osage「23=」Release Tour 2023 @代官山UNIT ライブレポ
はじめに
6月24日(土)に代官山UNITで行われた、osageによるアルバム「23=」リリースツアーのファイナルのレポです。全23箇所でのツアーは過去最大規模で、今回のファイナルはワンマンライブでした。
本編
1 シャンプー
SEもなく静かにメンバーがステージ上に登場する。ツアーファイナルでワンマンライブという独特の緊張感で拍手すら躊躇われる張り詰めた空気を切り裂いたのは、今回のアルバム「23=」(読み:ツースリー)収録のバラード曲。最初の方に山口ケンタ(Vo.&Gt.)のギターの音が鳴らないアクシデントもあったが、そんなトラブルも意に介せずこの歌に気持ちを込めて集中している姿にとても心打たれた。こういう日常の物をモチーフにしたバラード曲に弱い。
2 セトモノ
特徴的なギターリフから始まったのは、今回のアルバム曲ではないがライブ定番のこの曲。演奏も手慣れているからだろうか、メンバーの演奏する様子はとても楽しそう。「さよならを今あなたに/思い出が綺麗なうちに」という歌詞に反した明るい曲調、まさしくこれがosageの音楽だ。「何より大事なあなたが/誰より愛されますように」と観客の方を指さしながら歌うケンタさんは本当に我々の幸せを願っていてくれそうだ。
3 Greenback
田中優希(Dr.)のスティック4カウントで始まったイントロの最中に「この景色に忘れることのないような名前を付けよう。Greenback!」とケンタさんが叫ぶ。osageのライブではこうやって歌詞になぞらえて、あるいは歌詞に入りきらなかった想いを語ったMCを導として曲が披露されることが多い。緑の照明に包まれる中での、ファンの「Wow,wow!」の合唱と挙がる拳の多さは確かに忘れられないような景色だった。
4 ホンネ
ここでセットリストは再び「23=」収録曲へ。観客のクラップとイントロの「Foo」のコーラスを煽りつつ、たなゆーさんがサンプラーを叩きながら歌が入る。特徴的なのは金廣洸輝(Gt.&Cho.)によるカッティングで、打ち込みの音が入りつつもそれに負けないバンドサウンドを演出する。わずか3分足らずの曲ながら、ラストサビで転調を挟んだり2番Aメロがメインのリズムが生ドラムではなくサンプラーによって奏でられたりと、展開を惜しまないので生での聴きごたえがある。
5 ニューロマンス
「1時間も立ちながらよく待ってくれました」と、誰もが感じた「開場時間がキャパの割に早すぎる」ことをMCでいじったり、自分たちが待っている時のことをヒロ クサマ(Ba.&Cho)と軽快に話したりとさすがの場慣れっぷり。この曲ではケンタさんがハンドボーカルに切り替えサビでは腕ごと体を左右に振り、オーディエンスも同様に腕を左右に振る。間奏のギターソロ、クサマさんによるスラップ、激しめアレンジのドラム、楽器隊も全てがかっこいい。昨年の連続シングルリリースの中でもosageの新しい一面を開拓したような曲。
6 フロイト
「続いては縦ノリいけますか」という言葉で始まったこの曲では、米津玄師やsumikaのサポートベースも勤める須藤優(XIIX)がプロデューサーを務めている。ニューロマンスからのフロイトというハンドボーカルの曲繋がりは今までも何度か観たが、そうしてライブで披露される中でどんどん進化していっている実感がある。時代の流れに乗った、短くて縦ノリの曲。前髪を掻き上げながら歌うケンタさんの色気たるや。観客もこのセトリの流れでは彼のカリスマ性に囚われずにはいられない。
7 ワンフレーズ
ハンドボーカルだが動きでも魅せた前2曲とは異なり、マイクスタンドに手を当てて静かな空気の中で披露された。曰く「osageの恋愛ソングの中で唯一失恋じゃない曲」であり、「大切な人に向けて書いた曲です」というMCから入っただけに歌詞の一節一節が静かに、確かに染み渡る。ありふれたワンフレーズでも、ライブという場所で生音で聴くと唯一無二のものとなる。
8 hanauta
「23=」の収録曲が続く。ケンタさんはエレキギターでアルペジオを爪弾きながら歌い始める。金廣さんのギターソロが光る間奏から「明けない夜がないように」の部分にかけての音圧はやはりライブで体験するとより真に迫るものがある。歌い出しと歌の終わりが、ギターのアルペジオは同じフレーズなのに歌詞によって時間の経過を実感するという構成の妙は、それこそこの曲を「好きだと思う」と誰かに勧めたくなる。
9 あの頃の君によろしく
最新アルバムからの曲が続いた後に初期からの人気曲がセトリ入り。そもそもアルバムの曲数が少ないのもあるが、アルバムツアーでも昔の曲をやってくれるのは単純に嬉しい。韻を踏みながら「あの頃」の失恋のことを歌ったバラードソング。「ワンフレーズ」からのこの一連の流れでは、観客もより「歌」を意識して聴き入っているような様子があった。
10 letter
そんなバラード曲ゾーンを経て、後半戦への火蓋を切ったのはこの曲。ピアノの音が入ってたり、たなぴさんのドラムがコロコロとリズムパターンが変わったりとポップ全開の曲だ。サビを繰り返すところで高く片足を上げるケンタさんや軽くジャンプしながら弾くクサマさんもとても楽しそうだった。
11 赤に藍
