記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【ネタバレ感想】二次創作をやっている人間は全員桑山千雪のG.R.A.D.をプレイしなさいという話


私個人が趣味として小説を書き始めてからおよそ15年。
そして絵を描き始めてからは10年という歳月が過ぎようとしています。

まぁ何と言うか、若気の至りで初めたことがよくもまあ続くものだと。
気づけば液晶タブレットやら新型のPCやら、専用のキーボードやら…ただのオタクとしてPCを使うにはハイスペックなものを用意しちゃってまあ、本なんか作ったりして…
良し悪しの話では有りませんけど、趣味に気合い入れすぎだろとたまに自分を振り返ることもあるんですが、これが10年続いたんだからそれはもう立派な人生の一つだろう、とも思ったり。

絵にせよ文章にせよ、人に見てもらうというのは良いものです。
自分の作りたいものを作っては居るのですが、それでも誰かに見て貰えてるかどうかでやる気やモチベーションの差は圧倒的です。

ただまあ、僕自身長年やってて当然のように思うんですけど、僕はまあ今アイドルマスターの二次創作をメインでやってまして。当たり前っちゃ当たり前なんですけど、アイマス以外の絵って余り見てもらえてない感じなんですよね。
そりゃあ何と言うか、フォローしてる側も僕のアイマスの絵を見てフォローしてる人が多いだろうし。長年いる人は昔東方を描いてた頃から見てたからもしかしたら今は見てないかもしれないし。

僕自身は結構色んな作品に触れて色んなものを描きたいなーとは思うんですけど、今こうやってアイマスを楽しんで描いてる自分をフォローしてくれてる人は見てるでしょうし、やっぱり見てもらえる反応に期待してアイマスを描いてるんじゃないか…みたいな自問自答をたまにしてしまいます。
そんな事はないはずなんですけど、その気持ちがゼロか、と言われたら素直に頷けないんですよね。理系は0と100しか信用してないので()

たまには趣味全開のオリジナル絵を! とは思うものの、それを見て貰えなかったらそれなりに凹むんじゃないかなとは思います。

そんな悩み、多分僕だけじゃないと思うというか。
というかこないだそんなお気持ちが流れてきた記憶があるね。
誰もが考えながらも、でも余り考えないようにしていること。
自分の人気は、自分ではなくて、自分が描いてる何かの人気。

僕はジャンルに生かされてるんだ、とたまに感じます。

そんな最中、今回アイドルマスターシャイニーカラーズで新しく実装されたGRAD編をプレイしていると、桑山千雪さん(おっぱいが大きい)が創作者の悩みにぶち当たる瞬間を目撃し、僕の胃袋は大ダメージを受けました。
非常に面白かったのも含め、感想と共にそんな話をさせて頂ければなと思います。




~ここから先はGRAD桑山千雪のシナリオネタバレを含みます~

※全カードを所持している訳ではないですしコミュも完全に終えているわけではないため、キャラクターの設定に関し不足している可能性がありますが生暖かい目でスルーしてもらえれば幸いです。




桑山千雪のGRAD編あらすじと感想


桑山千雪はラジオ番組の企画で自分の趣味(というか前職)で作った雑貨をネットオークションで
出品することになったが、それがとんでもない金額になってしまいプロデューサーと千雪は
流石にビビった。
千雪は出した作品に少し不満があったのもあり、ちょっとノリと勢いで自分でも
似たようなのを作って企画とは別に個人でネットオークションに雑貨を出品することにした。
だが金額は1円のままで落札されず千雪は茫然自失する……


というのが大まかなあらすじです。
見て下さい、この新しいアイドルオーディションに受ける直前とは思えない滅茶苦茶私的な悩みを抱えたままのアイドルストーリー。大好物です。

元々千雪は雑貨屋に務めており、趣味と実益を兼ねた雑貨作りをしていた経歴があるのですが、アイドルになってからは他の仕事が忙しく余り雑貨趣味に打ち込めておらず、プロデューサーもそれを申し訳ないと思っていた、という話の流れがあります。

そんな中、ラジオの企画として「桑山千雪の作った雑貨」がネットオークションに出されるわけですが、それがまあ凄い値段になるっていう話。

でもまぁ、そりゃそうだよな、っていう感じですよね。
僕も上田麗奈が番組内で膨らませた風船とかをオークションで出されたら10万までなら出せると思いますし、多分100万以上の値をつける阿呆も出てくると思います。気持ち悪いなこの話。

