見出し画像

もしも推しが生き返ったら?(本編)

私は金田優真かなたゆま。29歳。OLをやっている。
仕事をする傍ら、大好きな推しバンド
シガーキングの活動を陰ながら応援している。

ただこのバンドは数十年前に
原因不明で亡くなった
藤田真咲ふじたまさきが結成したバンドであり、
残ったメンバーで今でも活動を続けている。

私は藤田真咲ふじたまさきが生きてる時のバンドのライブを
残念ながら1度も見たことはないが、
現在のメンバーの活動のおかげで
音楽や、ライブ映像など、
ネットで上がっているのを見つけて、
彼の歌っている姿に釘付けになり、ハマった。

ここまで彼の姿や、
歌声に虜になるとは思わず、
さらには歌詞の世界観の
ノスタルジックさにじんわりハマり、
曲の世界観が表れた彼の故郷に
幾度となく足を運ぶように。

バンドを好きで知り合った
SNSのフォロワーの情報も聞きつけ、
彼の眠る寺のある墓地にたどり着き、
幾度となく訪れていたある日のことだった。

優真「まさか本物の真咲さんに会えるなんて。
本当に真咲さんですよね??
私、霊感ないほうなんで、
今でも信じれなくて・・・泣」

真咲「いやいや、お願いだから泣かないで💦
大丈夫・・・本物だから!」

優真「ああ神様、私もういつでも死んでいいです。
大好きな推しに会えたので・・・」

真咲「いや、死んだ人間の前でそれ言っちゃだめだよ!!失礼だな!!優真ちゃんには大事な任務があるんだから💦」

優真「任務・・・?」

真咲「そう、こうして優真ちゃんと
俺が会話できるってことは、
俺と運命共同体で、
俺が生き返るチャンスなんだよ!!
だからお願い!!君のファンである
俺に免じて協力してほしい!!」

優真「真咲さんが生き返る!?運命共同体?
なんだか訳が分からないけど、協力します!!!」

真咲「よし!決まり!そうとなれば話が早い!
まず俺の生きた証を集めてほしい。
俺はミュージシャンだが、
曲だけでなく本も出してる。
俺が今まで出してきた書籍に加えて、
音楽雑誌も集めてほしい。そうすれば、
神様が俺が生きた証を対価に
生き返らせてくれるんだ!」

優真「えっ!?CDとかDVDとかだけじゃ
ダメなんですか?昔の雑誌なんて、
後追いのファンの私じゃ
全部集めれないですよ!!」

真咲「そこを俺が
優真ちゃんに着いていきながら・・・(ニヤリ)」

優真「これが有名な真咲さんの
ストーカー気質www」

真咲「失礼だなwそんなことより、
雑誌を買って集めてくれ!!!
金はかかるが、
今までのシガーキングのことを考えたら
苦じゃないだろ!!!」

優真「今ここの場所に来るのに
かなりの時間とお金が掛かってるのに、
さらに出費が・・・
でも、真咲さんが生き返るなら・・・
頑張ります!」


こうして私は今現状、
誰にも見えていない真咲さんと
生きた証を集めるために
生きた証である雑誌を全部探すことになった。
しかも、全部購入しないとダメとか・・・
大丈夫なのかな???

数日後、私は真咲さんの故郷から帰宅。
まずは情報収集から。

真咲「ほんとに着いてきちゃった。
女の子の家に・・・」

優真「今更、なに怖気ついてるんですか(笑)
私だって、こんなことになるなら、
もっと片づけていましたよ!
散らかっていますが、どうぞ。」

真咲「・・・お邪魔します。」

優真「私、シガーキングのファンになったのは、
真咲さんが亡くなった後なんです。
要するに後追いファンで。
なので、真咲さんの言葉が残った本は
これしかなくて・・・。」

真咲「おお!俺の日記が書籍化したやつだ!
あの頃は地道に携帯で日記書いてたな・・・
本もわざわざサインして・・・
ってあれ、サインねえじゃん!」

優真「だから言ってるじゃないですか、
私は後追いなので、
当時のサイン入りは手に入れていないんです。
それにこの本もたまたま友人と寄った
本屋で新品で手に入れたんですよ!」

