あえて忘れるしかけをつくる
誰にも習うことなく独学で文章を書き始めた私は、一般的でない手法をとっていることがあるようで、話していると時々驚かれることがあります。
そんなマイルールのひとつが、取材のときは録音しないということ。
話しながら手元のメモに文字通り "書き散らし"たものから重要だと思うポイントを拾って、記事に仕上げています。
はじめは録音していたものの、録音を聞きながら書き起こすのはあまりに手間がかかりすぎること、細かい言い回しよりもその記事の「核」を見つけて表現することが重要だと考え、思い切って録音をやめました。
すると必要最低限しかメモをとれない分、そのとき本当に自分が重要だと思ったことのみが強調されて手元に残り、スムーズに記事を書けるようになったのです。
特にインタビューは「その部分、もうちょっと詳しく教えてください」「それってどういうことですか?」と自分のペースで聞けるので、録音せずとも重要な部分は何度も聞き直すことができます。
反対にトークイベントは一度聞き逃したら終わりなのでいまだに録音しているのですが、そのたびに綺麗に再現しようとしすぎて編集する意識がなくなることを痛感します。
どうしてもそのままの言い回しに引きずられてしまうし、不要な部分をそぎ落とす作業が難しくなってしまうんですね。
聞きなおせば聞きなおすほど、どのパートもいれないと話の筋が通らないような気がして…。
だからこそ普段はインタビューで録音しないことによって、無意識に「そぎ落とす」作業をしていたのだな、と気付きました。
素材をありったけ集めた上で取捨選択してそぎ落とすことができる人もいると思いますが、私はどうも貧乏性というか集めたからにはどうにか使いたいと思ってしまうので、はじめから素材を必要以上に持って帰ってこないことを意識しなければならなのだ、と。
シンプルに伝わる文章を作るには、あえて忘れるしかけをつくるべきなのかもしれない、と、最近はそんなことを考えています。
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(Photo by tomoko morishige)
私のnoteの表紙画像について書いた記事はこちら。
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