でも、巾着袋なんて、言うて使いますかね。
普段遣いするかどうかもわからない、道具として役に立つかも解らない。
雑貨ってそういう物が結構多くて、見て飾ったりするだけでも良かったり。
でも、何で僕らはそれに人生を捧げるほどの金額を付けてまで欲しがるんだろう、なんて思って。

しかし、そんな話では有りません。
桑山千雪はアイドルですし、GRADは基本的にWINGを終えた世界線です。
その為、基本的に弱小アイドルプロダクションでありながら所属アイドルはそれなりに知名度のあるアイドルとして活動しており、各所でそういった描写は見え隠れします。
そんなアイドルが自分の手で作った雑貨……まぁ、余裕で"万"は超えますよね。
僕も桑山千雪のラジオを毎週聞いてるファンだったら手に入るかどうかはさておいて入札は絶対するもの。

だって唯一無二ですよそれは。
アイドルが「作ったもの」ってのは、もうそれだけで唯一無二ですし、ファンにとっては「神器」にすらなりえます。神棚に飾りたい人だっているんじゃないのかな。
例えばサイン付きCDだったり、サイン付きの本があります。それだってアイドルがサインを直接書いてくれた、ってだけでファンにはめちゃくちゃ嬉しいものでしょう。貴重な価値があるもの、一生大事にしますよ。
そんな前提があるのに、それでなお、アイドルが直接、手間暇かけて作った「物体」が手に入るチャンス、なんて言われて飛びつかないファンはそう居ないでしょう。

それはやっぱり、「好きなアイドルが作った」という情報の付随がもたらす物なんですよね。

オタクに限らず、人は基本的に情報を食って生きてる生き物でして。色んなものを買いますし、手に入れますけど、それが本当に自分にとって必要なものか、ってのを効果よりも名前や情報で判断しがちです。
実際にその物体そのものがどれぐらいの役割を果たすのか、というのは重要視されていないと思うんですよね。プラシーボ効果なんてのも言われてますし、思い込みでも人は変わるのでそういうのって案外大事なんですけど。
だから、アイドルが作った安物の雑貨にはとんでもない高値がつく。
アイドルが作ったという事実がその手に欲しいからです。

じゃあ、その「アイドルの情報」を失った雑貨がどうなるか、という話。



画像1

このシーン、本当に絶妙で。
「まさかそんな事はねえだろう」という創作者の言葉をそのまま口に出したような名シーンだと思ってます。
でも、そんな事はあり得る。だってこの雑貨は、C,Kという顔の見えない誰が作ったのかも解らないページにやたらポエムの刻まれている1円の巾着袋でしかないから。

このシーンは端的に言うと「二次創作で1万RT稼いでウハウハだった人がコミティアに出品したら一冊も売れなかった」というシーンなので、人によっては爆笑モノであり人によっては爆発モノです。
僕もコミティアに出てみたいって気持ちが大分あるんだけどこれ見た後に気合が湧かねえよ! それぐらいにリアル。

GRADに気合を入れていた千雪もそれなりにダメージを受けたようで、暫くプロデューサーとのやり取りにも身が入らない感じになってしまいます。
だがそこは流石のシャニP、千雪の異変にあっという間に気づくと、その悩みを解決しようと対話をしようとします。イケメンここに極まれり。モテる男は気遣いが出来るという事を証明してます。

画像2


僕らは情報を食って生きています。

だからこそ、その情報が無価値であると思った時、値段を付けません。
自分に必要ないものは買いませんし、意味のないものを手に入れたいとも思いません。

千雪だってそれは解っていることだと思ってます。
でも、彼女には彼女なりの気持ちや意地があって。
オークションに同じものを出品したのも、その「情報」を確かめたかったという意図があったんだろう、と思うのです。

僕は自分がジャンルに生かされてると思ってます。
いつかアイドルマスターが無くなった時、自分がアイマスの絵を描かなくなった時、僕は誰にも見向きされない存在になるんじゃないか、とずっと思ってます。そういった僕を、僕自身も嫌いのではないかと思ってます。
それに真っ直ぐ向き合うかどうかって、凄く大事なことだと思ってて。