真咲「ほうほうなるほど。そうゆうことね。
ちなみに今、西暦何年かな?」

優真「2022年です。
真咲さんが亡くなって・・・
もうすぐ13年?」

真咲「もうそんなになるの!?
やばいじゃん!俺みんなに忘れられてない?」

優真「忘れられるどころか、
どんどんあなたのこと知れ渡っていますよ。
知らないんですか?メンバーのみんなが
あなたのあの歌を歌いながら、
頑張っているんですよ!しかも、
あの歌が有名になって、
音楽の教科書に載ったり・・・」

真咲「ああ・・・そういえば、
俺の墓参りに今まで来た人達が、
たまに手を合わせて黙り込まずに
口に出して言っていたことと同じだ。
生きてる人間の声は聞こえるけど、
心の声まで聞こえないんだよ。
そこは死んでも聞こえないというか。
なんでだろうなと思って、
普通死んだら天国に行くと思うでしょ?
そしたら、俺の墓の前に光が急に差して、
神様らしき人が現れて・・・。」

神様「ここに居座って、
墓参りに来た人たちに声をかけなさい。
あなたの声が聞こえ、
あなたの姿が見えた人間がいたら、
あなたの運命共同体。
その人と共にあなたの残した
生きた証を集めることができたのなら、
あなたを生き返らせましょう。
ただし、その生きた証は
運命共同体の私有物として
手に入れた物のみです。
期限はあなたが亡くなってから
13年になる命日まで。」

真咲「・・・みたいなことを言って消えていった。
あれは神様なんだと思い込み、
この12年待っていたけど、
親や、兄弟や、親戚、バンドメンバー、
俺の知ってる人たちは誰一人も
俺の声が届くことはなかった。
もう諦めていた。だけどそんなある時。
優真ちゃんが来たんだ。」

優真「・・・そうゆうことだったんですね。
私、てっきり真咲さんは
メンバーや家族のずっと傍で
見守っていた気でいました。
だって、ライブのアクシデントとか
あなたの仕業だとファンの間で
噂されていましたよw」

真咲「ええ?俺そんなことやってない・・・
あ、でも、あまりに誰にも声が届かないから、
神様も見かねて、
何回か助けを求めたことがあって・・・
その節目のライブとかになんか・・・
ちょちょいとイタズラを
お願いしたりとかしたような・・・(笑)」

優真「やっぱりやってるじゃないですかw」

真咲「でも俺はそこに赴いてないからね。
優真ちゃんみたいな運命共同体に出会うまで
断固として墓の前にいたから・・・
あ、でも可愛いファンの人が来たら、
お寺の外までお見送りはしたことはあるかな(笑)」

優真「そんなことより、真咲さん。
あなたはどんな音楽雑誌に
インタビューされていたんですか?
私のスマホの調べによりますと・・・」

真咲「スマホって何?」

優真「ああ・・・(察し)
今の携帯みたいなもんです!
パソコンが小さくなったバージョンに
今は進化して、こうやって調べれるんですよ!
(画面を見せる)」

真咲「ええ!!
12年も経つと携帯も便利な物に変わったんだな。
ちなみに雑誌はね。「音と人」とか、
「ロックオン日本」とか、
「シャベルロック」とかね・・・
その他、音楽雑誌だけじゃなく、
文芸雑誌や、映画の雑誌、
ファッション雑誌だって出たよ!!
あの頃は忙しかったなあ・・・
ちなみにインタビューはね、
曲の発売ごとに出ていたよ!」

優真「ええ!!そんなに!!!
これ厳しいですよ!!あなたが発売した曲の
シングル、アルバムは全部持ってますけど、
発売日に合わせての発売日とか・・・
とにかく・・・某オークションサイトと
某フリマアプリ登録して、
密林通販でも探して、
古本屋とかにも行かなくちゃ・・・。」

真咲「なんだかよく分からないけど、
頼むよ!では!!👋」

真咲はそう言って日記の書籍の中に入り込んだ。

優真「ええ!真咲さん!?
もう!!私これからどうなるんだろう・・・
だけど、期限が亡くなってから
13年経つ命日って・・・
今日は12月10日だから・・・
ボーナスが入ったから、
お金をそれに注ぎ込むとして・・・
あと2週間だし・・・間に合うのかな・・・泣」

