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「いちばんすきな花」で描かれたこと、描かれなかったこと(描いてみてほしかったこと)

すでに一月期のドラマが始まっているこの時期に、遅ればせながらドラマ「いちばんすきな花」の話。

もともと「silent」が好きだったのもあり、とても楽しみにしていたし実際に楽しめたドラマだった。内容とは別に、メインテーマの曲もとてもいいなあと思って調べていたら、サウンドトラックも「silent」と同じ方が担当されていてびっくり。さらによくよく見たら、私の大好きな「いつかこの恋を思い出して、きっと泣いてしまう」「アンナチュラル」「石子と羽男」も同じ方がサントラを作曲されていたーーーーーー!!!私の好きなドラマのサントラはすべて得田さんが作曲していると言っても過言ではない(過言)。

閑話休題。

「silent」は王道な恋愛要素の強いドラマだったけれど、「いちばんすきな花」は男女の友情がメインテーマとして据えられていたのもあって、自分ごととして考える機会が多い私としてはとても楽しみにしていた。少女漫画のようなピュアな恋物語にときめくのも好き。でも自分ごととして楽しめる物語ではないな、と思ってしまう部分もある。ので、もっと自分に身近な物語として楽しめそうだな、と。

個人的に一番刺さったのは、序盤でゆくえちゃんが赤田から「友達としての別れ話」を切り出されるところ。実際にはこんなふうに言語化されることの方が少なくて、大抵の場合は友情の終わりを宣告されることなくいつのまにか疎遠になっていく。時間やライフスタイルが合わなくなって、とかではなくて、どちらかの恋人が二人の友情に難色を示して、でもそれを相手に直接伝えるには忍びなくて、「恋人ができたんだよね」という情報をシェアしつつ、徐々に会わなくなっていく。それがリアルな「男女の友情の終わり」だと思う。

なので、はっきりと友人としての別れ話をされるというシーンは新鮮だったし、その後の話でもたとえば普通のラブコメだとよくあるような「実はどちらかがもう一方のことを好きでした」的な展開もなく、本当に心から友人として付き合ってきたことが伝わってきて、だからこそ勝手に私まで切なくなってしまった。

恋愛か友情かに関わらず、「この人にしか埋められないもの」って、ある。私はわりと人の数だけとくべつがあるタイプなので、赤田みたいな親友を失ったらそのショックは計り知れないだろうなあ、と想像する。二人で会わなければいいじゃないと人は簡単に言うけれど、誰か別の人が加わってしまったら二人のときと同じように話せないことって、たくさんある。別に恋人のわるぐちとか不満を話しているわけじゃなくて、二人の間だったら何の説明もいらずに通じていたことも、いちいち説明をいれないと三人では会話を楽しめないわけで。

なんて思っていたら、後半で赤田の奥さんから「そもそもそれが嫌なんだよ」とひっくり返されて仰天した。

この感覚、私にはまったく意味不明だったのだけど、どうやら共感する人の方が多いらしい。びっくり。恋愛感情の有無ではなくて、自分以外の「とくべつ」がいることが許せない、という感覚。な、なるほど!!!

他にも夜々ちゃんの抱えるコンプレックスとその昇華とか好きな部分はいろいろあるのだけど、個人的にはそういう「描かれていたこと」への考察や感想とは別に、「描かれなかったこと(描いてみてほしかったこと)」がいくつかあったドラマだった。

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思索綴

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