少なくとも、桑山千雪は自分から向き合ったのです。
その結果、大なり小なり傷つくことはあったけれど。
それでも、彼女がやりたいこと、やりたかったこと、その気持ちが嘘だったわけでも、それ自体を嫌いになったわけでもないのです。


画像3

千雪は大人ですのでそれをある程度理解しています。
それでも尚、「アイドルではない自分」の価値を信じたかったのだろう、と思います。
ただその夢は容易く破れます。名もない桑山千雪は自分の価値を否定された気持ちになります。
しかし、それは決して呪いではなく、救いになるのです。


画像4

物の価値ではない、自分の価値は、決まったわけでは有りません。
少なくとも、桑山千雪が自分の名を隠した雑貨に値段が付かなかったからと言って、それは「桑山千雪に価値がない」ということにはなりません。
ただ、ほんのちょっと運が悪かった。或いは、やり方が間違っていた。
作った人の技術が未熟だったわけでもなければ、買わなかった人の眼が節穴だった、ということでもないのです。

この千雪GRAD編は、少し大人のアイドルになった一人の少女が、アイドルではない自分を少しだけ信じてあげられるようになる物語です。

結局、千雪は自分自身で「アイドルの自分」と「アイドルではない自分」を無意識に同一視してしまったことが引き起こしたのではないかと思います。アイドルの自分とアイドルではない自分は同じなんだから、その価値は同一でなければいけない、と。
アイドルの自分への対抗心の空回りが、この物語の肝なんじゃないかな、という風に考えてます。

二次創作をしている自分もまた、こういう気持ちに囚われます。
みんなは結局、アイマス絵を見たくて僕をフォローしているだけで、僕の絵を見たいわけではないのかもしれない、と。
いや、「あたりめえだろ!!」って言われると思うし僕もそう思う。
というか二次創作してる人はほぼ全員自覚的だと思う。

ただ、それは別にそれがダメだとか悪いとかじゃなくて。
別に良いじゃねえか、っていう気持ちが大事なんだと思うんですよね。

良くも悪くも、僕は二次創作をやって多くの人と繋がりを持てました。
今遊んでるジャンルに対して昔以上にのめり込むのも、自分でイラストなり小説なりを描いた結果だと思っています。
見て貰う価値はそれはそれで大事なもので、自分自身の実力とは決して同一視してはいけないけれど、それを認める事が悪い事ではないのです。

僕等はアイドルではないけれど、アイドルに深い愛情を持って絵を描いたり物語を綴ったりしています。そんなアイドルの物語を見るためにTwitterをフォローしたりされたり、pixivを漁ったり何なら個人サイトを覗いたり。
それは確かに、奥にある「僕」という個人を見てもらってるわけではないのかもしれません。ただ、それが普通だと思いますし、そんなもんだな、って思うのってすごく大事だと思うんです。
なまじそれを強く自分の力だと考えてしまう、それこそが今回桑山千雪に降り掛かった災難だと思っているので。

よく「作者」と「作品」は切り分けで考えるべきだ、みたいな話が出てきますけど、少なくとも作者側はそれを意識するべきじゃないんじゃないかな、って思ったりしてます。自分の作ったものに縛られてしまう事って多分あんまり面白くないことだと思うんで。
好きなことをやる、っていうのが前提でありたいな、とは思い悩んだ今だからこそずっと思っています。


画像5

桑山千雪のGRADは、優勝前にシャニPが千雪の助けのもとに雑巾を作った所が一つの終点になります。その時のシャニPの言葉は、本当に多くの創作者の救いになる言葉になることでしょう。

二次創作はもとより、創作をしている全ての人間に捧げる、ちょっとビターで、でも確かに「創る人」「創った人」の価値を認める物語。
桑山千雪のGRADは、そんな物語です。もしまだ見ていないという方は是非この機会に一度、ご覧になってみては如何でしょうか。





なんで千雪の雑貨に値段が付かなかったの?