それから優真は仕事をする傍ら、
スマホで真咲のインタビューが掲載されている
雑誌を片っ端から購入。実家の車を借り、
休みの日には車を走らせて、
都内の古本屋などを巡った。

優真「あった!
“ロックオン日本”の過去の雑誌!…でもあれ、
どれもシガーキング載ってない!!」

真咲「あーそれは俺らまだ
デビューしてない年だから載ってないよ(笑)」

優真「そうですか…
雑誌がたくさんあるからそうだと…。」

真咲「一応、2002年デビューだからね(笑)
スマホで曲の発売日検索して探してみたらどう?」

優真「あ、そうか、その手があった(笑)」

真咲「お!!あの“ロックオン日本”の編集長、
俺の憧れのバンドの
インタビュー記事書いてるじゃん!すげー!
あの編集長、俺の音楽じゃないプライベートまで
聞いてくるんだよね…聞き上手だから、
ついつい話しちゃうんだけど(苦笑)」

優真「そんな編集長がいてるんですね(笑)」

そんなやりとりをしたり、
購入した雑誌のバックナンバーまでチェックして、
発売日を遡ったり、古本屋で見つけた雑誌は
たまに切り抜かれて絶望し、探しなおしたり、
だけどとにかく私には時間がない。
だってもしかしたら、
真咲さんを連れ戻すことができるかもしれない!
その意志だけで何とか頑張れた。

だけど・・・
こうして誰も見えないけど、
推しである真咲さんと時を過ごしていることに
そのはにかんだ笑い顔を見るたびに、
特別感もあり、独占したいと思うこともあった。

優真「ねえ、真咲さん・・・
この曲に出てくる歌詞は昔の彼女のことを
歌っているんでしょう?
どんな人だったんですか?」

真咲「う~ん?知りたい?」

優真「知りたいです!」

真咲「え~とね・・・内緒(笑)」

優真「さすがにそれは言えませんよね・・・。
なんか気になっちゃって。」

真咲「運命共同体と言えど、
俺、ミュージシャンだし、
今残ってるこの曲の解釈については
教えることはできない。
雑誌に書いてることそのままだったりもするし、
色んな解釈ができるようにしたいんだよね。」

優真「じゃあ、もし集め終わって、
真咲さんが生き返ったら、
真っ先に私にインタビューさせてください!!
この曲私大好きなんです!!」

真咲「うん・・・いいよ。」


そうして必死に彼の生きた証を集めていた。

そして、13年目の命日の前日の日の夜。
私はすべて集め終わっていた。
だけど、彼の姿はなかった。


優真のスマホにシガーキング公式の
SNSアカウントから、通知が届いていた。

シガーキングからのお知らせ】


あれから数年後。私は今の職場を辞め、
都内の音楽雑誌の会社
「ロックオン日本」に転職した。

編集長「まさか真咲くんが
長い昏睡状態だったなんて、
知らなかったなぁ。」

真咲「俺もね。ずっと寝てたから、
もう本当に今も夢なのか、
現実なのか分からなくて、
この気持ち忘れたくなくて、歌にしたよ。
夢作曲ってやつかな(笑)」

編集長「あ、今日は僕の部下も来てるんだよね。
なんでもシガーキングのファンで、
今日は真咲くんも復帰したてだし、
リハビリがてら、
この子のインタビュー受けてよ(笑)」

優真「今日はよろしくお願いいたします!」

真咲「おう!優真ちゃーん👋よろしく!」

編集長「あれ…?知り合い?」

真咲「いや〜可愛いからつい、
さっき始める前に声かけちゃったw」

編集長「真咲くん、
復帰早々から僕の部下に
手出したらだめだよw」

優真「コホンっ///!では真咲さん!
早速ですが、この新曲のことですが…」

真咲「うんうん♪なんでも聞いて♪」


〜END〜




こんな記事でもよろしければ、サポートお願いします! いただいたサポートは感謝の気持ちで使わせていただきます!