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JR北海道がイカれた切符を発売したので乗り潰しついでにINGRESSと観光してきました~③日目 バス蕎麦バス トラブル そしてバス~

■ご挨拶

 皆さんこんにちは、お久しぶりです。お世話になっております。
INGRESSでは大阪エリアを中心に日本全国どこにでも現れるENLエージェント kizokuchan でございます。

 2021年11月、4日間にわたる北海道縦横無尽飛び回り紀行もようやく折り返しをこえて3日目です。順調かと思われた旅程ですがついにお待ちかねのトラブルが発生します。私の旅の信条として「イレギュラーを楽しめ」というものがあります。要するに長旅における少々のトラブルはいいスパイスであり、それを臨機応変に解決しながら行程を進めていくのも楽しみの一つだ、と思っているのですが、今回起きたことについてはいいスパイスというよりはデスソースに近いような感じでした。後々詳しく出てきますのでお楽しみに読み進めて頂ければと思います。それでは3日目の行動を始めます。

■特急オホーツク2号(北見~旭川~深川)

 例によって朝日と共に自然に目が覚め、時計を見ると午前6時前。北海道の朝は早く、やがて来る冬の前触れか、強烈な放射冷却の感触が部屋の窓からも伝わってきます。手早く身支度を整えてホテルを後にし、北見駅へ向かいます。北見駅からは6時46分発の特急オホーツク2号札幌行きに乗車し、旭川から函館本線に入って途中の深川駅まで乗車します。深川駅の到着予定時刻は10時7分ですから3時間強の乗車です。比較的長い特急乗車時間になりますので前日に指定席を取っておきました。4回指定できるうちの3回目をこれで使用したことになります。

 駅の改札を通ってすぐの1番ホームで待っていると、キハ183系4両編成の特急オホーツクが入線してきました。特急が止まるくらいの立派な駅の場合、駅舎に隣接した片面ホームの1番線があり、乗客の便利さに配慮して上り下りに関わらず特急はこのホームを使用する場合が多いです。そして普通列車は跨線橋を渡って島式ホームの2・3番線を使用します。ホームとしては駅舎隣接と跨線橋を渡った先の2つ、番線としては1~3番線で3つありますので、こういう場合は「2面3線」という表現をします。小さい駅だと1面1線とか、大きな駅だと2面4線とか、色々な配置があります。駅のホームと配線だけを研究している人もいます。一口に鉄道マニアといってもなかなか裾野が広いんですね。

 特急オホーツク号は4両編成で、私が乗車したのは3号車の指定席でした。札幌方面の先頭が1号車となっており、1号車が指定席、2号車がグリーン指定席、3号車の半分が指定席、3号車の残り半分と4号車が自由席となっています。長距離移動客が主体のためなのか、指定席が比較的多めに設定されている印象ですね。3号車の半分が指定席と書きましたが、半室ずつ仕切りや扉があるという訳ではなく、写真のように座席のヘッドレスト部分に「指定席」と書かれているのでそれで見分けることになっているようでした。


 それと気になったのは、特急オホーツクに使用されているキハ183の車体です。ご覧のように所々がサビて塗装が剥げ落ちています。確かに北海道の気候は車両にとって厳しく、劣化が早いのも事実なのですが、おそらく車体の塗装を直す費用を捻出することすら厳しい、というのがJR北海道の現状なのだと思います。ローカル線の普通列車を減便する傍ら新型車両を少しずつ導入しているようなので、おそらくこのベテラン車両もそう遠くないうちに淘汰されて行くのでしょう。

 北見を出た列車はみるみる速度を上げ、次の停車駅は昨日の深夜に往復した留辺蘂となります。北見から旭川方面へ出発すると、かつて運行していた池田へ向かうちほく高原鉄道ふるさと銀河線の廃線跡が左へ分岐し、石北本線は地下トンネルに入って北見の市街地を一気に抜けます。地上は線路で街が分断されることがありませんし、トンネル区間の線路には雪が積もりませんから合理的ですね。留辺蘂を過ぎると山越えの様相となり、遠軽駅に到着します。遠軽駅は旭川方面から来た列車も網走方面から来た列車も同一ホームに同じ向きで停車する形になり、ちょうど漢字の「人」のような形に線路が敷かれています。遠軽に着いた列車はそれぞれスイッチバックで進行方向を変えて発車していきます。これは、かつて遠軽駅から北上してオホーツク沿岸を進み、興部(おこっぺ)を経由して名寄に至る名寄本線があったためで、遠軽駅は都合3方向への列車がありました。名寄本線の廃止後に石北本線の旭川方面と網走方面だけが残ったため、日本でも珍しい平面のスイッチバック構造だけが残ったという訳です。同じような平面スイッチバックは富山地方鉄道の上市駅や、島根にある一畑電車の一畑口駅があります。いずれも遠軽駅と同様に、3方向にのびていた線路の1方向が廃止になったためスイッチバック構造だけが残った駅となっています。

 遠軽を出た特急は丸瀬布(まるせっぷ)に停車し、その後白滝、上川と各駅に停車します。各駅と言っても、丸瀬布~白滝間は約20㎞、白滝~上川にいたってはなんと37㎞もあります。これは在来線定期列車が通る区間としては最長の一駅区間となっています。何故こんな駅間になったかというと、昔はこの途中にいくつかの駅があったのですが、駅周辺の過疎化に伴い次々と廃止、もしくは信号場に格下げとなり、残った両端の駅間がこんな距離になったという訳です。ちなみに白滝駅から旭川方面の列車は日に4本の特急を除くと普通列車は1本のみで、白滝を出た普通列車は次の上川駅まで約1時間走り続けます。途中の景色はほぼ山か原野か渓谷といった感じで、信号場に格下げされた施設を除けばもはや廃止になった駅跡の確認すら困難な状況になっています。廃止になった駅の中に「上白滝」「奥白滝」「旧白滝」「下白滝」があり、現存の白滝駅と並んで「白滝シリーズ」として有名でした。旧白滝駅の晩年の利用者は遠軽の高校に通う学生ただ一人で、1日1本だけ停まる下り列車はその登校時間帯のものだったそうです。高校生の卒業の年の春に旧白滝駅は廃止となりました。鉄道の使命とは何か、少し考えてしまう話でした。

