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今週読んだ海外記事と雑感(2020.6.13)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
有料部分はニュースへの雑感です。

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「ミッション・ドリブン」が今、意味すること

アメリカで広がる「Black Lives Matter」はファッション企業にも影響を与え、ミッションドリブンなD2Cブランドを中心に意見を表明したり寄付キャンペーンを展開する企業が増えています。その一方で、エシカルを掲げながら創業者が黒人従業員に差別的な言動を繰り返してきたことが明るみに出たReformationのように、理想と現実が乖離してきたことで強いバッシングを受ける事例もあり、ミッションドリブンをマーケティング手法としてだけ捉える風潮に疑問を投げかけている記事です。最近では女性限定のコワーキングスペース「The Wing」でも人種差別問題が報道され、理想が崇高であったがために大きな反発を受けていました。
ミレニアル世代以下の若者層に対してエシカルやフェアネスを掲げたものづくりをすることは当たり前のことになりつつありますが、実態が追いついていないところも少なくないはずです。
日本でも、ユニクロがこれだけ成功している裏で労働環境の問題を抱えていたりと、規模が大きくなるほど理想通りにはいかない面が多々出てくるものです。もちろんすべて理想通りに綺麗な運用をできるのがベストですが、自社だけでなく業界の風習を含めた複合的な要因で理想通りにいかないことも多いため、単に理想を発信するだけではないコミュニケーションがこれから必要になっていくのではと思います。
ちなみにReformationのCEOは先日「I've failed.」と過ちを認め、黒人コミュニティへの寄付を表明し労働環境の改善も誓っています。
このように間違ったことを認め、正していく姿勢から生まれるブランドとしのレジリエンスこそがこれから重要になっていくのかもしれません。

この記事を読んで書いたのが下記のnoteです。

店舗再開が許可されたNY。ブランドたちの判断は?

今週月曜から店舗の営業再開が許可されたNYですが、日本とは異なり多くの店舗はまだ様子見の姿勢をとっているよう。やはりいまだ感染者数も7〜800人、死者数も50人弱で推移している中でファッションやコスメの店舗を開けるのはリスクが大きいと判断する店舗が多いのだと思います。またNYはD2Cブランドの旗艦店も多く、彼らは店舗に売上を依存していないため、わざわざ店舗を開ける必要がないことも大きいようです。
なお日本の場合は緊急事態宣言が解除された5月末から多くの商業施設が営業再開しているのことを鑑みると、店舗再開は宣言の解除よりも流行の深刻度によって変動する客足が大きなファクターになっていることを感じます。

直販を開始したStich Fixの新たな成長戦略

パーソナルスタイリングサービスのStich Fixがとうとう直販サービスを開始!これまではAIとスタイリストによってチョイスされたボックスを受け取って好きなものを購入する形式でしたが、Style ShuffleというTinderのようにアイテムの好き嫌いをチョイスする機能と直販ECを掛け合わせることで、自分の好みの商品だけがでてくるオリジナルセレクトショップを作ることができるようになりそう。
ちなみに4月の売上は昨年対比9%減と他のアパレル企業に比べると減少幅は小さく、さすがファッションテック界の優等生といった感じです。
個人的にもStitch Fixはテクノロジーの合理性とファッションセンスの感性のバランスが絶妙な企業だと思うので、彼らが目指す新たなECのあり方に期待しています。

投資家が今注目するファッションスタートアップとは?

この状況下でD2Cブランドへの投資も一気に冷え込んでいるものの、実は3、4月に1000万ドル以上の調達をした企業もちらほら。むしろ加熱しすぎてバブルになりつつあったD2C市場が正常に戻ったともいえそう。特に重視されているのは、「オーガニックでどれだけ顧客を獲得できているか」。これまでインスタ広告で売上を伸ばすのがD2Cのセオリーでしたが、極力お金を使わずに早い段階で利益を出していける企業は調達に成功しているようです。小売のセオリーとしては当たり前といえば当たり前ですが。。。
最後のパラグラフで投資を受けない選択肢についても言及されていますが、そもそも自己資金、借入、投資の選択肢を並列に並べて検討することなく出資を受ける考え方自体が危険なことなので、むしろ今回の投資の冷え込みは健全な発展に寄与するのではないかと個人的には思っています。

中国で進む「C2M」にラグジュアリーブランドは対応できるか?

D2Cの派生としてC2M(Consumer to Manufacturer)も注目を集めていますが、中国ではAlibabaやJD.comが工場にデータを提供することで工場の直接販売を支援。さらに靴などサイズデータが重要なアイテムは顧客ごとのサイズを蓄積し、オーダーメイドで製造する仕組みも整い始めているとのこと。
これまでのD2Cは商品の見せ方と中間を排して低価格に抑えるという点によって支持されてきましたが、サプライチェーン全体を革新することで大量生産ではないかたちのものづくりが実現できていくのではないかと思います。
たとえばAlibabaで商品を見つける→試着予約をして店舗で実物を見たり細かい計測をする→自分のサイズにぴったりの商品がオーダーメイドで作られて届く、といったような。そしてサイズデータはAlibaba上で蓄積されていくので、次回以降は自分にぴったりのサイズが届くだけでなく、「あなたの足型だとここに痛みがでるデザインかもしれません」のようなアラートがでるといった仕組みも作れるかも。
ダグ・スティーブンスの「小売再生」で、今後ファッションデザイナーの仕事はデザインデータを売ることになるかもしれないという予測が書かれていましたが、少しずつその未来に近づいているように感じます。

