ。
ボスから攻撃を受けるとスタッガーが発生、スタッガーが発生するとさらにダメージを受けてしまう。逆にボスに沢山ダメージを与えてスタッガー状態にすると、さらにダメージを与えられるチャンスがやってくる。
下手だと自分が不利になり、上手いと自分が有利になる。なので最初は慣れないうちはボスがめちゃくちゃ強く感じる。でも上達していくとどこかのタイミングで急にボスが弱く感じられるようになる。体幹ゲージのような仕組みがあることで、その落差がとても強くなっている。
結果として「めちゃめちゃ強いボスを、おれの実力によって完全に征服した」っていう体験に繋がってる。
強いだけでなくチュートリアルとしての機能もしっかり果たす
アーマードコア6は過去作と異なり、積極的に敵に近づいて戦わせるようなゲーム設計になっている。(インタビューでもそう語られていた)このボスは、それを教え込むための設計になっている。
空爆を飛んで回避しろとゲーム側で促してくる
横からのミサイルは前進して回避したくなる作りになっている
複数のミサイルがまとまって塊で飛んでくるのですごく目立ち、回避しなきゃって思わせる作りになっている
このボスはこのような攻撃を仕掛けてくることでプレイヤーに「飛び上がること」と「前進すること」を促している。するとどうなるか。飛び上がって前進すると、ちょうど目の前に敵ヘリの鼻っ面が見えてくる。敵ヘリの鼻部分はライトで光っており、かなり目立つ作りになっている。かつロックオン対象もこの鼻っ面である。
そしたら、この鼻っ面を叩きたくなる。ブレードの使い方は道中に出現する盾持ちの敵で教えている。プレイヤーは鼻っ面叩く。ガッツリ相手の体幹を削れてスタッガーを誘発、一気に大ダメージを与えられるようになる。めちゃくちゃキモチイイイイイ!!! ってなる。
今回のアーマードコアはこういうゲームだ! というメッセージがこのボスに込められている気がする。いずれにしても、このボスを通じてブレードで殴ること、スタッガーを引き起こすことの利点をプレイヤーにしっかり体験させることができたはず。
思いっきり殺しに来てるけど、このボスもまた、ちゃんとチュートリアルとしての役割を果たしてくれている。
最初のボスを強い印象にするいくつかの要素
チュートリアル開始時点ではすこしHPが削られている。また道中で少なからずダメージを受けるので、初戦は死にやすくなっている。
道中の敵はシンプルに弾を撃ってくるだけなので「距離を取りながら横に回避する」が正解となっている。それを教え込んでおくことで、ボス戦でも同じようなプレイをさせる魂胆がありそう。
それをすると、ボス戦ではまず勝ち目がない。一旦この罠を仕掛けておくことで強いイメージを作り出しているのかもしれない。
過去作と異なり前進することが求められるので、過去作を遊んでる古参プレイヤーにとっての罠にもなってる感じがする。
ゲームデザインされているゲームは楽しい
自分はアーマードコアに対してあまり良い印象がなかった。
過去作はいくつかプレイしている。初代3部作、2、フォーアンサーをやった。雰囲気作りやロボデザイン、ロールプレイ感は魅力的だけど、バトル体験が適切に設計されているとは感じていなかった。
でも「6」は、明確にプレイヤーがどういう体験をするかしっかり意識して設計されているように感じる。ソウルシリーズを多数製作していく過程で培われたゲームデザインノウハウが、アーマードコア6でもしっかり活きているのだと思う。
あとはこれが「ロボの皮を被ったソウルだね」という印象に終わらず、ちゃんと「アーマードコアだ」になっているかどうかだ。これから存分に確認していきたい。
付録:チュートリアルボスのリトライ数アンケート
実はニカイドウは長文を書くのがすごく苦手で、まともに読める状態にするまでにものすごく時間がかかってます。情報収集や裏取りの時間も含め、1記事完成までに8~16時間かかってます。 すごく大変なやつなので、サポートいただけるとものすごくものすご~くありがたいです!