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今週読んだ海外記事と雑感(2020.3.14)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
文末の有料パートは海外記事の解説です。

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ドラッグストアはイギリスコスメ市場の主戦場となるか?

ロンドンにおけるコスメ売り場としてのドラッグストアの盛り上がりについて。イギリス人の90%はドラッグストアから10分以内の場所に住んでおり、その利便性が人気の秘訣のよう。これは日本も同様で、「デパコス」に並んで「ドラコス」が人気なのは、思い立った時にすぐに買いに行ける気軽さが大きいような気がしています。
そして日本でもドラッグストアは薬や日用品以上にコスメが占める面積が大きくなりはじめており、コスメ売り場としての地位を固めつつあります。
個人的には、今後ドラッグストアが薬剤師のようにコスメエキスパートを独自で雇い、顧客にあう商品をおすすめできるようになるとより面白くなっていきそうな気が。YoutuberやInstagramerと歩合制の契約を結ぶのもひとつのあり方だと思います。
デパコスはどうしてもブランドとのしがらみが多いため、百貨店主導のコスメコンシェルジュはなかなかワークしていない印象ですが、デパコスならそうしたしがらみも少なくやりやすいのではないかなと。
その上で、ゆくゆくデパコスアイテムもオンライン注文すれば店頭でお試し&商品受け取りができるようになっていくと、コスメ売り場としての地位がより強固なものになっていきそうです。

レンタルプラットフォームのプラン戦略

In a crowded rental market, platforms are betting on new subscription tiers to stand out – GlossyTwo years ago, fashion rental company Le Tote phased out itswww.glossy.co
競争が激化するファッションレンタル市場において、新たなプランを追加する際の戦略を論じた記事。特にRent the Runwayが開始して人気をはくした「Unlimited」プランは、流通が混乱しやすいため安易に手を出すとLe toteのように一時撤退せざるをえないという話は教訓として覚えておくべきことだと思います。
今のところはRTRが業界最王手の地位にいますが、ファッションレンタルはあくまで他社の商品を仕入れて組み合わせるだけなので違いが出しづらく、どうしても価格競争に陥らざるをえない背景があるのも事実。これはECプラットフォームと全く同じ図式だと思います。
いかに流通の仕組みでより「借りたいものを借りやすく」できるか。
そのための投資や経験値という意味でも、そろそろ主要なプレイヤーは揃い、ここから新規参入するのは厳しい状況になってきているような気がします。

Aerieが物販からコミュニティに軸を移す理由

ミレニアル世代に人気のランジェリーブランド・Aerieが物販からイベント開催を通したコミュニティ形成へと移行しつつあるという話。$25のトークイベントチケットを300人分販売するなど、ブランド発のイベントとしてはすでにかなり集客できているもよう。ここでポイントなのが、単にイベントを開催するだけではなく、共通のスローガンとしてのハッシュタグ(Aerieの場合は#AerieReal)で投稿された写真を公式アカウントで紹介し、インフルエンサーのエンゲージメントも高めているのがポイント。
イベントもアンバサダーと呼ばれるブランドの熱烈なファンが主体となって運営しているようです。
Goopもカンファレンス方のイベントに注力し始めていますが、ブランドや商品を起点としたコミュニティ形成こそが今後ブランドに求められていくものなのかもしれません。

Amazon GOの仕組みを外部企業へ販売開始

AmazonがAmazon GOの仕組みを「Just Walk Out service」として外部店舗に販売開始。すでにいくつかの店舗と契約済みとのこと。今後Amazon GOのように支払いの工程なしで決済できる店舗が増えていくかもしれません。一方で、リアル店舗の情報もAmazonに握られることをどう考えるか、という懸念もあります。
おそらくゆくゆくはb8taのように店舗での顧客の目線や行動を記録してマーケティングデータを店舗に提供するというところまでいくのだと思いますが、店舗での売れ筋データや顧客属性もすべてとられるということなので、Amazon GOの出店計画やPBづくりにつながっていくことまで考えると導入にはまだまだ賛否両論のある施策かなと思います。

データ偏重主義がファッションにもたらすもの

StichFixがPBを複数持っていたことをはじめて知った…!のですが、PBのデザイナーによる「StichFixの商品は元のデザインを薄めたものでしかない」という話は今後小売企業がデータと付き合っていく上での課題を端的に表しているように思います。
特にStichFixはデータを重視していることで有名ですが、最大公約数に売れるものを作ろうとするとどうしても特徴のないものにならざるをえず、ブランドとしてのエッジは削られていきます。
一方で、データはあくまで過去の行動の延長しか示してくれません。記事の最後に「赤いドレスが売れたらそれ以外のものを売ろうとしなくなる」と表現されていますが、Googleの20%ルールのようにある程度データを無視して新しく挑戦することを許容しなければ、結局誰にも選ばれないものになってしまうのではないかと思います。