密かに成長を遂げるロシアのEC市場

https://www.voguebusiness.com/consumers/tapping-russias-booming-e-commerce-market

中国の影に隠れがちですが、ロシアも2015年から2020年の5年間でECの流通額が25億ドルから50億ドルへと2倍に成長しており、ラグジュアリーブランドもECサイトの準備を進めています。ただロシアではいまだクレジットカードに抵抗がある人も多く、ECへの不信感もあることから、専用のコンシェルジュが電話で案内をしながらECで購入してもらういったサービスを通して啓蒙しているフェーズとのこと。さらに流通網も安定しておらず、商品の破損も頻繁に生じているため、自分たちで流通網を整える必要がありそう。
とはいえ、まだECが定着していないからこそ他の国が導入に苦戦している最新の施策を取り入れられるのもつよみ。サンクトペテルブルクやモスクワでは、ECモールが運営する商品ピックアップのための店舗も運用開始されているようです。
ロシアはアメリカと同じく国土の広い国なので、顧客が慣れていけばECのポテンシャルは大きいのではないかと思います。

BestBuyが接客予約サービスを終了へ

5月にはじまったBest Buyの接客予約サービスですが、一ヶ月足らずで終了へ。店舗再開が許可されはじめたことで、接客予約よりも人数制限をしながら顧客に店舗を回遊してもらう方がよいと判断したようです。Best Buyの場合は特に仕入れて販売するモデルのため利益幅が薄く、30分の人件費を考えるとペイしないという判断は妥当ともいえそう。
ただ、来店前にチャットで相談できたり、事前に欲しいものを送った上で実物を見比べながら判断できたりとオンラインで先に買い物体験をはじめる仕組みはこれから広がっていくはずなので、別のかたちで接客予約も広がっていくのではないかと思います。

米国でもユーザー数を拡大する後払いサービスのKlarnaとは

スウェーデンの後払い決済サービスKlarnaがアメリカでも好調のようで、ユーザー数が785万人に。ECの需要が増えたことが大きな理由のようですが、1万店舗以上の実店舗でも導入されているとのことでECの枠を超えて決済方法のスタンダードになりつつあることを感じます。
個人的にはもはや最近カードではなくカード情報をスマホにいれてクイックペイを使うことで物理カードを使わない生活になりつつあるので、こうした後払いサービスがクレジットカードをリプレイスしていく未来を実体験として感じます。

オンライン市場でせめぎ合うLVMHとKering それぞれの戦略

https://www.voguebusiness.com/companies/lvmh-and-kerings-new-battlefield-is-online-covid-19

ラグジュアリーブランドの二大勢力であるLVMHとKeringのオンライン戦略の違いが面白い。Keringは傘下に持つYNAPの資産をフル活用してグループブランド全体に適用してきた一方、LVMHはブランドそれぞれに合った施策を適用。どちらがよいという結論は記事には書いていませんが、Kering傘下の中ではGucciが成功事例で、グループ全体のオンライン売上比率が7%の中でGucciは10%がオンラインでの売り上げとなっているようです。
またラグジュアリー市場全体のオンライン比率は2019年の12%から今年は15〜17%へと拡大する見込みとのこと。2025年には30%に達することが予測されています。
特に顕著なのが中国市場で、消費者のリテラシーも高いため、TmallやJD、Wechatとの施策によって得た知見を他の国でも広げていくのが今後の基本戦略になるのではないかと思います。

動画配信サービスは次のショッピングプラットフォームとなるか?

Netflixをはじめとする動画配信サービスがエンターテイメントのひとつとしてショッピング機能を強化していく未来予測の解説。特に面白かったのはNetflixがとある番組で、主人公が食べるシリアルを視聴者に選ばせる機能をすでに実験済みということ。番組にでてきたモノが買えるだけでなく、番組内に登場するモノ自体を視聴者が選ぶことでゲーム性が上がる上にブランドエンゲージメントも高まる効果があるのでは?と思います。ある意味、あつ森の着せ替えにブランドがこぞって進出したのと根底は同じともいえるかもしれません。
記事にもありますが、ストリーミングサービスはコンテンツ再生時に広告を一切入れずとも運営できるビジネスモデルがTVと大きく異なる点です。つまりプラットフォーム側が広告主に対して強気に出られるため、単にブランドの商品を宣伝するためだけの取り組みではなく、視聴者がよりコンテンツを楽しむための対等なパートナーとしてタイアップできる点がクリエイティブの自由度を上げているように感じます。
動画とショッピングの関係性において重要なのは「番組に出ている商品が買える」という仕組みの問題ではなく、コンテンツ単体の質を高めるためにショッピングという機能をどう絡めるかという点であり、ストリーミング各社はその最適バランスを探っている途中であると言えるのではないかと思います。

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今週はC2MのニュースとNetflixのニュースを読んで思ったことをば。

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