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パートナーセールスチームのあるべき組織体制②

皆さんこんばんは。
パートナーセールスの葛西です。

先週のnoteでは前編として、プロダクトごとの縦串組織か、プロダクト横断の横串組織のどちらが良いか、その考察を書かせていただきました。

本日は後編として、パートナーセールスのフェーズごとの組織のよくあるパターンと特性について書かせていただきます。

本noteを読むことで、パートナーセールスの目指すべき組織体について、具体的なヒアリング結果から、ヒントが得られるかと思いますのでぜひ最後までお付き合いください。


はじめに

パートナーセールスがどこまでの業務を担当するのかというのがSaaS企業ごとでそれぞれ異なっています。
多くのSaaS企業のパートナーセールスの方々にヒアリングしたところ、組織体制および役割について、大きく4つに分類されました。

パートナーセールスの組織体制と役割

【フェーズ1】 役員・事業部長 or 営業部長 or マーケティング部長 or インサイドセールス部長の特命部隊

パートナービジネス立ち上げ時に多い体制です。
まだ部署設立までには至らず、役員や事業部長の直下の特命部隊というフェーズです。
人数は1〜2名程の体制であることが多いです。
少人数のため、役割としてはパートナー企業の開拓と深耕営業がメインです。
パートナー経由での商談は直販担当セールスが対応するという体制を取られているSaaS企業が大半でした。

※もちろん1、2名でやっているにも関わらず、パートナー経由の商談まで対応するという猛者も稀におりますが。

そして、複数プロダクトを持つ大企業や上場企業などで多いのが、役員・事業部長の直下ではなく、各部長(営業/マーケ/インサイドセールス等)の直下の組織として立ち上げるケースです。
(人数は相変わらず少人数)

ここで特徴的なのが、どの部長の直下なのかによって組織内で置かれるKGIが異なる傾向があるということです。

  • 営業部長の直下

    • 受注数やMRR

  • マーケティング部長やインサイドセールス部長の直下

    • パートナー経由の商談数やリード数

に置かれる傾向が強いです。
要するに、直販の各部門が置いているKGIと合わせる傾向が強いということですね。

役員・事業部長型・部長直下型の体制は、私がヒアリングさせていただいたSaaS企業のうち、約30%でした。
これからパートナービジネスを立ち上げるというSaaS企業が増えているからこそ、約3分の1程度がこの直下組織体制を引かれておりました。
今後もパートナービジネスを立ち上げるSaaS企業は増えていくのではないかと考えています。

【フェーズ2】 専門部署ができる。パートナー企業の新規開拓と深耕営業のみ対応、パートナー経由の商談は直販が対応するパターン

フェーズ1と違い、フェーズ2では特命部隊ではなくパートナーセールス部として部署が立ち上がっている状態が多いというのが大きな違いです。

人数としては約4〜6名程といった規模。
パートナー戦略により本腰を入れるフェーズに差し掛かっている企業に多いです。

役割としては、主にパートナー企業の開拓と深耕営業がメインです。
パートナー経由での商談は直販のセールスが対応する(パートナーセールスがパートナー経由商談の対応はしない)というパターンが多いです。

直販:パートナーの売上比率

このフェーズだとまだ直販:パートナーの売上比率は5:1〜4:1以下くらいの比率です。
圧倒的に直販比率が高いSaaS企業が多かったように思います。
パートナービジネス立ち上げ後、1〜3年程度経過したあたりの企業がこの組織パターンが多いように思います。

このフェーズ2の組織体制は、私がヒアリングさせていただいたSaaS企業のうち、約35%でした。

日系SaaSのパートナービジネスの歴史が浅いこともあり、パートナー制度を本格的に初めて1〜3年程の会社がこのフェーズにいるようです。
フェーズ1とフェーズ2で約65%と全体の6割5分を占める結果となりました。

SaaSの市場規模が2021年:9,268億円→2026年:1兆6,681億円に拡大していることもあり(出典:富士キメラ総研のソフトウェアビジネス新市場2022年版)、今後も新たなSaaS企業がどんどん出てくるかと思いますので、必然的にパートナービジネスにアクセルを踏むSaaS企業も増えることが想定されます。
ですので、今後もこの1〜2のフェーズ・組織体制を引かれるSaaS企業群はこれからさらに増えてくるのではないかと考えています。

【フェーズ3】 専門部署。パートナー企業の開拓と深耕営業、パートナー経由の商談を全て部署内で対応するパターン

パートナーセールスの役割として、主にパートナー企業の開拓と深耕営業という業務に加え、パートナー経由での商談もパートナーセールスが対応するというパターンの組織です。
このフェーズで大きく違うのはパートナーセールスの人数です。
フェーズ3の方が多く、約6〜12名程といった規模であることが多いです。
この人数くらいに入ってくると、紹介代理店ではなく販売代理店としてパートナー様側でクロージングまで行っていただけるようなパートナーの数が増えてきており、それに伴ってパートナー経由での商談もパートナーセールスが対応するというパターンを取られるSaaS企業が増えてきます。
※SaaS企業のよくあるパートナー契約の種類については、こちらをご参照ください。

直販:パートナーの売上比率

フェーズ3では直販:パートナーの売上比率がおおよそ3:1〜2:1、もしくは1:1くらいの比率まで高まっているケースが多いです。
パートナービジネス立ち上げ後、3〜5年程度経過したあたりのSaaS企業さんでこの組織構成パターンが多かったように思います。

