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「noteって、どうやって運営していったらいいんでしょう?」 企業の担当者さんに相談されたとき私がいつも答えていること

長年noteを使い、noteのプロデューサーを務めていたこともあって、noteをはじめたい企業の担当者さんから相談を受けることが多々あります。企業側がやりたいこととnoteでできることをすり合わせた結果、「こんなにいろんな使い方ができるんですね」と驚かれることもしばしば。

特にフォロワーやスキを増やすためのノウハウではなく、これまでの公式の情報発信では拾いきれていなかった舞台裏を伝えファンとつながる場を作り上げるためのアイデアを話していると、担当の方自身の熱量が高まり「やらなきゃ」から「やりたい」に変わっていく手応えを感じます。

企業ごとに業界の特性や発信の姿勢、課題や目標が異なるので細かい戦略や企画も企業ごとに変わりますが、考え方としては共通するものがあることに気づいたので私が普段お話ししている内容をまとめておきたいと思います。

企画は本や雑誌を編む感覚で

一番よく聞かれるのが「noteで何を発信していけばいいんでしょうか」という質問。定期的にコンテンツを出してみるとわかるのですが、実は発信で大変なのは作る行為そのものよりも、「何を作るか」を決めるところだったりします。毎日の夕飯作りで頭を悩ませるのは献立を作ること、という話にも通じるものがあります。

さらに日々の業務をこなしながらプラスアルファで発信をしようと思ったら、何を出そうかと考えているうちにあっというまに一週間が経ってしまうこともザラにあります。

ネタに頭を悩ませる時間を減らすために重要なのは、自分たちの「型」をもつこと。連載のような感覚で企画の型をつくっておけば、頭を使う部分を素材選びだけに集約することができます。

ここで気をつけて欲しいのは、突然細かい話から入らないこと。たとえば連載企画をゆくゆく本にまとめると考えたら、まずは大枠の話から入って徐々に細かいテーマや事例にうつっていくはずです。

たとえば急に社員紹介をはじめても興味をもってくれる人は少ないかもしれないけれど、そもそもどんな部署があってどんな仕事をしていて、どんな工程をたどってモノやサービスが作られているのかという大枠の話に興味をもってくれる人は一定数いるはずです。

さらにいえば、読まれる記事を一本出せば

私のnoteでいえば、ロングセラーといえるのが英語学習の記事。

二年前に書いたnoteなのですが、いまだに読まれ続け、このnoteを読んで英語学習コミュニティに入ってくれた方も数知れず。実は公開後もちょこちょこ情報を更新して、私が書いた他のnoteやコミュニティ活動についても知ってもらえるように常にアップデートしています。noteは検索に強くなっているので、読まれるnoteを書くと検索に引っかかりやすくなり、たどり着いてくれた人が呼んでくれることでまた検索が強くなり…と正のループを作ることができます。

このように、一本ヒットを出すと検索でたどり着いてくれる人や知り合いからシェアされて知ったという人も増え、「はじめまして」の挨拶がわりになったりするので、その一本をベースにより深く知ってもらう導線を作るのが理想的なかたちだと私は思っています。そのためにも、はじめから細かい話に入ってしまわず、本でいうと「はじめに」を書くつもりで幅広い人に呼んでもらえるテーマから書き始めるのがおすすめです。

とはいえひとつの企画頼みになるのが心許ないもの。またずっと同じ型の発信だけでは受け手も徐々に飽きを感じてしまいます。

だからこそ意識したいのは「雑誌的」な企画の立て方。毎月発行される雑誌と同じように、メイン企画とは別に箸休めになりそうなポップな企画を挟んだり、ニッチな層にだけ刺さるネタをいれたりして緩急をつけるのがおすすめ。

私も自分の専門である小売に限定せず、前述のように英語にまつわるnoteを書いたり、野球関連のエッセイを書いたりしているのですが、直接お会いした方にはなぜか野球noteのウケがいいので(いやなんでだよ)、ときどき「ハズシ」を入れるのも大切な気がしています。

企業の場合はどうしても部署ごとに伝えたいことが違うので記事単位で企画を考えてしまいがちですが、本とネット記事の中間のような存在のnoteだからこそ、本や雑誌のように丁寧に編まれたコンテンツを目標にするとより届きやすくなると思います。

「取材されたいテーマ」に人間味をプラス

では具体的にどんな企画を中心に据えればいいのか?私はいつも「直接届けようとしすぎず、何で取材されたいかをイメージして考えましょう」とアドバイスしています。

発信しているといかに直接届けるか、どんなコンテンツがバズるかを考えてしまいがちですが、これだけ情報が溢れている今、知らない人や企業が発信するコンテンツをわざわざ見てもらうのは至難の技。だからこそ自分たちで届けようとするよりも、「誰に届けてもらうか」を考えるべきなのです。

