英語の性別を問わない敬称【Mx.】及び日本語の性別を問わない敬称【さん】の翻字について
12月24日はクリスマスイブです。
性別を問わないサンタクロースであるミクスクロース《🧑🎄》―フィンランド語では〈Tonttu〉[トンットゥ]と呼称―がユニコード絵文字で対応されていますが、サンタクロース《🎅》や女性のサンタであるマザークリスマス《🤶》と異なり、人間《🧑》とクリスマスツリー《🎄》のZWJ合成による絵文字となっています。
ミクスクロースのミクスは英語に性別を問わない敬称〈Mx.〉に由来します。
今回はミクスクロースのミクスにちなみ、性別を問わない敬称における各種言語の翻字について取り上げます。
いろいろな言語で“ミクス”
英語における性別不問の敬称〈Mx.〉は各言語で発音の系統が異なるものになっています。
ミクス[mɪks]由来
本来は性別を問わない敬称として生まれた〈Mx.〉は単語〈Mixter〉[ˈmɪk.stɚ ミクスター]という敬称の第1音節から派生したものです。
スロバキア語でミクスクロースは〈Mx Santa〉[ミクスサンタ]と呼称されます。
【Mích】ベトナム - クォック・グー字母名の組み合わせ〈Em-mờ-ích-xì〉からの推測。
【Miks】ウズベク
【Микс】ほとんどのキリル文字使用言語
【Мікс】ウクライナ、ベラルーシ
【Միքս】アルメニア
【მიქს / ᲛᲘᲥᲡ / Ⴋⴈⴕⴑ】ジョージア
【מיקס】ヘブライ、イディッシュ
【ميکس】アラビア、パシュトー
【میکس】ペルシア、ウルドゥー
【مىكس】ウイグル
【မစ္စ်】ビルマ
【มิกซ์】タイ
【ມິກ】ラオ
【米克斯 / Mǐkèsī】中国
【米克斯 / ㄇㄧˇㄎㄜˋㄙ】台湾華
【믹스】韓国
【ሚክስ】アムハラ
マクス[mʌks/məks]由来
英語表記は〈Mux〉で、曖昧母音及びそれに近い母音で、ノンバイナリーの敬称であることを伝える要素となっています。
【Maks】トルクメン
【Мъкс】ブルガリア
【Մաքս】アルメニア
【מקס】ヘブライ
【ماکس】ペルシア
【مكس】アラビア
【مڪس】シンド
【मक्सु】シンド
マックス[mæks]由来
マクスは発音に近い表記で〈Mux〉とされるのですが、インド諸言語では〈Max〉[mæks マックス]系と解釈している傾向が多いようです。
【ମେକ୍ସ୍ / ମେକ୍ସ】オリヤー
【मॅक्स】コンカニ
【मेक्स】ネパール
【মেক্স】アッサム
【ম্যাক্স】ベンガル
【மேக்ஸ்】タミル
【మాక్స్】テルグ
エムエックス[ɛm.ˈɛks]由来
英語ラテン文字の字母名で読む方式で、インド諸言語によく見られる傾向です。
【އެމްއެކްސް】ディベヒ
【एमएक्स】ヒンディー
【ਐਮਐਕਸ】パンジャブ
【એમએક્સ】グジャラート
【𑂉𑂧𑂉𑂍𑂹𑂮】ビハール/ボージュプリー
【𑠆𑠢𑠆𑠊𑠹𑠩】ドーグリー
【ಎಂಎಕ್ಸ್】カンナダ
【എംഎക്സ്】マラヤラム
略語
英語ラテン文字の略語を別文字体系に置き換えた形式です。
【Μχ】ギリシャ - ミクスクロースは〈Μχ Κλάους〉[ミヒ・クラウス]。
【ⲙⲭ】コプト
【Мкс】ほとんどのキリル文字使用言語
【Мѯ】古代教会スラブ
【מקס】イディッシュ
【𐑥-】イギリス英 - シェイヴィアン文字表記で性別を問わない略称としてマイム《𐑥》とハイフン《‐》の組み合わせが使用される。
いろいろな言語で“~さん”
ユニコードコンソーシアムのCLDRにおける“MX CLAUS”の日本語名は【サンタさん】とされていて、性別を問わない敬称が含まれています。
日本語の“さん”由来の英語における性別を問わない敬称で〈-san〉が採用されていますが、日本人及び日本語話者限定で使用されるようです。