 上白滝の辺りで並行する道路の辺りに「合気道開祖 植芝盛平ゆかりの地」という興味深いポータルがあったので詳細を開いてみると、どう考えてもwikipediaかどこかから丸々転載した長文が載っていました。

 上川を出た特急はやがて旭川の市街地を走るようになり、そのまま北海道第2の都市、旭川に到着します。旭川から先、函館本線の札幌方面は複線電化されており、特急も1時間に1本以上の運行が確保されています。特急オホーツクは石北本線からそのまま函館本線に乗り入れて札幌を目指します。その他に稚内方面の宗谷本線直通の「宗谷」、旭川~札幌のシャトル運輸の性質を持つ「ライラック」「カムイ」があり、さらには旭川起点で石北本線網走方面の「大雪」、旭川~稚内間特急の「サロベツ」と、さすが大都市といった豪華な顔ぶれが行き来する駅となっています。ひとまずの目的地が旭川の次の深川ですので、そのまま乗車して深川で下車します。

■深名線バス(深川~幌加内)

 さて、深川駅に無事到着したので駅前のバス停へ向かいます。何故バス停に向かうのかと申しますと、これからJRバスに乗車するからです。初日の記事を思い出して頂きたいのですが、今回使用しているきっぷはJR北海道全線に加えて、「都市間連絡バスを除く、JR北海道バス」にも乗車が可能となっているのです。それは具体的に何処かと言いますと、まず札幌都市圏のJRが運営する路線バス、そして日高地方の静内~襟裳岬~広尾の路線バス、そして今回乗車する「深名線バス」となります。深名線バスはその名の通り、深川と名寄を結んでいるバス路線であり、国鉄からJR北海道に継承されたのち廃止になった鉄道路線の深名線のルートをほぼ踏襲しています。基本的に途中の幌加内(ほろかない)で運行系統が分断されていますので、まずは幌加内行きのバスに乗車します。深川駅前からはおそらく同じ切符を使用しているであろう同志たちが6,7名ほど乗車しました。

 深川駅10時25分発の快速幌加内行きは、深川駅周辺のバス停をほとんどすっ飛ばしてルート的にもショートカットを行います。その後は基本的にJR深名線跡と並行しつつ、JRの駅より少し細かめに停留所を拾いながら幌加内へ向けて走行していきます。鉄道路線としての深名線が廃止になったのは1995年で廃止から26年以上が経っていますが、一部の市街地域や農地を除いて廃線跡がほとんど手つかずのため、バスに乗車しながら廃線跡を確認することが出来ますし、Googleマップなどの航空写真で見ても道路に寄り添って走る廃線跡をはっきりと確認することが出来ます。また沿線のポータルに加え、基本的に駅跡が残っている場所はポータルになっていますので拾えるところは拾っていきます。ただし、ローカル線の駅というのは幹線道路から少し離れた場所にあるのが定番でして、幹線道路の交差点を直角に曲がり、短い駅前通りの最奥に駅舎と駅前ロータリーがある・・・という構成が割と一般的です。そういう場合は幹線道路上に旧駅名を冠したバス停が代替設置してあることが多く、駅跡のポータルを拾うことは困難になりますので、ポータル画面のスクショだけを記念に持ち帰ることもしばしばあります。

■至高、幌加内そば

 いくつかの駅跡を確認し、交通安全を願うタイヤ巨人の加護を受けながら深川を出て約70分、バスは幌加内町の中心にある幌加内バスターミナルへ到着しました。ここから名寄駅前行きのバスまでは約90分の待ち時間があります。丁度バスターミナルの建物内にお蕎麦屋さんが入っており、昼食にはちょうどいい時分です。幌加内町と言えばそばの栽培面積が日本一で、幌加内そばと言えば蕎麦通が一度は現地で口にしたい蕎麦の代表格でもあります。折角なのでここでその幌加内そばを頂いていくことにしましょう。というかこの行程を考えている時点で、なんとかこの幌加内を組み込めないかということは常に頭の中にありました。JRバスを行程に組み入れることは、こういうお得な企画券でもないとなかなか考え付きにくいからです。

 幌加内には3つの日本一があり、一つは前述の蕎麦の栽培面積です。もう1つは日本最大の人造湖「朱鞠内(しゅまりない)湖」で、最後の一つは「日本で最低の気温-41.2℃を記録」となっています。日本の各市町村にはカントリーサインというものがあって、基本的には隣の市町村からその市町村に入る所の道路わきに「ようこそ〇〇町」みたいな感じでその土地の特産物や象徴的な建物や偉人などがあしらわれています。例えば札幌市のカントリーサインは時計台ですし、大阪府吹田市のカントリーサインには岡本太郎の名作太陽の塔が描かれています。幌加内町のカントリーサインには「-41.2℃」の文字と、それを観測した記念碑の絵が組み合わせてあり、日本で一番ファッキンコールドな街であることをよそから来た人間に強烈にアピールしてきます。



 幌加内バスターミナルの一階にある「幌加内そば 雪月花」さんに入店しました。客入りとしては先ほどのバスを降りた人間と、少しばかりの地元の方と思しきグループが1,2組といった感じでした。店内に所狭しと張られた色紙の様子からすると、全国各地からライダーたちがここを通る際に立ち寄る店のようでした。メニューから天ぷらそばの大盛を注文、ツユは濃い口を指定。丁寧に上げられた天ぷら盛と付け合わせのキャベツの漬物、そして本場の厳選された蕎麦の実で作られた幌加内そば。折角ですから、始めは何もつけず蕎麦を2,3本箸にとってそのまま啜ります。北の大地で育った蕎麦の強い風味を確かに感じることが出来ました。来てよかった。その後は塩でいったり、つゆで食べたり、また何もつけずに食べたり・・・濃いめの蕎麦湯で仕上げて完食。また一つ美味しいものを体験できました。

