見出し画像

映画「残酷で異常」あらすじと感想

エドガーは妻とその連れ子の三人で暮らしていた。
非常な愛妻家を自称する彼だが、記憶にない「口論の末に妻を窒息死させた」という罪で謎の施設に幽閉されてしまう。
そこではテレビ画面越しの講師の指示で、罪人らは自分の犯した殺人の内容を繰り返し全員の前で告白させられ、さらに自分が罪を犯すシーンを繰り返す世界の中で追体験させられる。
自分が妻を殺したことを信じきれないエドガーは、数人の罪人らに協力を仰いで施設からの脱出を図る。

‐‐
邦題から猟奇モノを想像していたが、思っていたものとは全然違った。
タイトルのいう残酷、異常、というのは殺人、特に近しい人間を殺めたり自身の死によって身内が得るであろう痛みを慮ることのできない人間性の罪深さを指しているのかなと思った。

思い出したくもないような自分の過ちを永遠に繰り返させるこの施設の方がよっぽど残酷だし異常だと思うけど……。

施設の講師の正体は何なのか、施設の目的は? 色々と謎が残り、後味がいいとはいえない映画。
未熟な自分は変化のないループ物は退屈さを感じてしまう。

我々オーディエンスには見えていたが彼自身には見えていない、エドガーを取り巻く客観的な状況を彼が理解していくプロセスはよくあるラストで答え合わせ、という展開の映画とは違って、新鮮な面白味があった。

客観視することに対する社会一般の盲目的な信頼がはびこっている現在だけど、過去の自分の行為や状況を客観的に顧みるという体験がによって誰もが自分の背負っている十字架に前向きに向き合えるとは私は思えないし、正直なところこの映画の結末はエドガーの自己満足にしか見えなくて彼の表情に気持ち悪さすら感じてしまったけど、それで今まで見えなかったものが見えて、自分一人だけでも救われた気持ちになれるならいいのかもしれないと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?