ドラムの四つ打ちリズムが鳴らされるなか、曲名通り赤と青の照明が半分ずつメンバーを照らす。「シャンプー」もそうだが日常に絡めてメタファーを使用した歌詞はまさにosageの曲の真骨頂。金廣さんのカッティングギターとたなぴさんの16ビートが作り出すグルーヴはライブでしか味わえない。最後に駆け抜けるように終わるのもいい。
12 ガラスの靴
歌詞にかけた「誰もが悲劇のヒロインを演じているんだ!」というMCで、このライブがアルバム「23=」のリリースツアーだったことを再び思い出す。1stフルアルバムを出すに当たって昔からある曲が再録されるというのはあるあるだと思うが、それによってその昔の曲が当たり前のようにセトリ入りするようになるのが嬉しい。サビの前のめりな4ビートが疾走感を演出する。
13 最終兵器
ここでまさかの選曲。聴くのは前回の渋谷eggmanでのAGE!AGE!ワンマン以来かな。「防災無線は酷いノイズが不安を募る」の部分で不穏さを醸し出す赤の照明。そこから「例えば夜空に星が瞬くこと」の歌詞通り回るミラーボールが満天の星空を演出する。天井の高いこの代官山UNITならではのバッチリはまった照明。ここでアップテンポの曲の畳み掛けがひと段落。
14 エンドロール
MCで「せっかくのツアーファイナル、ワンマンライブなので懐かしい曲をやります。」と話した後にたなぴさんのドラムで入ったのは2019年の「ニュートラル e.p.」収録のこの曲。日めくりの日々のように忙しなく知名度を上げ快進撃を遂げるまさに今のosageを表したような曲。「ニヶ月前のカレンダー」の歌詞を聴いて、このツアーが4月に始まったのだったと思い出す。
15 移ろう季節に花束を
曲名を告げて披露されたのは、続いても「エンドロール」と同じくファン人気が高い曲。4月頭から6月末まで、約3ヶ月間かけて季節をまたぎながらツアーを回ってきた今のosageだからこそより響く歌詞。誰かのためのことばっかりを考えて疲れてしまうような時に、眠るとしようかと優しく声をかけてくれるのがosageらしい。
16 23
「ツアーができるのは色んな人の力があるからで、決して当たり前ではないんだけど、でもお客さんの前では当たり前のようにやっているように見せるのがロックバンド」全23公演のツアーを回って思ったことを口にしたあと、今回のアルバムの最後の曲が最終盤で鳴らされる。彼らがステージに上がる時の心情も表しているような曲。奇跡なんて無くていい、彼らが当たり前のようにライブをやっていてくれれば。
17 世明けの唄
「最後残り90秒だけでかい音鳴らして帰ります!」ここで披露されたのはもちろん「23=」収録のこの曲。1曲目か最後に披露されることが多いという肌感覚だが、「23」前のMCとその演奏でグッときた後にこのアンセムを持って来られると拳を挙げざるをえない。「敢えて言うなら『一人にしないから』」「Baby このまま歳を重ねていつか笑って終われたらいいな」こんなことを歌ってくれるバンドのことを、我々が誇れないわけがない。
アンコール
1 青かった。
「せっかくのファイナルワンマンなので、初披露の新曲を持ってきました!」そう言って披露されたこの曲は、2023tvk高校野球神奈川大会中継応援ソングに決定されている。発表がこの日のライブの前日だっただけに、この新曲を聴くことを楽しみにしていた人も多いだろう。夏と青春を思わせる歌詞に、初見ながらosageらしく爽やかで率直にいい曲だなという印象を受けた。演奏後にこの日の翌日に配信リリース、MV公開、そして自主企画の解禁があることが知らされる。
2 ウーロンハイと春に
「遠くへ行ってしまった人へ向けて書いた曲」毎度恒例のMCと、この日まだ演奏されていないことで次の曲を全員が確信する。1番のサビ前に「歌える人だけでいいから歌って」と言って客席にマイクを向けたが、歌える人だけどころかほぼ全員の合唱が響き渡る。「十年後も二十年後も変わらぬ声と話し方でそのままなんでもない話をしよう」前述の通りモデルがいる曲だが、私達に向けて歌ってくれているような気がするosageの魔法。
終わりに
昨年の怒涛の配信シングルリリース、渋谷eggmanでの初ワンマンライブを経て、今年2023年に満を持してリリースされた8曲収録全23分のフルアルバム「23=」。フルアルバムにしては短すぎることを以前なきごとのツアーでの対バンの時も言っていたが、それはつまりさらっと聴けるアルバムということで、日常に溶け込むosageの音楽らしいとも言える。キャッチーな曲、聴かせる曲、新境地を切り拓くような曲、ストレートな曲。今までのキャリア以上にバラエティに富んだ楽曲は今回のライブでも様々なosageの表情を見せてくれた。
MCで、今回のツアーでより仲が深まり、ライブ中でもステージ上で会話できるほどになったり、ふとしたときにハモってしまうと言っていた。サポートメンバーを加えながらライブを行うバンドも少なくない昨今、打ち込みやサンプラーを使いつつもあくまでこの4人に拘って各地を回ってきたことでバンドの地力が上がったように感じる。「あなたたちの自慢になりたい」と言っていたが、この調子だったらすぐにもっと人気が出ると思う。いつかこの日に代官山UNITの最前でosageを観たことを自慢できるのが待ち遠しい。