 美味しいそばを食べきって、次のバスまでの時間はおよそ50分。お会計を済ませた後、店員さんに旧幌加内駅の様子を訊いてみます。というのも、深名線の旧幌加内駅は街の中心からは少し離れた場所にあり、廃線跡こそなかなか綺麗に残っているものの、駅跡は数年前に不審火で焼失してしまい、跡地にはわずかばかりのレールと駅名版が残るのみとなっている、という前情報を得ていたからです。聞くと駅跡はそのまま残っている筈だが、駅名版はこれから雪深くなり、雪の重みで曲がってしまうのを避けるために冬になると一旦撤去して春先にまた再設置するのだそう。有難いことに荷物のキャリーケースを店内に置いて行って良いと言ってくださったので、お言葉に甘えて店に荷物を預け、身一つで街へ歩きに出ることにしました。

 幌加内の中心部は南北約1.5㎞程度、街を縦断する国道275号線の周りに民家が点在しています、その真ん中に役場機能や学校、商店があり、バスターミナルもこのエリアに存在しています。幌加内駅は、その中心部から約3~400m離れたところにありました。おそらく鉄道の全盛期はそちらが町の玄関口であり中心だったのでしょうが、鉄道の廃止と共に主役が車と道路に変わり、必然的に中心部の概念も変わっていったものと思われます。街に点在するポータルをハックしつつ、幌加内駅跡へ向かって歩いていきます。道路にはかすかに数日前雪の降った形跡が残っているくらいで、スニーカーで歩く分には全く問題ありませんでした。私が訪問した約2週間後の12月中旬にニュースを見ると、幌加内は約2mにもなろうかという積雪で一面の真っ白な世界になっていました。いい時期に来たものです。

 そして中心部から歩くこと10分弱、JR深名線の幌加内駅跡に到着しました。蕎麦屋の店員さんの言う通り、事前情報では在ることになっていた駅名看板は撤去されており、短い線路と駅跡を示すオブジェだけが寂しく残っていました。またこの短い線路ですが、現役の線路が通っていた時とは全く違う向きに設置されており、最低限の駅跡を示すためだけの展示のように思えました。駅跡はポータルになっていましたので記念にキーを取得してその場を後にしました。幌加内バスセンターの建物の2階には「深名線資料館」という、廃止になった深名線の記憶を今に伝える資料室があるのですが、土日祝日は休館ということで今回は見ることが出来ませんでした。

■深名線バス(幌加内~名寄)、そして・・・

 発車10分前くらいにバス乗り場へ行ってみたところ、既に幌加内発名寄駅前行きのバスは乗客を待っている状態でした。深川駅前では到着から発車までの時間が少なかったため、此処で落ち着いてバスの写真を何枚か撮ります。写真を撮っているとバスの運転士さんに「今日は珍しく乗客が多いねえ、普段はこの時間帯は1人か2人なんだけど何かあるのかい」といった主旨で話しかけられましたので、JR北海道が発売しているお得な企画乗車券の説明をし、おそらく他の乗客もその乗り通し目的で来ていることを伝えると、寂しそうに「そっかぁ、そんなことでもなけりゃ来ねえもんなこんな街に」と呟いておられました。その後他愛のない世間話を少しして、この後どこに行くのか尋ねられたので「名寄から特急で旭川の方に降りるつもりです」と答えました。すると、途中から横に立って話を聞いていた鉄道マニアっぽい青年が「僕は稚内方面に向かう予定だったが、音威子府の先あたりで倒木があったらしく特急が運休になっているので、仕方がないから旭川へ行く」と話していました。そうこうしているうちに発車の時間になり、6~7名を載せたバスは幌加内のターミナルを後にして名寄へ向けて走り出しました。

 幌加内を出たバスはしばらく国道275号線を北上します、この間、旧深名線も道路につかず離れず並走します。途中の見どころとしては幌加内の一つ名寄寄りにある上幌加内駅跡です。ここは現役時から少し寂しい駅で、ホームは板張りで1面1線の棒線駅、駅舎はなくホーム中央に小さな待合室があるだけでした。廃止後に待合室や周辺の線路などは撤去され、まるで校長先生の朝礼台のようなサイズで板張りのホームの基礎の一部と、「上幌加内」と書かれた停車場接近票、それに駅名板の枠とわずかな線路だけが残されています。必要かつ十分な最小限の「廃駅跡」を構成する要素が辛うじて残っており、それらも長年の風雨にさらされて風化が進んでおり、なんというか「朽ちてゆく美しさ」を体現しているかのような場所です。残念ながら道路からは少し離れているため、今回は車窓から見るだけに留まりました。途中にもいくつか駅舎が残っており、2人組の青年がその駅跡目的なのか、バスを降りて行きました。

 もう少し進むと「第三雨竜川橋梁」という立派な鉄骨ガーダー橋が残っています。これは土木遺産に指定されています。比較的道路に近く、バスの中からでもはっきりと確認できます。その後しばらく走って「朱鞠内(しゅまりない)」というバス停で少し休憩となります。ここも旧深名線の朱鞠内駅跡なのですが、やはり駅舎はなくバスの待合所に建て替えられており、わずかな線路と駅名板の枠があるのみでした。普段は駅名板も掲示されているはずなのですが、やはり大雪に備えて取り外したようでした。

 朱鞠内を出たバスは国道上を北へ走り、日本最大の人造湖である朱鞠内湖に差し掛かります。線路の方の深名線はこの湖の西から北側を回り込むようにして名寄方面へ走っていましたが、バスは国道275号線に沿って湖の南側を東へ向かって走ります。深名線の方には湖畔、蕗ノ台、白樺という駅がありましたが、蕗ノ台と白樺は人口が皆無の地域になったため全線廃止の5年前に先行して廃止されました。当時から冬季は休業する駅で、今でも周辺の道路が冬季通行止めになるため、現存していればかなりの秘境駅度を誇ったことでしょう。

 名寄まであと1時間を切った辺りで、ふとバスに乗車する前に聞いた情報が気になり始めます。すなわち「宗谷本線音威子府のあたりで倒木があったため、特急が運休している」というものです。名寄に着いた後は、稚内からやってくる特急サロベツ4号に乗って旭川まで行く予定でした。音威子府から先が運休だとしても、そこから南の区間は問題なく運行できるはずです、ただし、車両運用の関係から往路便が運休の場合復路便も道連れで運休になることはよくあります。稚内行きが通過した後倒木が発生したとすると、特急が不通区間の先に閉じ込められている可能性もあります。もしも稚内発の折り返しサロベツ4号が運休となると別の方法を考えなければいけません。慌ててJR北海道の運行状況を見ると・・・

ぜ、全区間運休・・・!

