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FINLANDS "I AM SHUTTLE TOUR" @新代田FEVER ライブレポ

はじめに

FINLANDSのRe-Rec Album「SHUTTLE」のリリースツアー「I AM SHUTTLE TOUR」の東京公演編、新代田FEVERでのワンマンライブのレポです。まだ完結していないツアーなのでセットリスト・演出のネタバレを含みます。ご承知おきください。











本編

1 HEAT
 前回のツアー(10周年ツアーの記念博TOUR)や今年の記録博2023との繋がりを匂わせるSEが鳴り終わった後、4カウントで入ったのは今やFINLANDSの代表曲となった「HEAT」。リリースから2年近く経ち、FINLANDSの公式YouTubeチャンネルが出来てから初めてMVが公開された曲だが、曲が始まった瞬間の歓声やサビで上がる腕の数でこの曲の認知度が推し量れる。最近になって知名度が上がった曲を1曲目に置くことでいきなりライブが加速していく。

2 ウィークエンド
 轟音のギター&ベース、ドラムの乱打をバックに塩入冬湖(Vo.&Gt)が挨拶と「皆さんに素敵な週末が訪れますように」というお決まりの口上を述べてからオープンハイハットの4カウントで「ウィークエンド」に突入する。アルバム「PEPER」の収録曲で近年のライブではおそらくセトリほぼ皆勤賞の言わずと知れた代表曲である。自身の中で人気2トップの2曲をいきなり披露することで、この後どんな濃厚なセットリストが待っているんだろうかと期待が高まる。

3 ゴードン
 続いて披露されたのは、再録アルバム「SHUTTLE」にも(SHUTTLE ver.)として収録されている「ゴードン」。ライブ定番曲であるだけに盛り上がりも十分だが、「HEAT」と同じくこれぐらいのBPMでエイトビートの曲というのがFINLANDSの十八番の1つであり、ライブで聴くと音源以上に迫力がある。最後の3拍子のところで鈴木駿介(サポートDr.)のグルーヴが響き渡ると、そのまま客の拍手も待たずにバスドラの4つ打ちが始まる。

4 クレーター
 (このタイミングで4つ打ちってことはラヴソングあたりかな…?)と思っていた私の予想を大きく裏切ってきたのは「SHUTTLE」には収録されていないものの、こちらも初期曲である「クレーター」。間髪入れず4連続で曲が披露される展開と思わぬ選曲に盛り上がるフロア。2段階で変化するイントロの、ちょうど真ん中のところで塩入が曲名を言うのがお決まりのくだりだったが、今回はなかった。しかしそのタイミングで拳が何箇所からも上がっているのが見えて、ファンもこの曲をライブで聴くのを待ち望んでいたんだろうなと思った。

5 あそぶ
 「(メンバーの出身地が)神奈川×3と福島出身なのに東京をホームというのは烏滸がましいけどホームなつもりでいる」と言う塩入のMCに「そんな(烏滸がましいなんて)思わなくていいんじゃない?」と返す彩(サポートBa.)に対し塩入が「あなたは湘南だからいいわ。座間と箱根の気持ちも考えてよ」と澤井良太(サポートGt.)と自らを指差し突っ込む、というようなほっこりするMCが挟まりつつ、再録アルバム「SHUTTLE」を作った経緯などを話した後はそのアルバムの1曲目であるこの曲が披露された。

 「今が一番かっこいいし、そうあるべきだと思ってるけど、10周年を迎えて今一度昔の曲をやってみたいと思えるようになった」とMCで話していたが、「あそぶ」のような昔の曲でも歌詞を聴くとしっかりFINLANDSだな、と思えるのがすごい。11年目に突入した今でもバンドの根幹は変わらないし、昔から変わらず冬湖さんの中にあるものに魅力を感じて、我々はFINLANDSが好きなんだなと実感できる曲。アルペジオと歌から入るこの曲だからこそ、より彼女の内にあるものを感じられた。

6 恋の前
 個人的には久々に聴くこととなった「結婚詐欺の曲」こと「恋の前」。ピンクの照明はこの曲が収録されているアルバム「LOVE」のジャケットモチーフだろうか。こういうミドルチューンでも澤井さんのギターの音がでかいのがやっぱりFINLANDSのライブだなあって感じがする。「恋の外れ」という歌詞のある「あそぶ」の後、そして抑えられない恋心を歌った次の曲の前に披露されるにはこれ以上ない選曲だ。