画像6

んで、実際問題なんで千雪が個人的に出した雑貨が落札されなかったのかって話をちょっとしたいんですけど。

これ、いろいろな理由があるとは思うし、変なポエムが原因っていう話もあるし、なんか話の中だと上の画像のセリフで千雪は納得しちゃってるんですけど、僕個人的に一番デカいのは「開始価格を1円にした」事だと思ってるんですよね。

いやだって、雑貨店に務めてた千雪なら雑貨の価値がこの値段で収まらないことぐらいは解ってるでしょうに。というかだからこそプロデュースの最初に素材の原価の話が出てきたわけで。
物品には価値と意味がありますし、それが安ければ安いほど良い、というのは消費者としても余り良い考えでは有りません。価値や意味があるから値段が付けられるわけで、極論1円という値段は買い手すらも甘く見た、強い言い方をすれば「客をナメた」数字だと僕は思ってます。
やたら安く売られてる肉を買うのが不安なのと一緒。

同人でもそうなんですけど、法外なぐらい値段を安くしたり原価割れしたりしてるのを頒布してるのを見ると個人的には凄え嫌な気持ちです。早い話、自分の作品に対して信頼を置いてない、って思っちゃうんですよ僕は。
絵を描いたり文を書いたり、それを綴った本を作るってのは本当に技術と気合と愛が必要だと思ってて、それを成し遂げた「労力」に我々はお金を支払ってるので、別にそれを頒布して印刷費を回収してくれるのは大歓迎ですし同人誌即売会っていうのはそういうシステムで成り立っていると思っています。そういう見てくれる人達すらを信じてくれていない、そういう値段の設定は本当に良くないと思うんですよね。いっそ儲けてくれ、こっちもスッキリするから。

というか、そんな千雪がなんで1円で出品したのかって話になるんですけど、これはやっぱり「アイドルの自分」への対抗心だったんですよね多分。ラジオの企画で1円で出品したのが凄え値段になっちゃったから、その価値がスタートじゃないと意味がないって千雪は思っちゃったんでしょう。
ただもう、この時点で齟齬が生まれちゃってるんでしょうね。

「でも、値段をつけるのは自分じゃなきゃ」
というプロデューサーの言葉は最もです。
自分で作ったものだからこそ、責任を持って自分が金額を決める。
そこまでやってこそ、「自分を認める」事だと思うのです。

結局アイドルの桑山千雪の価値は自分で決めたものじゃないので、それを桑山千雪本人を並べてしまうこと自体が間違ってるんですけど、千雪はこういう時に物凄い負けず嫌いな女の子な内面が飛び出してくるので、原価割れだと解っててもこういう無茶をしてしまうのです。

画像7

桑山千雪、大人なお姉さんの造形はしてますけど内面に秘めた少女性はなんなら放クラ並みの若さだなって思うので、割と面白い子だなと思います。割と戦って勝つのが好きなタイプなので、こういう台詞をサラッと吐いちゃうんですよね。だから今回みたいな騒動を起こしちゃうんですけど。
ぶっちゃけプロデューサーと凄い相性がいいなと思うけど結婚しなさそうみたいなそういう感じが好き。大学サークルの先輩後輩感が凄いんですよね。

なんかシャニPと千雪はお互い別の人と結婚して、その後も付き合いが続きそうと言うか。一緒に子供を連れて公園に行って「プロデューサーさんもお子さんを持つようになっちゃったんですね」「千雪の方が親としては先輩だからな、見習わせてもらうよ」みたいな会話をしてそう。
そんでお互いの子供が小学校に上がるぐらいの頃に二人で飲みに行って「私、実は昔はプロデューサーさんが好きだったんですよね」って笑いながら千雪が言い始めて、シャニPもそれに戸惑うんだけど「冗談です♪ …今は、ですけど」で笑って流されて、お互いの家に戻っていく中で「なんだか昔を思い出しますね。これからも、宜しくお願いしますね」なんて言われそうというか。

妄想が長いんだよ!!!!!



余談


画像8

急に素材の原価の話が出てきてそれが暫く続いたので「なんだこれは…マ○ターカードのCMか…?」とか思ってました。
最後に「私の作った素敵な雑貨、プライスレス♪」なんて言っちゃうのか!千雪~~~言っちゃうのか~~~~!!!

ってよく解らない気持ちを抱えたままのプロローグでした。
まぁ言わなかったんですけど。言うわけねえだろ!





画像9

いやお前が言うんか~~~い!!!!!!

やっぱりプライスレスじゃん!
マス○ーカードのCMだこれ~~~~~~!!!!!!!



千雪GRADを読んだ僕の気持ち プライスレス。

画像10

買えるものはフェザージュエルで。



おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?