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エロトラップダンジョンに憧れたソーニャは歴代最強のおんなのこ!【プロローグ】最終試練!(R18)

 ──来てしまった。聖職者プリストのソーニャは期待に胸を躍らせていた。このために厳しい修行に耐えてきた、と言っても過言ではない。目の前にそびえ立つ、“アモーの塔”と呼ばれる神気を纏ったその塔は、ソーニャの属する『アモー教』の最後にして最初の試練である。アモー教の見習いは、修行の総仕上げとして一人、塔の頂上まで到達し、そこにある聖アモー像に教会より授かった聖なる首飾りをかけ、祈りを捧げる事で、真にアモー教の一員となるのだ。

 塔は常にほの明るく輝いている。特に夜になると淡い花の色の光を放つことで、特殊な色覚を持つ魔物モンスターおびき寄せるという。入り口は明るいうちは固く閉ざされ、入る事も、出る事もままならない。日が向こうの山へ沈もうとする今、ソーニャの目の前の扉は昼間の、大理石を思わせる模様をした、厚く硬い質感を失おうとしていた。

 赤子の頃に両親を亡くし、天涯孤独の身をアモー教会に引き取られたソーニャは、それ故に、教会の外へ出る事を許されていなかった。教会の窓の遠くから眺める美しい塔を眺め、祈りを捧げ、時折、塔から新たに戻った『おねえさま』の様子を部屋の戸の隙間から見つめ、思いを馳せるばかりであった。

 おねえさまたちはみなわらい、民のために心身ともに尽くし、時には戦っていた。どのような時でもその美しい笑顔が、塔から戻った時だけは、塔へと旅立つ前とは様変わりした姿で、咽び泣いてせるのだ。おねえさまたちは試練の時だけではなく、日々の鍛錬としても時折塔へ向かうことがあり、その度に力を増し、しかし、酷く疲れ果てて帰ってくるのだ。あの、高貴で何者にも屈する事がない『おおねえさま』でさえ、数日の間はお休みになるほどであった。

 塔をるおねえさま達は『いもうと』であるソーニャをよく気にかけていた。時折、酷く哀しい目で見る事さえあった。それはソーニャの生い立ち故かはわからないが、修行を終え、一人前となればきっと認めてくれるとソーニャは信じていた。

 ソーニャは早く塔へ至るために誰よりも修行を重ねた。結果、アモー教の中でも特に優秀だと認められ、また、歴代の『大ねえさま』よりずっと早くに塔を昇ることを認められたのだ。これにはソーニャが塔を昇ることへ反対していたおねえさま達も、口をつぐんだ。

 塔の前まで、ほとんど総出で見送ってくれたおねえさま達は、皆修行の無事を祈り、讃美歌を唱えながらソーニャを見つめている。ソーニャは日が少しずつ隠れ、夜が深くなるに連れて柔らかく、ぬるくなっていく扉へ、扉の前に付き添った大ねえさまに言われた通りに背を預けた。

「よいですか、ソーニャ。この首飾りは何があっても、塔の頂上まで外れることはありません。それが時に苦痛に思う事もあるでしょう。しかし、この試練を乗り越えた時、あなたには真の力が宿り、アモー神の加護を受け、きっと誰よりも強くなると確信しております。よい結果を期待しておりますよ」
「はいっ、大ねえさま!ソーニャはきっと成し遂げて見せます!」

 大ねえさまは全てを受け入れてきた輝くような微笑みでソーニャの額に口付けを与えた。そして、日が完全に沈んだその瞬間、小さなソーニャを力一杯に扉の中へと押し込んだ。どぷん、と肉色に変化した扉はソーニャをあっさりと呑み込んだ。あ、と小さな声を残しソーニャは扉の中へと消える。

 上半身を扉へ呑まれそうになる大ねえさまを助けようと、年若いおねえさまが歌を止め駆け寄ろうとするのを他のおねえさまが止めた。そして、歌を続けるよう促した。
「私達はソーニャが再び教会へ戻れるように、祈り続けるのです。大ねえさまなら大丈夫」
そう言うと同時に、塔がいっそうまばゆく輝いた。大ねえさまが強力な神気に弾かれるように扉から離れた。
「ソーニャ……彼女は、わからない。あの子は……」
一人のおねえさまが震えた声で言う。
「あの子は、自分の力がどれほどのものか理解していないもの……」


名前:ソーニャ
性別:女
職業:聖職者見習い ※1
種族:人間
HP:1000 ※2
MP:500 ※2
状態:正常 アモー教徒の紋(不活性状態)
感度:50 ※3
装備:修道着 試練の首飾り※4

※1 アモー教の修練を終えたものの職位である。

※2 教徒でない人間の基礎値は平均してHP500、MP200である。本来ならばアモー教の技能値として+100される程度であるが、ソーニャは特に修練を積んでいた事により異例の高ステータスとなった。これは多くの『おねえさま』を凌ぐほどである。

※3 教徒でない人間の基礎値は10、アモー教の『大ねえさま』は1,000を超える。

※4 首飾りが外れたり、壊れたりすることはない。

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