7 like like
 少しのMCの後に披露された昨年リリースの「like like」。涙腺崩壊必死のイントロと「昼には通ることのない道 夜にキスして帰る道」という歌詞で幕を開けるこの曲は、「好き」を"love"ではなく"like"に訳したところで誤魔化せない気持ちを歌っている。「あなたと遊ぶと痛くなっても」「笑える程の恋じゃない」と前2曲との繋がりを感じさせる並びだ。

 大人になると人は自分の気持ちを誤魔化す便利な言葉を使うようになる。「友達として好き」だとか「推し」だとか。でも"love"が"like"にはならないように、それを2度続けて嘘に嘘を重ねても本当にはならないように、生まれた気持ちならばそれは仕方ないんじゃないか。それならば持ってしまったその感情を大事にしていこうじゃないか。以前ネット上に公開されていた冬湖さんのセルフライナーノーツを読んだ時に考えたことを思い出した。ライブで曲を聴くと、その時に思っていたことまで思い出せるからなんとも不思議だ。

8 ワンダーランド
 「懐かしい曲をやります」というMCに続けて曲名を告げ披露されたのは、再録されて今回のアルバムに収録された「ワンダーランド」。昨年リリースされたばかりの「like like」の次にこうした昔の曲がくるという揺さぶりが面白い。ライブで聴くとサビの彩さんと澤井さんのコーラスや、包み込むような綺麗な照明がとても美しく、より曲の世界観にのめりこめた。

9 ランデヴー
 不規則な同期音が鳴り響く中での「誰しもがそれぞれのノスタルジーがある」という内容の定番のMCを挟んで披露されたのは、地味にライブでの演奏率が高いこの曲。ミドルテンポのオシャレな曲だがライブ映えがすごい。余談だが別の対バンイベントの時にFINLANDSにあまり詳しくない私の友人2名が、ライブで良かった曲として偶然口を揃えて挙げたぐらいである。間奏のシューゲイザーチックなギターや荒ぶるドラムなど、ライブでの見どころが多い。

10 ロンリー
 塩入冬湖がいきなりギターを掻き鳴らし歌い始めたのは、再録アルバムリリース前のライブでもよく披露されていた「ロンリー」。誰しもが音源を聞いたことがあるというわけではない時期から演奏されていたし、MVも出たこともあって認知度は十分。勿論披露されるだろうと踏んでこの曲を聴きにきたという人も多いのだろう。サビでは多くの手が挙がっていた。最後の「ラララ」もライブだと音源よりはっきり聴こえて、冬湖さんと彩さんのハーモニーが美しかった。

11 ピース
 間髪入れずアップテンポの8ビート曲を畳み掛けてFINLANDSのライブが加速していく。10周年イヤーの昨年、TBSドラマストリーム「村井の恋」のオープニングテーマとしてFINLANDS初のドラマタイアップ曲となった曲である。これ程ないど直球な歌詞のラブソングだが、曲調自体も直球そのもの、ど真ん中ストレートである。ライブで聴いてかっこよくないわけがない。

12 ラヴソング
 「確かめ合うなら私を選んでほしい」と歌った「ピース」の後にピンクの照明に照らされ、バスドラの4つ打ちとギターアルペジオに乗せて「さよならさつまらない人」と塩入が歌い出す。最新オリジナルアルバム「FLASH」のリード曲である「ラヴソング」はギターリフと4つ打ちが特徴的な曲で、歌詞は明るいが失恋ソングである。どんな曲調だろうとやはり切ない恋を歌っているのがどうしようもなくFINLANDSで、どうしようもなく塩入冬湖だ。

13 April
 「私が初めて人に向けて書いた曲があるんですけど、その人というのは当時の地元が同じ恋人で。『夢を叶えるために上京したい』と言われ別れたんですけど納得いかないことが2つあって。1つ目がその後彼が横浜に引っ越したことで。2つ目は2年後くらいに会った時にももクロの追っかけになってたこと。全然言ってたことと違うじゃんっていう(笑)。だからすごくいい曲なのに今後やることもないんだろうなと思ってたら、この間友人の結婚式で『Aprilを演奏してほしい』と言われて。まだそう言ってくれる人がいるならと思って再録しました。」

 アップテンポゾーンから一息つき、そんな少し笑いを誘いつつもどこか切ないMCの後に演奏された『April』は、別れの季節である4月の実話を背景とするFINLANDSらしいバラードソング。そんな経緯でアルバムに入ることが決まったというなら件の結婚式の友人に私からも感謝したいぐらいだ。FEVERには5つの電球?が合わさって1つになっている照明がいくつもあるが、この曲でそれらが全てピンクに光っている光景はまるでステージに桜が咲いているようだった。この曲のこの景色を伝えたくてこのライブレポを書き始めたほどである。

