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読書振り返り・8月編

ひとりしか読んでくれてる人がいない気しかしないけど書きます。

8月

赤い氷河期、オルタネートについては以下の記事にまとめています。

なお、加藤シゲアキ氏については12月にも『なれのはて』を読んでいて、あまりの完成度の高さにずっと震えていたので、また改めて……この方、間違いなく作家としてのレベルが並じゃない。

■こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。/標野凪
→喫茶ドードーシリーズ2巻。これまたバスの中で読んで泣きました。どれだけ疲れてるんだ私。詳しくは5月の振り返りで。さくさく読めます。

■六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成
→同作者3冊目。むしろこれが一番有名なのになんで?って感じですが。
就活。て、なんなんでしょうね。既に面接を『する側』になっている私はどうしてもそっちの目線になってしまう。 
ある程度読んでいる途中で「うーんあの時本当は」と気が付いても、それでもなお『え、それは気づかなかった!』という返しがあるのが面白い。この方、きちんとわかりやすくヒントを出してくださる方なので、「わかっちゃった」な満足感と「えっ」な驚きと「あのときのあれはこれか!」という納得感をちゃんと与えてくれるんですよね。(どんでん返し、というな名のただのめちゃくちゃじゃない)
安心して読める作家さんだなあと思います。

■ティファニーで朝食を/トルーマン・カポーティ
→なんていうか、村上春樹です。ちなみに映画は未視聴。
ホリーかわいいよホリー。破滅するからダメだってわかっててもこういう女性にふらふら寄っちゃいたくなる気持ちは分かる。というか行動範囲がワールドワイドすぎるよホリー。
しかも、めちゃくちゃなようで常に『真理』が見えているというか、すごく頭がいいんですよね。頭が良すぎて、「社会の暗黙のルール」とかに従えないタイプ。

『嵐ヶ丘』の話をするシーン。

「うん、まさに名作よね。『私の素敵な、向こう見ずなキャシー』。どれだけ泣かされたことですか。十回も見たわ」
 僕はかなりの安堵を込めて「なるほど」と言った。その「なるほど」に、うわずった恥ずべき抑揚をつけて「映画か」という言葉が続いた。
 彼女の筋肉がきっとこわばった。まるで日差しに温められた石に手を触れているような感じがした。
「人は誰しも、誰かに対して優越感を抱かなくてはならないようにできている」と彼女は言った。「でも偉そうな顔をするには、それなりの資格ってものが必要じゃないかしら」

『ティファニーで朝食を』より

このシーン、作家である主人公が、自分の小説と名作小説を比べるな、というシーンなので必ずしも全てがそうということでは無いんでしょうが、「恥ずべき抑揚をつけて」という位なので『なんだ、映画だったか』というようなニュアンスには『映画<小説』という含みはあったんでしょう。それをすぐ察知して、人の心理的な本質について即言及する。
ホリー、君がもし、生まれた時代が違ったなら、今だったなら、きっと素晴らしいインフルエンサーになれたに違いないよ。
村上春樹の『魅力的な女性』を書く上手さもあって、最後までホリーホリーとなれる納得の名作でした。

■梅雨物語/貴志祐介
→ほんっっっとうに多彩な方ですよね。エンタメ、SF、サイコ、そしてホラー。え?あれも貴志祐介だったっけ?となりまくれる作家さん。
梅雨物語は、秋雨物語と同じホラーミステリー短編集です。が、必ずしも『超常現象』が出てくる訳ではなく、殺人事件や病気などリアルな設定の作品もでてきます。
特に好きなのは、

秋雨物語
∟フーグ
眠れなくなります。読めば分かります。幽霊とかじゃないです。眠っちゃダメ・・・・・・なんです。

梅雨物語
∟くさびら
全てがネタバレになるので何も言えない……。キノコ恐怖症的な人がいたら、読まないでね、としか。

どの作品もホラーでありミステリーでもあるので、がっつり「ここがさあ!」と言えないのが悲しい。でもずーーーーーーっとじめじめしとしとしていて、秋雨、梅雨、を冠するだけのことはあります。読んでいる間、雨音の幻聴がするくらい。ぜひ、じめじめしたい時に読んでみてください。



9月??9月はね、池井戸潤祭りだった記憶はあるよ!!!

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