 旭川~名寄~音威子府~稚内という区間を走る特急ですから、倒木の影響がある音威子府~稚内のみ運休して旭川~名寄間で折り返し運行してくれる・・・もしくは特急のダイヤかそれに近い設定で走る臨時快速を運行などの可能性は・・・などと甘い考えがいけなかった。特急で旭川に下れないとなると別の方法を考える必要があります。たまに沿道に出てくるポータルはきっちりと取得しながら、バスの中で他の移動手段を検討し始めました。

 前提として、バスは15時9分に名寄駅前に着き、そこからもし特急の運休が無ければ15時50分発の特急サロベツ4号に乗り、16時49分に旭川に到着する予定でした。そして旭川で小休止をして、17時18分発の富良野線美瑛行きに乗ることになります。最悪、一本後の17時46分発富良野行きには乗りたい。つまり、別の移動手段でこの旭川17時18分発の美瑛行きに間に合わせることが出来れば傷は最小限で済むということです。

代替案①:後続の普通列車に乗る
名寄で15時50分の特急に乗らない場合、後続の旭川方面列車は16時30分発普通列車旭川行きとなります。この列車が終着の旭川に着くのは・・・

17時53分・・・美瑛行きはともかく、後発の富良野行きにも惜しくも間に合いません。なにより名寄で1時間半近く待つというのが非効率的です。

代替案②:名寄から旭川へ向かう高速バスや路線バスはないか
調べたところ、名寄から旭川へ向かう路線バスは2系統あると分かりました。気になるその発車時刻は・・・

路線バス 名寄駅前15時20分→旭川駅17時55分、うーん惜しい。これも富良野行きに間に合いません。出費はともかく2時間半も路線バスに乗っていればINGRESS的には相当な稼ぎが出た筈なのに・・・残念です。

代替案③:レンタカー
トヨタレンタカーは名寄駅前に営業所があり、当日空きの車があれば借りることが可能と分かりました。バスが15時10分に名寄駅前に着くとして営業所まで徒歩10分。名寄駅から旭川駅は道路ルート検索すると約75㎞、順調に走れば100分程度で行けることが分かりました。15時20分に出発して17時20分に旭川駅前店に到着すれば、富良野行きには余裕で間に合います。ひとまずトヨタレンタカーのアプリをiPadにダウンロードしました。公式サイトで料金シミュレーションをした結果、アプリ経由の予約が最安であると分かったからです。名寄から旭川駅前乗り捨てで3時間以内だと、レンタル料金は約4,000円+ガソリン満タン返しといった感じでした。背に腹は代えられないので即決で予約を完了しました。あとはバスが定刻通り名寄駅前に着いてくれるのを祈るばかりです。

■レンタカー(名寄駅前~旭川駅前)

 幌加内発名寄駅前行きのバスは、名寄の市街地に入っても順調に定時運行を続け、ほぼ定刻通りに名寄駅前に到着しました。念のため名寄駅の改札まで行ってみましたが、デカデカと「サロベツ4号は運休です」の文字が。ただその横で「14時59分発稚内行き 改札中」の表示。どういうことか気になって窓口で訊いてみると、「現在倒木の撤去中で、とりあえず発車はして音威子府までくらいは運行できると思うが、その先はその時次第・・・」といった回答でした。運行できる区間の特急は全区間運休なのに不通区間の方に向かう普通列車は逝っとけで運行・・・?もし自分が北上予定で稚内が目的地なら迷わず乗っていたくらい面白い状況だなと思いました。

 名寄駅から線路沿いに歩くこと10分程度でトヨタレンタカーの営業所に到着しました。予約していた旨を伝え、借受の手続きを進めます。途中受付の方に「旭川駅までだと100分くらいですかねえ・・・?」と尋ねてみると、「普通ならそのくらいで到着するが、最近は旭川ICを降りてから中心部までの混雑がひどいため何とも言えない」とのこと。ひとまず手続きを完了して車両の外周チェックを済ませ、いざスタートです。焦って事故を起こしては本末転倒なので、安全に慎重に、かつ最短ルートで可能な限り急いで。

 名寄から旭川へ向かうには、まず国道40号線に出て20㎞ほど一般道を南下し、士別という街まで行きます。士別剣淵ICから道央自動車道に乗って旭川鷹栖ICまで約45㎞、インターを降りたらあとは旭川駅前まで街中へ突っ込んでいくだけです。まず国道20号線ですが、交通量が思ったよりも少なくスムーズに流れており、すんなりと士別剣淵ICまで来ることが出来ました。士別剣淵~旭川鷹栖は道央自動車道の末端区間で、片側一車線かつセンターポールのみの構造のため、最高速度が70㎞に制限されています。これまたほとんど車の往来が無かったため、ほぼほぼ時速70㎞に張り付いた状態で走行することが出来ました。旭川鷹栖ICで降りてあとは旭川の駅前店へ向かうのですが、時間に少し余裕が見えたため、返却前に近場のGSで満タンにしてから返却することが出来ました。やむを得ない場合は走行距離に応じたガソリン料金を返却時に清算することも可能ですが、割高になるため極力満タン返しをした方が良いわけです。

 こうして順調にレンタカー作戦が成功し、17時過ぎに旭川駅に着くことが出来ました。エクストラの出費はレンタカー代4,400円+高速料金1,400円+ガソリン代約800円の計7,000円弱といったところでした。学生の時分なら特急が運休になった時点で後続の普通列車を選択していたでしょうが、要所要所でのショートカットや別の交通手段を気軽に選択できるのが大人の特権です。学生には時間があり大人には金がある、足りない時間や節約したい時間を金で買うというのが大人の旅のポイントなんですよね。学生で時間もお金もあるという方、それは好きにしてください。大人で時間もお金もないという方、それはもうあきらめてください。

■富良野線(旭川~美瑛~富良野)