14 スペシャルウィーク
 アルバムに収録されている再録曲が続く。Bメロの彩さんのコーラスがライブだと特に美しく響くバラード曲。私は昔のFINLANDSには詳しくないのだが、もしかして当時の音源ではコーラスは元ベースのコシミズカヨさんが担当していたんだろうか。「あなたとわたしの熱(HEAT)」「週末の(ウィークエンド)」「賭け事じゃないか(あそぶ)」と今回のセットリストの曲との関連も歌詞で匂わせつつ、満員のFEVERで終わる私達の特別な週末を彩っていく。

15 SHUTTLE
 いつもならここでこのままもう少しバラード曲が続くところだが、ここでMCで改めて再録アルバムに「SHUTTLE」と名づけ、同名の曲を作った理由が語られる。アルバムにおいてこの曲のみ、新しく作られた曲であり、過去の曲を振り返ってみて提示されるFINLANDSの現在だ。「ないものなんて何もないわ 上手な未来は わたし いらないの」という歌詞で〆られるが、過去の自分を見つめ直した上でこれが私なのだと自身のアイデンティティを再確認したようなことが窺える曲で、メンバー脱退・結婚・出産・10周年と紆余曲折を経たうえでこんな素直な歌詞が歌われることに感動した。

16 Stranger
 彩さんのベースで次なる曲が始まり、ギターリフとドラムの重厚なビートが重なっていく。「ランデヴー」と共にアルバム「FLASH」収録曲で、リード曲でないながらも、こちらも地味に演奏率が高い曲である。失うことが得意で、懲りずに愛し合う変わった(stranger)生き物である「わたしたち」のことを歌っている歌詞も魅力的だが、このぐらいのBPMの曲だとより楽器隊の上手さも際立ち、とても気持ちよく裏で乗れる曲だ。

17 リピート
 BALLOND'ORとのスプリットEP「NEW DUBBING」に収録されていた「リピート」も、この機にサポート含め今のメンバー、今の演奏、今の歌声で再録された。曲名の通り同じコードが繰り返されていくなかでライブでしか表現できない盛り上がりが生まれていく。それはさながらここから終わりへと向かっていくライブのヒートアップを示唆するかのようである。

18 バラード
 駿介さんのタイトなビートの上に澤井さんのノイジーなギターが鳴り響くと、ライブ定番曲のこの曲が演奏されるのだと多くのファンが気づく。サビのハスキーボイスはやはり音源よりも生の方が迫力が段違いだ。澤井さんのギターも荒ぶりまくっていた。間奏でドラムのジャングルビートに載せてサポートメンバーを紹介する流れもお決まりのもの。終盤に披露されることも多いので(この曲で終わりか。盛り上がるからいいけど「ナイター」聴きたかったな…)などと思っていると聴き慣れた4つ打ちビートが始まり……

19 ナイター
 「逃げるが勝ちっていい言葉だと思うんですよね」という言葉で次の曲を予感する。まさかこの曲で終わるライブをやってくれるのかと思っていると、耳馴染みのあるギターリフが奏でられる。やっぱり「ナイター」だ。もしかしてやらないかなと思わせておいてこのMCにこの選曲はズルすぎる。かっこよくないわけがない演奏はもとより、高音をファルセットで出す冬湖さんの色気にもやられ、圧倒されたラストだった。本当に逃げ勝ちされた気持ちで、悔しいがどこか清々しい。いつも通りアンコールなんてなくても十分すぎるほど充実の19曲。


おわりに

 実は千葉公演のチケットを取った後にやっぱりワンマンも行きたくなり、ECショップで買ったFINLANDS ×新代田FEVERのTシャツを着るのにおあつらえ向きのライブだとも思ったので迷わず申し込んだライブだったが、期待以上のものが観られてよかった。特にAprilでの桜を思わせる照明と最後のナイター。再録アルバムという特殊な性質のアルバムツアーだったが、やはりアルバム曲が輝いてこそのアルバムツアーだよなと思った。

 MCで語っていたが新代田FEVERはバンド史上初めて東京公演を行った箱だったらしい。その頃はガラガラだったこの箱を満杯にすることを1つの目標として頑張ってきたと話していたが、10周年を迎え満員御礼のFEVERでライブをするFINLANDSのライブはとても達成感に満ちており、これぐらいのキャパシティのライブハウス特有の熱気に満ちたライブだった。叶うならまた満員のFEVERでFINLANDSを観てみたい、そう思うより先にまずは来週には千葉公演が控えている。対バンではどのような表情を見せてくれるかも楽しみだ。

参照:skream!インタビュー https://skream.jp/interview/2023/05/finlands.php
   BARKSインタビュー https://www.barks.jp/news/?id=1000225656
 


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