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窓月報 2024/02



 今年の目標のひとつに、「自分を客観的に見つめる」というのを定めていて、その客観的に見つめる手段として毎月月報を書こうと思う。


 私は、周りの人よりも「記録すること」への思いが強いと思う。そんな私が記録を残すことに熱心なのは、ずっと前に私の友人が言っていた言葉が心に保管されているからだと思う。

「過去の自分と出会える方法って日記しかないんじゃないかと思った。日記じゃなくてもどんな媒体でも記録を残すことによって、時を超えてその時の心象や記憶がよみがえってくるのってすごくいいなと思う。」


 話の主題が「日記っていいよね」という出発点から、友人があまりにもナチュラルにすごいことを言ったので思わず興奮してしまい友人の言葉をメモした。私が自分の日記や写真を振り返っていたときに感じていた面白さって、過去の自分と再会しているからなんだと実感した。この月報もそんな作用が生まれたらいいな。



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⚪︎ 読み終えた本

「感情の世界」島崎敏樹 著

 この本を1年前に購入してようやく読み終えた。精神科医の島崎敏樹さんの著書。初版が1952年なので約70年前の書物になるけど問題なく読み進められた。

 内容は、「感情」を引き起こす人間の道理や洞察、個人で繰り出される主観的な感情の描写、物に感情移入すること、自分が自分ではないような感覚、身体の感覚器官と自我の感情が相反すること(痛いのに嬉しい) など、ここには語り尽くせないほど個人的かつ人間に誰しも備わる感情の世界をさまざまな観点から繰り広げられていた。

感情といえば、よろこび、かなしみ、怒りといった基本的なものをはじめとして、いらだたしさ、やるせなさ、うっとうしさ、すがすがしさのようなニュアンスにとんだ感情をあらわすことばのいろいろを私どもは日常使わぬことはないし、またこうした自分の心の状態を表現するもののほかに、自分が向う外の人に対する気持ちをあらわすところの、愛、憎しみ、嫉妬、あわれみ、さげずみなど、さまざまな言葉が使われる。

「感情とは何か」をひとおもいにはっきりとらえることはらくでない。それは私どもの心のなかで(あるいはむしろ、身のなかでというべきかもしれない)うごく何らかの意識である。

「感情の世界」17p


 読んでいて不思議だったのは、感情という複雑な難しい主題であるのに著者の文体が文学的でやわらかいので、ねむりを誘うような居心地が充満している。だから感想を求められても、内容ではなくて「この本を読んでいると、心が落ち着いてリズムが一定になる」という感覚の方が上回ってくる。また読み返して理解を深めていきたいな。


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⚪︎ 観た映画

映画「哀れなるものたち」

天才外科医のバクスターの手によって胎児の脳を移植されたベラは、不幸な死からよみがえる。世界を自分の目で見たいという欲望に駆られたベラは、放蕩者の弁護士・ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。偏見から放たれたベラは、世界を吸収し、成長していく。

 哀れなるものたちは、知り合いや友人が話題に挙げていて気になっていた作品。鑑賞前の事前情報としてR18指定の性描写や人体解剖の描写があることは認識していて、両者共苦手だけどなんとか臨んだ。

 鑑賞後、うまく形容できないけど蒸気が上がるような気持ちに襲われた。近い言葉で言うなら「私もベラのように生きたい」と突き動かされるような気持ちでいっぱいになった。劇場で観れて本当に良かった。ここに感想を残そうと思う。


 あらすじの通り、成人女性に胎児の脳を移植をされた「ベラ」という人間は肉体と精神がチグハグで行動が奇妙だった。しかし、徐々に発語するようになったり、本能的な欲求から性器を弄ぶようになるなど徐々に動物的な生存本能が現れてくる様子が面白かった。