 ともあれ、無事に旭川到着をリカバーすることができましたので、予定通り旭川17時18分発の富良野線美瑛行きに乗ります。本当はその後の17時46分発富良野行きでも良く、どのみち美瑛で降りた後は後続の富良野行きに乗って富良野まで行くことになります。ではなぜ途中駅止まりの先発列車に乗るかというと、それはもうここまで読んできた方なら言わずともご理解いただけるものと信じております。

 旭川駅の一番端の1番ホームに停まっていた美瑛行きの列車は、かわいい1両のディーゼルカーでした。中央部はお馴染み固定された4人掛けボックス席、車両端部にわずかなロングシートという構成です。早めに乗って席を確保しましたが、発車直前になってそこそこの数の高校生が乗車してきて車内はほぼ満員となり、そのまま列車は定刻通り発車しました。

 旭川を出るとすぐ富良野線は函館本線と別れ、忠別川を立派なコンクリート高架橋で超えてほぼ南へ進路を取ります。旭川を出ると神楽岡、緑が丘、西御料と停車していきますが、この辺りまでが市街地となっているようで、各駅で次々と学生が降りて行きました。なおこの辺りは国道も並走していて、旭川方面へのバスも少ないながら運行されています。西御料を出ると、沿線の表情がガラっと変わり、駅間はほぼ水田か畑作地帯となります。その後は駅を中心として小規模な街が形成されており、駅間は田園地帯、という景色をいくつか繰り返し、旭川から約40分で美瑛に到着します。

 美瑛は丘の街で、富良野と並び観光資源の豊富な地域となっています。今回は鉄道旅なので、次列車までの時間を使って駅周辺のポータル回収のみに留めましたが、いずれ車で来訪してしっかりと観光したい街の一つでもあります。18時前で辺りはすっかり暗くなっており、内陸で気温が低いせいか一部の道路面が凍結していて歩き回るのに苦労しました。しかしさすがは観光地というところか、駅前とその周辺を少し歩くだけでかなりの数のユニークポータルに触れることが出来ました。

 次は美瑛を18時21分に出る富良野行きに乗車して富良野まで向かいます。やはり富良野線は旭川から近郊の駅までの運輸に特化しているのか、美瑛から乗った列車でも4人掛けボックスシートがいくつか空いており、余裕で座ることが可能でした。いくつかの駅に停車して18時57分に富良野に到着します。同時に脳内でさだまさしが例の曲をハミングし始めます。

■根室本線(富良野~東鹿越~新得)

 富良野駅は旭川から走ってきた富良野線の終点であり、滝川からの根室本線の途中駅となっています。つまりここで根室本線の列車に乗り換えて滝川方面か、その逆の新得・帯広・釧路方面に向かうことが出来るわけです。次に乗る予定の列車は滝川からやってきて富良野19時5分発の快速狩勝 東鹿越(ひがししかごえ)行きです。この「快速狩勝」という列車は、本来滝川を始発として富良野を経由し、そのまま狩勝峠をトンネルで越えて新得に至り、帯広の先である池田駅までを結ぶ快速列車でした。ではなぜ東鹿越行きになっているかというと、2016年の台風被害により東鹿越ー幾寅―落合―新得までの区間が不通になっているため、この区間をバス代行しているのです。現在のダイヤですと、富良野から東鹿越行きの列車は日に4本あり、その4本に接続するように東鹿越発新得行きの根室本線代行バスが運行されています。JRの路線の代行バスですので、JRの乗車券で乗車することが出来ますし、当然ながら今回のJR北海道全線乗り放題の切符でも乗車することが出来ます。

 富良野までいくつかの駅を通過してきた快速狩勝は、東鹿越までは各駅に停まります。これは台風被災前も同じで、新得まで各駅に停車していました。富良野から5駅先、約45分で東鹿越に到着します。ここから先新得まで、厳密には石勝線との分岐点である上落合信号場までは不通区間となっています。東鹿越駅前で待機している立派な代行バスに乗り込みました。乗客は私を含め約10人くらいでした。

 根室本線代行バスは東鹿越を出ると幾寅駅前、落合駅前に停車して終点の新得駅前に向かいます。鉄道不通区間の代行バスという性質からなのか、道路上のバス停で済ますということはなくちゃんと駅前まで入って停車します。東鹿越を19時54分に出発した代行バスは、決して広いとは言えない川沿いの道を慎重に進みます。というのも、この周辺は道路にエゾシカが出てくることも珍しくなく、夜の時間帯ともなるとそのリスクは大幅に増えるからです。実際、走行中に2,3度ほど道路に出てきてはゆっくりと山へ逃げていくシカを見かけました。これは鉄道も同じで、根室本線では年に100件以上もエゾシカとの衝突事故が起きています。列車側も鹿笛を装備して事前に追い払うなど対策していますが、どうにも根本的な解決には至っていないようです。なぜそんなに線路に出たがるのかというと、どうやらエゾシカは線路に含まれる鉄分を舐めて摂取するために出てきているという研究結果もあるようなのです。また、シカは突然車のヘッドライトのような強烈な光に当てられると硬直してしまい動けなくなり、逃げることを忘れてそのまま跳ねられてしまうことも多いのだとか。英語のイディオムに"deer in the headlights"というものがあり、これは「突然の出来事に茫然としている人」を表す表現として使われています。ちょうどサロベツの運休を知ったさっきの私のような状態を指す言葉ですね。

 東鹿越を出た次は幾寅(いくとら)駅前に停車します。幾寅駅は、高倉健主演の名作映画「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台となった架空の駅、幌舞(ほろまい)駅として撮影が行われた場所です。駅舎内には撮影時の写真や各出演者のサイン、高倉健さんが実際に着用した駅長制服などが展示されており、日中であれば自由に見学することができます。駅周辺には実際に撮影に使われたディーゼルカーのカットモデルや、駅前食堂や理髪店などのセットもそのまま残されています。まだ見たことが無いという方は一度映画を見ることを強くお奨めします。完全なファンタジーなのですが見終わると何故か涙が出ています。劇中の幌舞駅はローカル線の終着駅の設定でしたが実際の幾寅駅は途中駅です。どうやって撮影したかというと、幾寅駅の列車の本数が少ないことを利用して、次の列車まで時間が空く際に急いで線路を終着駅のように仕立て、撮影が終わると設備を撤去してまた営業列車を通す・・・ということを繰り返したそうです。駅前にポータルも複数あるので昼間にゆっくり訪れることを推奨したい駅です。(写真は以前訪問時のものです)

