コントロールされる欲望
Netflixの「History101」というオリジナルシリーズにハマって最近よく観ている。
初回テーマがファストフードだったのだけど、一番驚いたのが「この50年でハンバーガーの平均サイズが3倍近く大きくなっている」ということだった。
In 1954, an average hamburger is 3.9 ounces. In 2006, on average, they're three times bigger, a whopping 12 ounces. <字幕より>
ちなみに現在では1リットル近くあるサイズで提供される炭酸飲料も、50年前は平均200cccほどだったのだという。
アメリカに行くたび食事量の多さに驚かされるけれど、もとからあのサイズだったわけではなかったことに驚かされた。
ではなぜアメリカのファストフードはこんなにも巨大化してしまったのか。その理由は資本主義の加熱にある。
サイズが大きくなればなるほど人気が出たため、新メニュー考案のたびにボリュームのあるメニューが追加される。その結果、平均サイズはどんどん巨大化していく。
ビジネス視点で見ても、小さなポーションでたくさん回すよりもサイズの大きいモノを作って売る方が生産性が高い。アメリカにおけるファストフードの巨大化は、資本主義と呼応しているといっても過言ではない。
しかしその結果として、アメリカは世界有数の肥満大国になってしまった。企業が「売れるもの」を作り、消費者が「欲しいもの」を消費し続けた結果、健康という資本を毀損し医療費を引き上げる。この流れを客観的に見てみると、私たちは何にお金を払っているのだろうと考えさせられる。
「売上を作れるかどうかがすべて」。
ビジネス視点でみると、この価値観が正義とされることが多い。
企業が大きなリニューアルをしたり新しい挑戦をした際、「売上が増えたかどうかで判断すべき」という意見も多い。
営利企業である限り企業が利潤を追求するのは当然のことではあるが、今後求められる社会的責任とは、ファストフードの巨大化のような「資本主義の加熱による弊害」にどう抗うかなのではないかと思う。
お金に色はないとはいえ、売上に占める「本当の幸福度」を高めることなしに、長く支持されるブランドは築いていけないのではないだろうか。
SDGsやサスティナブル、ダイバーシティなどの言葉が飛び交う昨今だが、重要なのは本業がいかに社会的価値を作っているかどうかである。本業において長期的に顧客の幸福を毀損しながら、とってつけたようにCSR的な活動をしても意味がない。
顧客の欲望をコントロールして売上を伸ばすのではなく、顧客の幸福を最大化させるための方法を考えること。
真の社会的意義とは、こうした利他の姿勢から生まれるものなのではないかと思う。
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