日本語の訓令式ローマ字における本来のルール( https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/01/bukai09/01.html を参照 )ではヨーロッパ諸言語の敬称表記に合わせて大文字の〈-San〉で表記されます。
敬称の“さん”の漢字表記は《賛》で、“~さんへ”を〈~賛江〉と表記する場合に用いられます。
【-san】ほとんどのラテン文字使用言語
【-san / -𐑕𐑭𐑯】イギリス英[-sɑːn サーン]
【-san / -𐑅𐐪𐑌】アメリカ英[-sɑːn サーン]
【-sana】ハワイ - 実際の発音は[カナ]で、クリスマスの〈Kalikimaka〉[カリキマカ]のようにサ行音がカ行音に変化したもの。
【-sangh / -saŋƅ / -桑】チワン
【-sano】エスペラント - エスペランチストの“同志”の意の〈Samideano〉[サミデアーノ]に由来する敬称略語〈S-ano〉[サーノ]が存在。
【-saan】フィジー・ヒンディー
【-sánì , -sànì】ヨルバ
【-szan】ハンガリー
【-hana】マオリ
【-xan】ベトナム
【-ßan】リプアーリ
【-σαν】ギリシャ
【-ⲥⲁⲛ】コプト、ヌビア
【-𐍃𐌰𐌽】ゴート
【-сан】ほとんどのキリル文字使用言語
【-санъ】古代教会スラブ
【֊սան】アルメニア
【-სანი / -ᲡᲐᲜᲘ / -Ⴑⴀⴌⴈ】ジョージア
【-ᏌᏂ / -sani】チェロキー
【־סאן】ヘブライ、ラディノ
【־סאַן】イディッシュ
【־סן , ־סָן】ヘブライ
【سان】ほとんどのアラビア文字使用言語
【سەن】ウズベク
【سَن】タジク
【ސަން】ディベヒ
【ܣܢ】アッシリア現代アラム
【-ᠰᠠᠨ】満州
【-ᠰᠠᠩ】モンゴル、シボ
【-ᠰᠠᡊ】オイラート
【-सन् / -𑌸𑌨𑍍】サンスクリット
【-सान】ヒンディー、ネパール、マラーティー、ボド、ドテリ
【-सान्】ネパール
【-চান】アッサム
【-সান】ベンガル
【-ਸਾਨ】パンジャブ
【-་སང་ , -་སང།】チベット
【-་སཱན་ , -་སཱན།】ゾンカ
【-𑖭𑖡】仏教梵
【-𑐳𑐵𑐣】ネワール
【-ꯁꯥꯟ】マニプーリ
【-સાન】グジャラート
【-𑂮𑂰𑂢】ビハール/ボージュプリー
【-𑒮𑒰𑒢】マイティリー
【-𑠩𑠬𑠝】ドーグリー
【-ସାନ୍ , -ସାନ】オリヤー
【-ᱥᱟᱱ】サンタル
【-சான் , -ஸான்】タミル
【-సాన్】テルグ
【-ಸಾನ್】カンナダ
【-സാൻ】マラヤラム
【-සන්】シンハラ
【-ဆန်】ビルマ
【-သင်း】シャン
【-သန်း】パオウ
【-သာန / -Sāna】パーリ
【-သာန်】モン
【-ᨪ᩠ᨦᩢ】カム・ムアン/ラーンナー
【-ᦌᦱᧃᧈ / -ᨪ᩠ᨦᩢ᩵】タイ・ロ
【-𑄥𑄚𑄴】チャクマ
【-សាន】クメール
【-ซัง】タイ
【-ຊັງ】ラオ
【-ꦱꦤ꧀】ジャワ
【-ᬲᬦ᭄】バリ
【-ᮞᮔ᮪】スンダ
【-ᨔᨊ】ブギス
【-ᜐᜈ᜔】タガログ/フィリピノ
【-ᜰᜨ᜴】ハヌノオ
【-ᝐ】ブヒッド
【-ᝰ】タグバヌワ
【-桑 / -sāng】中国
【-桑 / -ㄙㄤ】台湾華
【-桑 / -song¹】広東
【-桑 / -sáng, -sàng】台湾
【-桑 / -san】上海
【-生 / -saang¹, -sang¹】広東
【-상】韓国
【-산】チアチア
【-さん】沖縄
【-はん】関西弁
【-サン】アイヌ
【-ሳን】アムハラ、ティグリニャ
【-ⵙⴰⵏ】アマジグ
【-ꕢꘋ / -saŋ】ヴァイ
【-𖫒𖫧𖫰𖫐 , -𖫒𖫧𖫱𖫐】バサ
【ߛߍߒ】マニンカ
【𞤧𞤢𞤲】フラニ
【-ᓵᓐ / -saan】イヌイット