 幾寅駅を出ると次は落合駅です。現在の根室方面の線路はトンネルに入り狩勝峠の下をくぐっていますが、根室本線の旧線はここから厳しい狩勝峠越えのルートで風光明媚な景色を抜けて新得に至っていました。代行バスも鉄道トンネルを通るわけには行きませんから、現行の道路で狩勝峠を超えて新得へ向かいます。つまり今回の鉄道代行バスは、なかば旧根室本線狩勝峠越えの復活ともいえるルートを進むことになります。完全に夜の走行なので景色もへったくれもありませんが、日中の3本の運行では日本三大車窓と謳われた景色に近いものを目の当たりにすることが出来るでしょう。

 落合駅を出て狩勝峠越えの道を走り続けること40分、代行バスは定刻通り20時54分に新得駅前に到着しました。以前昼間にレンタカーで狩勝峠を越え、根室本線の不通区間をトレースしたことがあるのですが、不通から5年以上たっていることもあり草は生え放題、線路は赤さびた状態で手のつけようが無いような状態でした。JR北海道も乗客の少ないこの区間の復旧には前向きでなく、復旧するにしても多額の工費がかかることから自治体の協力が無くては復旧は不可能としています。おそらくですが、富良野から新得はバス路線もしくはデマンドタクシーのような形態に移行されるのではないかと見ています。そうすると鉄道員ゆかりの幾寅駅も鉄道駅としては廃止されることになってしまいます。なかなか寂しいですね。

■特急おおぞら12号(新得→札幌)

 途中色々ありましたが無事新得に辿り着けましたので、あとはもうウィニングランのようなものです。この後新得21時2分発の特急おおぞら12号札幌行きに乗車して終点の札幌へ向かいます。本日の宿泊地は札幌です。札幌までは約2時間の乗車となり、翌日は特急に長時間乗る予定はないことから、ここで4回発行できる指定席の4回目を使用します。根室本線特急のとかち及びおおぞらは札幌と帯広・釧路を結んでおり、この区間には高速バスも運行されていますが時間面で特急の方に軍配が上がり、夜間の便でもかなり席が埋まっていることがあります。以前は最大9両編成ほどで運行されていた列車が、新型コロナの影響で減便に加えほとんど5両編成で運行されていることも座席の込み具合に影響しています。

 乗車予定のおおぞら12号は6両編成で札幌方先頭が6号車、6・5号車が自由席で4・3・1号車が指定席、2号車がグリーン席でした。3号車の最後尾が空いていたのでそこを指定して発券し、特急に乗車するや否や座席をめいっぱいまで倒してしばし休息をとることにしました。新得を出てほどなくすると意識が飛び、次に目が覚めたのは終着駅手前の新札幌を過ぎたあたりでした。本来はトマムや南千歳に停車するので駅ポータルくらいはハック可能なのですが、その辺のルートは今まで幾度となく通っており、睡魔を押してまで無理に取るものでもないだろうと考えているうちに眠ってしまったのでした。

■まだ歩けますよね

 23時頃、とりあえず本日の最終目的地の札幌に到着しました。ひとまず荷物を置いて一息つくべくホテルへ向けて歩きます。札幌では紅葉シーズンも終わり、まだ雪真っ盛りではないこの時期はオフシーズン扱いなのか、ビジネスホテルの宿泊料は比較的安めなところが多いです。しかし雪まつりのシーズンや避暑に丁度いい時期、それに嵐のコンサートなどと日程が被ると星野リゾートのような値段を吹っかけてくることがあります。今回は札幌駅から徒歩8分程度のところにあるビジネスホテルで、一泊素泊まりで5,000円程度でした。数時間寝て風呂に入るだけなので贅沢なくらいです。こういう場合は「大浴場の設備があるか否か」を判断基準にすることも多いのですが、時勢が時勢だけにそこにはこだわらず、シャワーのみの使用に留めることにしました。

 ホテルにチェックインし、荷物を置いて一息つきます。同時にモバイルバッテリーに充電を開始します。時刻は23時半で、これからやるべきことは2つ。1つは遅いけども晩ごはんを食べることと、もう1つは余っている体力でユニークポータルの回収を行うことです。とは言ったものの札幌という街にはもう数十回訪れているものでして、取りこぼしを拾っていくとなるとかなり骨の折れる作業となります。そこで気持ちを切り替えて、手ごろな連作ミッションをやってみることにしました。「カラフルなアートを探しに」という18連のミッションで、大通の中心部からサッポロファクトリーを回って札幌駅に向かうコースになっており全長は約6㎞と、まあ2時間見ておけば行けそうなくらいの丁度良いものを見つけましたのでこれをやることにしました。期間限定のミッションだったらしく現在は非公開になっているようです。

 さて、いざホテルを出発と行きたいところですがモバイルバッテリーを持っていくわけには行きません。何故かというと本日早朝からの活動を補助するべくフル稼働でiPad本体に充電をし続けてくれたおかげで、ほぼ残量が空になっているからです。私が使用しているのはAnkerの携行型としてはかなり上位にあたる容量26,800mAhのバッテリーで、USB-Cの高速充放電に対応しているタイプです。大体手持ちのiPadで丸一日活動すると容量を全部消費して充電してくれるくらいの感覚です。従ってモバイルバッテリーはこのまま明日の活動のために充電をしておきたい。さりとてiPad単機での行動は心許ない・・・という状況なのです。

 そんな折利用したいのが、最近急速にサービス展開が拡大しつつある、「モバイルバッテリーのレンタルサービス」です。代表的なものとしては「チャージスポット」というサービスがあります。コンビニを始めとして街のいたるところにレンタル用のモバイルバッテリーが設置してあり、手続きをしてモバイルバッテリーを借ります。存分に充電した後は任意のスポットで返却をする。返却されたバッテリーはスポットで充電されて、また貸し出せる状態になる・・・というものです。