 物語は展開し、ベラは複雑で伝統的な価値観や常識で飽和した社会に身を置くことになる。前提として彼女は肉体は成人女性だけど知能は子供であるため、固定概念や常識や慣習、社会格差などをほとんど知らない状態にある。言わばスポンジ状態。だから周囲の人間が彼女に物事を教えるとそれを鵜呑みにしてしまう。この様子をスクリーンで観てた時に、「教育もそうだよな。小さい頃なんて大人が言ったことを信じるしかなくて刷り込まれていくものだよな」と感じた。

 ベラは船旅の最中、いろんな人や光景、物と出会った。ある場面で彼女は「幸福がセックスの快楽だけではない」ことを知った。さらに別場面で貧富格差を目の当たりにし、人間の不平等はお金で解決されない(搾取されている)ことを知る。そして「女性が学を得る」ことさえ阻害し、女性の権利を度外視する酷さも知った。

 このような経験からベラ自身で言語化はできなくとも、肌で人の愚かさを体感しただろうし、引き合いにその経験から自身にも大きな影響を受け、アイデンティティが確立されていったんじゃないかと思う。

 やがて、ベラは娼婦となり客体化されていくけど、ベラの純粋な洞察力がここでも働いていた。ベラの働く娼館では、客が娼婦の一人を指名するシステムだった。その構造に対しベラが「なぜ男性が選ぶんですか?私たちにも選ぶ権利がありますよね」と言及していて、後ほど支配人に目をつけられ黙殺されてしまうのだけど…。このシーンで、純粋な目線で洞察するベラに成長を感じてなんだか嬉しかった。私は女性を客体化したビジネスにモヤるタイプだけど金稼ぎの手段として合理的なのは分かるから何とも言えない。いやでも普通にキモいよ!手段として合理的だと判断するしかない社会構造が歪んでないか。でもこの女性(男性)が客体化されるビジネスって昔から伝統的だよなあ…。


 そして物語の終盤、ベラは娼婦を辞めて故郷に帰る。生みの親でもあるバクスターの最期を看取った後、彼女は医者になると決意した。彼女はここにくるまでいろんな経験を重ねてきた。赤ん坊の知能から、年相応の知能(年相応かは断定できないけど)を獲得し、アイデンティティを確立していく様子は鮮烈で濃厚だった。女性の自立を描いているといえばそうなんだけど、彼女はどんどん道を切り拓いていくんだろうなと思うエンディングで私はそれがすごく嬉しかった。

「私は、新しい自分として、私のクリトリスを大事にして生きる」

 終盤、ベラが言い放ったこの言葉。男の道具なんかではない、一人の人間として女性として生きていく宣言だった。かっこよかった…。観れて本当に良かった。


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⚪︎ noteのフォロワーさんと会った

 noteで知り合った方とお会いした。noteを始めたとき、未来の自分がまさかフォロワーさんと会ってお話するなんて予想してなかったと思う。でも、お相手の方がすごいんだよね。私の手を引いて連れてくれたような感じ。「会いたい」の引力ってすごい。

 実際に会うまで色んな想像をしていた。例えば、髪型どんな感じなんだろう、とか。沈黙とか気まずくなるかなーとか。どんな笑い方をするのか見れるの楽しみだなーとか色々考えていた。

 そして実際にお会いしたとき、声を聞いて「本物だー!!」と心の中で感動した。通話越しでは得られなかったものを直に感じて、人と会って直接話すって良いなあと改めて思った。目には見えないけど感じる警戒心や親密な空気、気を遣い合うくすぐったさ、二人きりになった時の安心感、別れ際の寂しさとか、そういうものを感じられて会って良かったなあと、日が経ってからも心に残っている。


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⚪︎ 鎌倉旅行

 大好きな友人4名と鎌倉旅行へ。正確には鎌倉と江ノ島と横浜を3日間まわった。まず1日目は鎌倉。羽田から鎌倉まで約1時間で着き、ホテルに荷物を預け、イワタコーヒー店という喫茶店に入り、そのあと英国アンティーク博物館へ行き、最後に鎌倉大仏を観に行った。ホテルに戻ったのは18時頃でその時間の余裕さと健全さが面白かった。休息第一。