このパターンの組織体制は、私がヒアリングさせていただいたSaaS企業のうち、約25%でした。
特に、パートナーセールス部に多くのリソース(min. 6名以上)を張れる企業、古くから販売代理店モデルや卸モデルが根付いている業界(例:HR業界)などでは、この組織構成パターンが多い傾向にありました。

【フェーズ4】 パートナーセールス版The Model型組織

最後のフェーズ4は、SaaSの直販部隊でよく引かれているThe Model型組織のように役割が細分化された組織体制です。
例えば、パートナーセールス部内に以下の担当がいることです。

  • パートナー経由商談専任のFS(フィールドセールス)

  • パートナー専任のマーケティング担当

  • パートナー開拓担当

  • パートナー深耕営業担当

  • パートナー経由顧客専任CS

上記のように役割がすべて別れてるケースではなく、特定の役割が合体しているケースもありました。
例えば、パートナー深耕営業担当とパートナー経由の商談担当を同じ人物にしているSaaS企業もありました。

直販:パートナーの売上比率

このフェーズの場合、売上比率が2:3以上とパートナー売上比率の方が逆転していることがほとんどです。
パートナーセールス部門全体の組織規模として少なくとも15名〜20名以上といった規模になっており、パートナービジネス立ち上げ後、5〜7年程度経過した、パートナービジネスの雄と呼ばれるようなSaaS企業さんでこの組織構成パターンが多かったように思います。

このパートナーセールス版The Model型の組織体制を敷いている企業は、私がヒアリングさせていただいたSaaS企業のうち、約10%でした。

一部、フェーズが浅くパートナーセールス部門を少数でやっている企業の中で、部分的にThe Model型の分業体制を敷いているケースのもありました。
が、それも含んでの10%です。
パートナーセールス組織の完全The Model型の組織体制を引いているようなSaaS企業は、私がヒアリングした中では片手に収まる程度しかありませんでした。

また、以前別のnoteでMDF(マーケティング・デベロップメント・ファンド)についても少し触れましたが、そもそも日系SaaS企業の中ではパートナー専用のマーケティング費用を取っていたり、パートナー専任のマーケティング担当を置いていたりすることがまだまだ少ないです。

理想のパートナーセールスの組織体制とは?

ここまで、前編では縦串と横串の組織体制、後編では各フェーズごとでのパートナーセールス組織と役割のパターンについてまとめさせていただきました。

そもそも、パートナービジネスにおける正攻法が日本市場でまだ構築されていない中ですので、パートナーセールスの組織体制においてもまだ正解がどの組織体制なのかという解は出ておりません。
ここからは多くのSaaS企業のパートナーセールスの方々から伺ったお話を加味しての私見となりますが、本気でパートナービジネス領域を伸ばしていくという方針なのであれば、最終的には「【フェーズ4】パートナーセールス版 The Model型の組織体制」にしていくというのが正解ではないかと私は考えています。

理由としては、以下があります。

  • パートナーセールス部門内に各職種の専任者を置くことで、パートナー側とのコミュニケーションや社内の情報連携が格段にスムーズになる

  • 全員が追うべき指標や数字が一致する

  • MBOに紐付けやすくなる、など

※ただし、この組織体制を引く前提として、パートナービジネスを本気で進めていく覚悟とリソースがしっかり張れるのかというのが前提として必要ですが。。

また、各役割に特化すると、パートナーセールス領域に以下のようなメリットがあると考えております。

  • 専任マーケティング担当

    • 直販と兼任だと、どうしても直販のほうを優先されがちになるといったことが起こっているのではないでしょうか?
      専任担当を置くことで、率先してパートナーさんとのマーケティング企画を作ってくれたり、パートナーとのセミナーやイベント等の空中戦用の予算を別途確保できるなどのメリットがあるかと思います。

  • パートナー専任CS

    • 直販のCS担当だと、どうしてもパートナーさん側との接点を取らず、自社のみで完結させようとされる傾向が強かったりしませんか?
      継続時にパートナーさんの力を借りて、連携してサービス継続のためにお力を貸していただくなんてこともできれば、チャーンレートを下げることにもつなげられるのではないかと思います。

  • パートナー商談専任FS

    • 案件を作ってくれたパートナーの営業担当と連携したり、うまく役割分担しながら受注まで一緒に走っていける。直販のFSの対応だと、このあたりのパートナーの営業担当との連携・コミュニケーションがあまりうまく取れておらず(もしくは個人に依存する)、パートナーセールス(パートナー深耕営業担当)が間に入ったりする工数が発生することが多い(まさに今の私がこの状態になってます・・・)。
      ※もしくはパートナー経由の商談もパートナーセールスが対応するというパターンもあり(その分、担当するパートナー数を減らすことにはなりますが)。

最後に、前編・後編をまとめると、横串か縦串かは、訪問先によって変える(重点支援するパートナーが被る場合はプロダクト横断の横串の組織体制を採用、重点支援するパートナーが被らない場合は縦串)、パートナーセールスの組織はPS版 The Model型の組織が1番の理想ではないかというのが、多くのパートナーセールスの方々とお話した上での私の考えです。

これからパートナーセールス組織を立ち上げるという方やパートナーセールスの組織改編を考えているという方の参考になればと思っております。


それでは来週のnoteもお楽しみに!

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