 チャージスポットで貸し出しているモバイルバッテリーは容量5,000mAhで、一般的なスマホなら相当量の活動時間をカバーしてくれますし、バッテリー本体からmicroUSB、Lightning、USB-Cのケーブルがそれぞれ出ていますので別途ケーブルを用意する必要もありません。さらにはちょうどこの期間、「セブンイレブンで借りたバッテリーに限り、24時間で1円」というキャンペーンをやっていたので、これは利用しない手はないと思い使ってみることにしました。幸い常時モバイルバッテリーを繋いでいましたのでiPad本体の充電状況はほぼ100%です。これにチャージスポットで借りたモバイルバッテリーを繋ぎながら使用することで、極力電池満タンの状態で夜の活動を終えて明日に備えたい、という狙いがあります。

 ホテルから歩いて大通公園に向かいます。途中でセブンイレブンに入店しチャージスポットのモバイルバッテリーを借りました。既に時刻は0時近く、街にはほとんど人通りがありません。ひとまずミッションの開始位置付近で18連ミッションの1個目をスタートし、対象ポータルをハックしていきます。大通公園も幾度となく訪れているのですが、未訪問ポータルがちらほら見えています。おそらく後から発生したポータルだと思われますが、都会の申請し尽くされたように思える箇所でもまだこんなに生えてくるものかと感心させられます。

■連作ミッションについてのあれこれ

 連作ミッションをやっていると、ミッション作成者の意図やセンスの片鱗に触れることがしばしばあります。それは対象ポータルの選び方であったり、ルートの選定であったり、ミッションメダルのデザインであったり、たまに設定されるパスフレーズの文言であったり、様々です。

 まず一つ目に大別されるのが「ミッションの対象ポータルハックがAny order(順不同)かSequence(順番指定)か」というものです。私の個人的な意見ですが、これについてはSequenceの方が親切な造りだと感じています。順不同のハックにした場合、ルート中6個ハックすべきところをうっかり5個だけハックしてしまい泣く泣く見落とした箇所に戻るような事例が後を絶たないからです。特例として、連作ミッションの途中に小規模な公園や施設に差し掛かり、そこに5,6個のポータルが集中している場合にのみAny orderの形式を指定している場合があります。この箇所ではハックを仕損じる可能性が低く、また移動距離も極小であり、Sequenceだと逆に順番が後のポータルを手癖で先にハックしてしまう事故のほうが起きやすいためです。この辺の気遣いをミッション実行中に感じると製作者への感心の念が深まります。

 連作ミッションですと、一つ前のミッションの終点のポータルを次のミッションの一つ目の対象ポータルに設定し、そこの条件をパスフレーズにしている例が多々見受けられます。都市部では沢山のミッションが存在するため、間違ってよく似たミッションや別のミッションを始めてしまう可能性があります。そうした間違いを防ぐためにこのような設定をします。距離順でミッション一覧をソートしたとき、大抵は一番近いものとして認識されるからです。パスフレーズには「1を入力してください」や「1+1=?」とか、例えばミッションの12番目であれば「12を入力してください」など、各製作者のセンスがここでも出ることになります。ミッション終点のパスフレーズを簡単なクイズにして、その次のミッションは普通にハックで始まる、という形式も私は大好きです。

 ミッションをクリアするだけなら対象のポータルを拾っていけば済むのですが、ついつい対象ポータル以外にも触れてしまいたくなるのが人の性というものです。それがミッションの経路上にあるのなら特に問題はありませんが、例えばまっすぐ行くべきところを少し細かい路地に入れば取れる、とか、次の対象ポータルまで距離があり、ひとつ隣の道を行けばもう少し多くポータルに触れながら進める、とか・・・どこまで寄り道するかは人それぞれですが、これはかなりあるあるなのではないかと思います。また、ミッション終盤で対象では無いポータルを何気なくハックした後に対象ポータルをハックしてミッションを終え、次のミッションを始めたらさっき触れた対象で無いポータルからのスタートになっており、おとなしく待つかヒートシンクを入れるかの二択を迫られる・・・そして慣れてくると「このポータルは現在のミッションの対象にはなっていないが、次のミッションで対象になる可能性があるので今は触れずにおこう」という判断が出来るようになる、とか。致命的な失敗になることは少ないのですが、数をこなしていくことで慣れてくる部分というのは少なからずあるんですね。

■時限ポータルについてのあれこれ

 大通りから創成川方面へ歩き、隙間のポータルも拾いながら順調にミッションを進めていきます。誰もいないサッポロファクトリー周辺をうろつき、取って返して札幌駅方面へ。このまま無事に全て終わるかと思った18連ミッションの15番目辺りで再び問題が起きます。それは、札幌駅の南北自由通路内のポータルがハック対象になっており、南北自由通路は終電後に閉鎖され翌朝の始発前にならないと解放されないので、ハックできる有効距離まで近づけなくなっていたのです。いわゆる「時限ポータル」と呼ばれるものの一種というわけです。

 時限ポータルというのは、スタンダードなところで言うと遊園地の内部であったり、大きめの博物館の中央部付近にあるポータルであったり、とにかく一日のうち特定の時間帯はどう足掻いても有効範囲内に近付くことが物理的に不可能なポータルのことを指します。もう少し拡大解釈すると、たとえば冬季に閉鎖される山の山頂のポータルであるとか、ある期間だけ通行止めになる道路の途中にあるポータルも時限ポータルの一種とみなすことが出来ます。

 INGRESSの黎明期の話になりますが、東京にある迎賓館赤坂離宮の内部にポータルがあり、外部からはハックはおろかL8バースターも届かない位置でした。さらに2015年までは年間3日ほどの公開であったことから、公開日の最後の最後でポータルのオーナーになれば来年の同時期までは何者にも触れられることのない状態にすることができ、ポータルキーを介してリチャージさえ怠らなければ悠々とガーディアンの実績を伸ばすことが可能でした。当時警備員さんに怪訝な目で見られながら、とにかく最後の見物客になろうとする者たちの攻防があったことは記憶に残っています。その後、近くを走る東京メトロ丸ノ内線の位置ブレを利用してポータルにアクセスする方法が編み出されたり、誕生日プレゼントとしてエージェント仲間から東京上空のヘリ遊覧飛行に招待され、その際に赤坂離宮上空でホバリングしてポータルを奪取する人が現れたりして、日本にある究極の時限ポータルを巡る戦いは激しさを増していきました。そして2016年から赤坂離宮が通年公開になったことでこの時限ポータルの特殊度は一般的なものに落ち着きました。