私がよくイベントで話すのが「この人にシェアされたら勝ち」ゲーム。まだフォロワーも少なくほとんど読まれていなかった頃に私が考案した効果測定方法のひとつです。

フォロワーや知り合いが少ない人が発信したところで、急にたくさん読まれたりスキがつくことはない。はじめから数を追ってしまうと内容がブレるし、自分の精神衛生にもよくないので、自分の身近な人の中で「この人がいいと言ってくれたらこの投稿は合格だ!」と一人の顔を思い浮かべて書く。もちろん本人にはその旨を伝えることなく、自然と目に止まって読み、シェアしたくなるほど「いい」と思ってもらえるものを出す。

影響力のある人ほど義理や損得ではなく純粋にいいと思ったものを紹介してくれるものなので、一人に刺さるものを書けばその人の周りの人に自然と広がり、その中でまたシェアしてくれる人が増えていく。noteに関わらず、継続した人気を獲得しているたちはみんなこのサイクルを丁寧に回している人ばかりだと思います。

企業の場合も同じで、まずは明確な「この人」に当てること。ただし、企業は個人と違ってはじめから知名度や影響力もあるので、メディアに取り上げられることを目指すのもありだと思います。

自分たちの業界関係のメディアはもちろんですが、ビジネスメディアやファッション誌など少し遠い存在のメディアから「このnoteに書かれている内容について詳しく聞きたい」と取材申込がくること。こうした明確なゴールイメージをもつことで、企画づくりやタイトルづけ、言葉の使い方も自然と定まり、より広く届きやすいコンテンツになります。

noteがきっかけでメディアに取り上げられた例は枚挙にいとまがありませんが、個人的に印象に残っているのは鮨ほり川さん。

ちょうど飲食店が一斉に閉まり応援の気持ちが高まっていた時期だったこと、「73歳で現役」「開業から45年」というインパクト、そして何よりご本人の熱量と人柄が伝わる内容だったこともあり、一気に拡散され新聞やテレビにも数多く取り上げられました。

鮨ほり川さんもそうですが、noteでは意外と初投稿でホームランをだすケースが少なくありません。「ゆくゆくは」と目標を謙虚にしすぎず、アカウント開設初期こそ毎回ホームランを狙うつもりで自分たちの業界や組織の面白い部分を全面に出していくべきだと私は考えています。

その際に気をつけたいのが、取材を意識しすぎるあまり自分たちの投稿自体がメディアの取材記事のようなかたい内容になってしまわないこと。ビジネスにまつわる話を書くときも、数字や仕組みばかりにフォーカスしすぎず、山あり谷ありの物語として表現するのがおすすめです。

メディアの取材や企業の公式HPのお知らせには載せられない「人間味」こそが読み手が企業のnoteに求める要素であり、自分たちにしか出せない情報でもあります。

たとえばぺんてるさんのシャープペンnoteは、「中の人」個人の圧倒的熱量と物語性が話題を呼びました。

このnote自体がより広く読まれたのはもちろん、自分の好きなシャープペンやシャープペンとの思い出を綴る個人のnoteも集まり、一気にコミュニティ化していく様子を見ながら私も驚いたのを覚えています。

企業ごとにイメージもあるのでキャラクターの出し方はそれぞれ調整が必要ですが、「整ったお知らせ」ではなく「人間味のある物語」として表現するのがnoteを軸にファンとコミュニケーションをとるポイントだと思います。

自分たちにとっての「当たり前」はネタの宝庫

個人であれ企業であれ、人と話していると「それnoteで書いた方がいいですよ!」が口癖になってしまっている私。そのたびに「えっ、こんな話が面白いんですか?」と驚かれるのですが、自分たちの当たり前こそが面白いネタの宝庫なのです。

業界では常識となっていることも、他の業界の人からすれば「そんな常識があるんですか!?」とズレがあるもの。このズレこそが学びや知的好奇心につながり、「もっと知りたい」という興味につながります。

とはいえ、長くその業界にいるとなかなか自分では「当たり前」に気づけないもの。

だからこそ他業界の人やまだ入社して日が浅い人と話したりして、自分たちにとっては当たり前でも他の人にとっては当たり前ではないことを見つける意識が重要です。

私も自分の専門外の人と話した際に驚かれたことはメモをとっておき、その気づきをベースに文章を組み立てています。同じ業界の人や専門家に囲まれていると「こんな初歩的なことを堂々と書いていいのだろうか」と感じてしまいがちですが、世の中の大半は初心者で自分たちにも業界にも興味すらないものだと思って「当たり前」から手をつけるのがおすすめです。