「焼却廃棄」以外の不良在庫の処分の仕方

以前在庫の焼却で話題になったBurberryが、過剰在庫を求職中の女性を支援するNPOに面接用の洋服として寄付しているという話はもっと知られてもよいのではと思います。さらにLVMHは在庫の一部をファッション系の学校に教材として寄付する活動も行っています。
フランスではBurberry騒動を受けてか大手企業の在庫焼却を禁止する法律も制定。今後企業の過剰在庫の扱い方はひとつの課題になっていきそうです。
一方で、シーズンに作られる洋服のうち1割ほどが過剰在庫となっているファッション業界において、すべてを寄付すれば解決というわけではなく、またすべてのアイテムが寄付に向いているわけでもありません。
製造数を少なくするとしても、需要を完璧に予測するのは不可能であり、売れなくてもアイコンとして存在するアイテムも一定数ある以上、在庫の処遇をどうするかは難しい問題。
「これをやれば解決する」という答えがないからこそ、見せ筋のアイテムは受注生産にする、生産リードタイムを短くして在庫数を最小限にキープするといった積み重ねで無駄な商品を出さないようにするしかないのかな、という気もします。

ニーマン・マーカスが所有するアウトレット店舗を大量閉鎖へ

ニーマン・マーカスが所有するアウトレット施設を大量閉鎖へ。売上の40%を占めるという年間購入額1万ドル以上の顧客に注力し、高級百貨店としてのブランドイメージを立て直すことを目的にしているとのこと。一時期、百貨店が不良在庫の処分先たしてアウトレットを作るのが流行った時期がありましたが、規模が大きくなりすぎてアウトレットで売るための商品を作らなければならない状況になり、そこでの顧客が本家の顧客にエスカレーションすることがないことから、選択と集中を決断したもよう。
アメリカの百貨店の場合はすべて在庫買取のためこうしたことがおきますが、日本の場合だとブランドが今後こうした決断をとるケースが増えるのではないかと思います。

なぜWebメディアが紙の雑誌を作るのか?

オンラインのメンズファッションメディア「Highsnobiety」が紙の雑誌「Highstyle」を発売開始。16.99ドルと雑誌にしてはなかなか高価ですが、紙の雑誌はリアルなものに対してノスタルジーを感じるインスタ世代に刺さりやすいアイテムのひとつなのかもしれません。
一方で、紙面の作り方としてはインスタを意識しているところが面白い。「インスタでならどうデザインするか」が紙面デザインの判断基準という話は、日本でいうとViViも近い発想なのではないかなと思いながら毎月読んでいます。
雑誌やCD、レコードなどの人気が高まる一方で、これらの人気はあくまでデジタル施策による中身の人気があった上で、フォーマットとしてレトロでアナログなものがウケているという見方が大事かなと。
オンラインで作られたファンへのリアルなアイテムとしてのモノの消費、という図式は今後も増えていきそうです。

「サスティナブル」は商品から店舗デザインへ

商品だけではなく、店舗づくりにもサスティナビリティの流れ。サスティナブランドの代表格・Vejaが昨年10月、今月3日にそれぞれパリ、NYにオープンした店舗では壁に塗料を使わず、電力も100%再生可能エネルギーを活用。創業者たちが社会経済学を専攻しビジネスの面から環境にアプローチしたいという哲学を持っているだけあって、すべての活動に一貫性があり、こうしたこだわりがブランドの支持者を増やしている要因だと思います。
またLUSHが包装ゼロのお店をオープンしていたとは初耳。ユニクロもビニール袋をゼロにするとった取り組みをしていますが、店舗における環境配慮の活動は今後さらに活発化していきそうです。

女性起業家をとりまく環境のリアル

D2Cやコミュニティベースのビジネスへの盛り上がりもあってこの数年で一気に増えた女性起業家ですが、昨年あたりから辞任や訴訟が増えていることについて考察した記事。女性創業者はブランドのアイコンとしてインフルエンサーも兼務することが多く、企業の実態が理想と乖離していることがわかった瞬間に顧客が離れていく、という話は日本でも同じことがいえそう。
またスタートアップならではの職場環境の整っていない状態も、女性創業者ほど「女性の働きやすさに配慮して当たり前」という風潮があるため、それが整っていないだけで叩かれやすいという問題点も。「男性並に結果を出しつつ、女性の働きやすさにも配慮する」という超人的な理想を押しつけた結果、女性の活躍を阻害しているのは果たして誰なのか、という点について私たちは今こそ考えるべきなのかもしれません。
さらに、アメリカですらも女性起業家への出資は全体の3%弱にすぎないという話も衝撃。もちろんこれは男女の観点のみでみるべきではありませんし、そもそも投資をのぞむ女性起業家が少ないという背景もあるかもしれませんが、男性起業家に比べて女性が背負う負担はまだまだ大きいことを実感します。

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今回は、日々海外ニュースをチェックする中で感じた「参考にすべきこと、参考にならないことの見極め」についての話。

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