 地方に遠征に行ったときの楽しみの一つとして、その地域のCOMMを覗いてみるというものがあります。発言や交流が盛んな地域、特定の人間がひたすら怪文書を垂れ流している地域、よそから来たと思しきエージェントにとりあえず声掛けする地域、色々なその土地の一面が垣間見えるわけです。とりわけよく目にするのが上記時限ポータルに関する揉め事で、簡単に言うと、「このポータルは夜間アクセスすることが不可能なはずなのに、どうやって触れたのか」と、相手方を問い詰める内容が殆どです。要するに立ち入り禁止のエリアに勝手に入ったのではないか、もしくは位置偽装などのイリーガルな手段を使ってポータルにアクセスしたのではないかと疑いをかけているわけなんですね。その詰め方も様々で、ストレートに「そこは駄目ですよ」的なアタックをしている人もいれば、「夜中の2時にここのポータルをキャプチャできるなんてすごいですね!よければ私にもその方法を教えてください」みたいな、本人的には皮肉がキマったと思っているようなしょうもないアプローチなど多岐にわたります。位置偽装や違反行為などは基本的にCOMMで問い詰めても何が好転するわけでもないので、黙ってNIAに通報するのが最善手です。NIAが適切に対応してくれるかという所には疑問が残りますが・・・

■ギリギリ届かないポータルの倒し方

 話が逸れてしまいましたが、ともかくも札幌駅構内の自由通路にあるポータルがどうやっても届かず、四苦八苦することになりました。こういう場合本当にギリギリ届かないくらいの状況であれば採りうる手段がいくつかあります。まずは近くにWifiがあれば拾ってみることです。Wifiというのは安定していれば良いのですが、電波が弱かったり不安定だとなぜか位置情報の演算にも影響を及ぼし、自分の位置がブレることがあります。これを利用して奇跡に賭けるという望み薄な手段があります。もう一つは地下道や高い建物の根元を利用する方法です。地下空間では言わずもがなGPSの衛星信号を取得しづらくなります。また高い建物の陰では衛星信号が真っすぐ端末に届かず、反射して届いたものがノイズとなって位置演算を狂わせることがあります。これによる位置ブレを狙う方法です。残念ながら今回はどちらも有効に作用しませんでした。

 あと、これは最早まじないというかオカルトの域に片足を突っ込んでいると思いますが、通称「GPSの奴は鍛えてねえから戦法」というものがあります。まず、ギリギリ届かないポータルから一旦離れ、距離をとります。当然スキャナ上の位置もポータルから離れていきます。そうしたら、ポータルに向かって勢いよくダッシュします。スキャナ上の自己位置もポータルに近付いていきます。そして、アクセスできるギリギリの位置まで来たら急停止します。自分は急停止しますが、GPSの奴は鍛えてねえから慣性でそのままポータル側に自己位置が滑り、めでたくポータルをハックできる・・・というわけです。にわかには信じられませんが、案外これがバカにできない確率で成功することがあり、お城の堀の外から城内のポータルをなんとか触りたい…くらいの距離だとなんとかなる場合があります。もしかすると端末に内蔵されているモーションセンサーの補正分で起きている現象かもしれません。だとするとGPSはちゃんとしているのにモーションセンサーがだらしないということなので、GPSの名誉のために戦法名を変える必要がありそうです。

 と、いくつかの方法を試して粘ってみましたが一向に届く気配が無い。仕方がないので一旦ミッションは諦めて引き上げることにしました。幸い18連ミッションの15番目に差し掛かっており、駅構内のポータルをクリアすればあとの18番目までのミッションは札幌駅周辺を少し回るだけで済みそうなことが分かりました。明日の出発は札幌駅からですので、少し早めに起きてミッションを完了した後に移動を開始すれば良いわけです。

 気持ちを切り替えて、そういえば晩飯を摂取していないことに気付き、深夜までやっている店で軽く食べた後ホテルに引き上げることに決めました。普段ならすすきのの南にある「雪風」という名前の味噌ラーメン屋に行くのを楽しみにしていたのですが、調べるとどうやらこの時間帯までは営業していないようでした。ひとまず近辺の深夜営業している店舗をリサーチしながら、札幌駅を後にしてすすきの方面へ向かいます。

 今回入店したのはすすきのにある「麺屋 すずらん」です。三日連続ラーメンになりました。優しい味の味噌ラーメンに多めのすりおろし生姜が入っていて、これがまた冷えた体に温かく沁みます。味玉が3つ乗っているのは完全にこちらのミスで、デフォルトのラーメンでも半玉乗る設定なのを見落としてトッピングで味玉を購入したため、もう1玉付いてきたというオチです。

 空腹の胃袋を満たし、無事ホテルに帰ってきたのが夜中の3時過ぎ。モバイルバッテリーは順調に充電が進んでおり、iPadの方もチャージスポットで借りたバッテリーのおかげでほぼ100%を維持、このまま充電状態にして翌朝札幌駅に行く途中のセブンイレブンで返却することにしました。翌日の札幌発は7時5分小樽行きに乗車予定ですので、念のため5時半ごろに起きてやり残したミッションを完了した後に予定した行程を進めることにしました。


3日目の移動経路は上図の通りとなりました。北見から遠軽を経由して旭川、深川までJR、深川からバスで幌加内経由名寄。名寄からレンタカーで旭川まで下り、富良野線と根室本線で東鹿越。東鹿越から根室本線代行バスで狩勝峠を越えて新得、新得から特急おおぞらで札幌へ戻り、札幌市内をうろうろしているうちに日付変更・・・といった感じですね。

 あわせて、3日目のINGRESS的な実績増加分です。JR路線上および狩勝峠越えなどの周辺は既に何回か通った地域であるため、深名線バスや富良野線沿線のポータルが純粋なユニーク増加に寄与しています。

■で、続きます

 いよいよ次回が最終日で完結です。移動としては割とシンプルですが、ようやくちゃんとした観光のようなことをやります。また少しお時間を頂きますが、楽しみにお待ちください。
〜4日目(最終日)に続く〜

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