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楽天ペイアプリに楽天Edyを統合した背景を推測たら、楽天ペイが一人勝ちする未来が見えた

楽天が「楽天ペイ」アプリで「楽天Edy」を使えるようにしました。

 楽天ペイメントと楽天Edyは2月6日、スマホ決済サービス「楽天ペイ(アプリ決済)」のAndroid版アプリを更新し、「楽天Edy」を直接利用するための機能を追加した。おサイフケータイを搭載するAndroid端末において、同アプリをインストールまたはアップデートすることで利用できる。

楽天ペイアプリの中で楽天Edyの残高管理ができるようになるそうです。これは不思議な動向です。楽天ペイと楽天Edyは残高の共有もしておらず、現時点でサービスとしては全く連携していないからです。なぜ楽天は楽天ペイと楽天Edyのアプリを共通化したのでしょうか。

アプリ統合の危険性

エンジニアの視点でみると、一つのアプリに複数の機能を盛り込むのはとても危険な行為です。なぜならそのアプリの仕様が複雑化するからです。

今回の例でいうと、楽天ペイの機能を改修しようとした時に、開発者が意図しない理由で楽天Edyの機能に良からぬバグを作ってしまう可能性があります。

バグというのは意図しないところで起きます。人間はミスをする動物です。その人間が作った者にミスが無いわけがなく、それがバグとなって表れます。世の中にバグのないプロダクトは有りません。

起きうるバグを回避するにはふたつ方法があります。ひとつは疎結合的に設計し実装することです。今回の例で言えば、楽天ペイと楽天Edyの機能が互いに必要以上に影響し合わないようにします。もうひとつは、念入りの動作確認を行うことです。

ふたつの回避策を行えばよいではないかと思うかもしれませんが、これを実現するにはかなりの投資が必要です。

デザイナーや開発者はかなり高度な知識と技術を持ち合わせている人を集めなければなりません。平均的な知識と技術を持ち合わせた人員を集めたところではおそらく破綻します。

そして念入りの動作確認をするには大規模な人員が必要です。こちらは単純に量です。

楽天Edyを楽天ペイに吸収する布石か

ここから先は憶測の域を出ないのを前提に読んでください。

予想としては、今回のアプリの統合の背景には大きなプロジェクトがあります。そしてこのプロジェクトには全体として相当な投資が行われていると思います。このプロジェクトの行き着く先は楽天ペイによる楽天Edyの吸収合併だと予想します。

ところで楽天ペイはJR東日本が提供するSuicaとの提携が発表されています。今年(2020年)の春にはAndroid限定で楽天ペイからSuicaが利用可能です。Suicaで決済できる店舗や鉄道で楽天ペイが使えるようになるのです。

楽天Edyの吸収合併が行われると、Suicaに加えて楽天Edyでも楽天ペイとして決済できるようになります。これが実現すれば、楽天ペイ対応店に加えて楽天Edy対応店とSuica対応店でも「楽天ペイ」として決済が可能になり、「楽天ペイ」が私たちの生活範囲のかなり幅広い領域で利用可能になります。

楽天ペイで楽天EdyとSuicaでの利用が可能になった時、利便性の点ではPayPayでもメルペイでも太刀打ちできなくなります。

楽天ペイは還元率競争が終わってから勝つ

昨今はPayPayとメルペイを軸にした決済業界の攻勢が目立ちます。その攻め方は還元率競争です。

PayPayやメルペイは10%から50%といった高額の還元を行うことでユーザを取り合っています。しかしこれは非常に危険です。なぜなら、還元率の良さで獲得したユーザは還元率が悪くなったら離れていくと思われるからです。

還元率の良さで獲得したユーザを離さないようにするには高額還元を続けていかなければなりません。いくら巨大な資金があったとしても、永遠には続かないでしょう。

一方で楽天ペイは還元率競争には消極的です。現状は追随するために5%還元のキャンペーンを行っていますが、昨年の12月には還元率を0%にしています。それ以外において還元率で張り合う様子は見られません。

楽天ペイはそんなライバルのチキンレースを尻目にして、着々と基盤を築いています。政府の消費者還元事業が終了して決済事業各社が疲弊した頃、楽天ペイは肝心の利便性や顧客体験の点で大きくライバルを突き放しているのだと思います。

楽天ペイが見据えているのは、還元率競争が終わった後の世界なのかもしれません。

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