 鎌倉で印象に残ってるのは、鎌倉大仏。教科書でしか観たことなかったけど、想像以上に大きくて声を上げたし、重厚感があって静かで綺麗で見惚れてしまった。胎内にも入った。背後にまわると猫背気味なのも良かった。友人が「父親の背中のようだ」と言っていて笑った。


【大好き】喫茶店のソーダフロート
旅行参加できなかった友達のトレカを作って旅のお供に



 2日目は江ノ島をまわった。朝は9時にホテルを出て、朝ご飯を食べにヨリドコロというお店へ。さば干物定食を頼んで、人生初の卵かけご飯をいただきました。美味しかったです、とても。


 江ノ島に向かう前に、鶴岡ミュージアムと鶴岡八幡宮へ寄った。


 そして江ノ島へ。江ノ電のレトロな雰囲気を楽しみながら、鎌倉高校前駅を過ぎる時に見えた車窓からの海の眺め…!ドラマチックで映画のようだった。同時に、この地域に住んでいる人からすると日常なのかもしれない、当たり前だから通り過ぎる景色なのかもしれないなと思ったりした。事実、そばにいた男子高校生のグループは海の景色などお構いなしという様子だった。慣れ親しんでいるんだなあと。


 江ノ島に着いて食べ歩きをして、たこせんを食べた。ナンバーワン!オンリーワン!という感じの美味しさだった。途中で桜の木に遭遇したので、はしゃいで写真を撮りまくっていた。そしてまたぐんぐんとエスカーで高台の方までいくと海が一望できるスポットに辿り着き明るい声を上げた。





 15時、遅めのお昼ご飯を食べた。頼んだのはしらす丼。沢山歩いたので、久しぶりに腰掛けて休めたのでみんなの顔がほっとしていた。初めて食べたしらす丼は美味しかった。

 その後、お寺でお祈りしたあと、ゆっくり移動をして七里ヶ浜へ向かった。空のグラデーションの移ろいがすごく綺麗で、あの長い道を歩きながら海を目指した。



2024/2/20  17:38


2024/2/20  17:59



 海を見たあとお店で夕食をとり、ホテルへ帰った。夜は私ひとりだけ大浴場を利用した。旅先で入る大浴場でのお風呂が大好き。お風呂から上がって、友人と外に出て散歩したけど寒すぎてコーンポタージュを買ってホテルにまた戻った。寒いの分かってるのにこうするの、愛おしいなって思う。

 友人のひとりがすでに就寝してしまって、残った3人でだらだら話しているとまたひとり離脱し、残り2人になってまたしばらく映画の話をしていたけど、いつの間にか友人もねむりについた。私の寝床は敷布団だったけど、友人のいるベッドが心地よかったのでそのままここでねむった。


 3日目の朝、ゆっくり帰る準備をしてゆっくり朝ご飯を食べてホテルを出た。横浜へ向かって、荷物をコインロッカーに詰めて中華街に向かった。中華街で食べ歩きをしてる途中、白い息があがってみんなで興奮して息はあはあしていた。愉快で可愛い。


 旅の終わりをみんなが分かっている、あの空気って愛おしい。名残惜しいけど、時間が決まっているから仕方なくて。かといって、みんなに話したいこともなくて、ただそばにいるだけでいい。

 東京に住む友人に「また夏に会おうね」と約束して別れた。それから飛行機の時間まで暇を潰し、飛行機に乗って戻るべき場所へ帰った。旅の終わり。



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 初っ端から長文の記録になってしまった。2月は出来事が濃厚すぎたので異例ということで片付けてしまおう…。ここまで個人的な備忘録を読んでいただきまして、ありがとうございました。また、3月もよろしくお願いします(^^)


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