▼詳しい話は下記のnoteにも書いています。

外部の手を借りることなく自分たちだけで素敵なnoteを生み出している企業もたくさんありますが、自分たちの面白い部分を客観的に見て言語化してもらうという意味でライターさんや編集プロダクションの力を借りるのもひとつの手だと思います。また普段からメディアと関係性のある書き手や編集者であればメディアに取り上げられやすいテーマや書き方の勘所理解しているのはもちろん、メディアに直接アプローチできるケースもあるかなと。

自分たちらしさを出すためにはコンテンツは内製すべきだと考えがちですが、意外と外部パートナーを入れた方が「自分たち」の輪郭がはっきりする場合もあるのではないかと個人的には思っています。

「記事を書く場所」ではなく「集約場所」と捉える

以前「文章が苦手派」のクリエイター向けに、インスタやTwitterなどSNS投稿の集約場所としてのnote活用方法を書きました。

具体的な活用方法については記事を読んでいただければと思うのですが、noteは「文章を書く」ことだけに固執せず、「情報の集約場所」として捉えると活用の幅がグンと広がります。

私が特におすすめしているのは、定期的にお知らせや取材記事、SNSの発信をまとめたコンテンツを出すこと。

企業規模によって毎週、毎月、四半期ごとなど適したペースはそれぞれですが、人気のあった投稿や取材記事をまとめるだけでも立派にひとつのコンテンツになります。

また私は自分が主催したイベントのレポートを書く際には、感想ツイートをピックアップして埋め込み、前後にコメントをいれただけの記事を作ったりもします。イベントや実況は鮮度が命なので、時間をかけて丁寧に書くよりも粗い内容でもいいのでとりあえず30分で作ったものをサッと出した方が喜ばれるからです(後日落ち着いてから加筆修正したり、別途感想noteを書いたりもします)。

他にもたとえば新商品のお知らせ投稿をまとめて「今年の新商品を振り返る」と題した投稿をつくったり、SNSの投稿キャンペーンに応募された投稿をまとめて紹介するなど、「投稿の集約場所」として捉えると企画の幅が広がります。

そして何より調整や取材などのコストが少なくて済む!企画の切り口は工夫する必要があるものの、社内調整コストが少なくて済むコンテンツの型を持っておけば、より素早く読み手を飽きさせることもなくコンテンツを届けることができます。

ハッシュタグ企画はキャンペーンより通年で

ある程度発信が安定してくると、みんなやりたくなるのがハッシュタグ企画。しかしnoteは他のSNSに比べると投稿ハードルが高く、公式のコンテストやお題ではない自主企画のハッシュタグは応募数を集めるのに苦労することも。

より多くのクリエイターに参加してもらうための工夫として書きたくなるハッシュタグを考えるのはもちろんですが、時期を限定せず通年で投稿できるものにすることも重要だと私は考えています。

特にnoteの場合は企業アカウントが作ったマガジンに他のクリエイターの投稿を追加していくことができるので、数ヶ月間だけのキャンペーンで終わらせるのではなく、「このテーマについて書くなら、このハッシュタグをつければ○○さんが拾ってくれるはず」とクリエイターの中で定着すれば、複利的に投稿数も増えていきます。

その際、ハッシュタグにする文言も気を衒いすぎず、まずは企業名やブランド名のハッシュタグがつけられた投稿にスキを押したりマガジンにまとめたりして、すでに自発的に書いてくれているクリエイターに「自分たちがnoteにいること」を伝えることからはじめるのがおすすめ。

まずは知ってもらうこと、そしてファンになってくれた人が言及してくれること、さらに言及してもらった投稿を集めて可視化し、話題にしてくれる人の輪を広げていくこと。

ハッシュタグをキャンペーンで終わらせずムーブメントにしていくためには、このサイクルを回していく意識が大切です。

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細かいことをいうと他にもいろいろあるのですが、企業ごとに異なる点も多いので今回は共通するポイントだけを集めてまとめてみました。また何か気づきがあったら加筆するかも?

個別の相談もお引き受けしていますので、詳細については下記のnoteをどうぞ。

メディア経験者にとっては当たり前の初歩的なことばかりだと思いますが、意外とその「初歩」が知られていなくてもったいなさを感じることも多かったので、私なりに基本をまとめてみました。
このnoteがすてきなクリエイターのすてきなnoteがより広く届くためのお役に立てたら嬉しいです!

【おまけ】私が編集として入る際に伝えていること

最後におまけとして、私が編集する際によく話していることをまとめてみました。企業だけではなく個人でもビジネス系の記事を書く人には共通するところがあると思うので、何かの参考になれば。

私が文章を書く際に意識していることは下記の有料マガジンにもまとめています。


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