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津軽弁などの指小辞《コ》と小書き仮名文字コ

10月23日は青森県の津軽弁の記念日である津軽弁の日です。

津軽弁は日本語の標準語と大幅に異なる方言であることから、岩手県のケセン語のように“津軽語”という独立した言語である動きが出てきていて『津軽語辞書』( http://tgrb.jp/dic/ )というサイト公開されています。

令和4年9月13日にユニコード15.0で小書き仮名文字KOが採用されました。
津軽弁のカタカナ表記では小文字の《》を小文字にして表記する方式が見られます。

今回は津軽弁における指小辞である《》について取り上げます。

小書き仮名文字KOについて

小書き仮名文字KOとは、ひらがなKO》及びカタカナKO》の小文字で、アドビ文字コードに含まれている略記用小文字です。

ユニコード15.0で、U+1B132 HIRAGANA LETTER SMALL KO𛄲》とU+1B155 KATAKANA LETTER SMALL KO𛅕》が採用され、共にネット上でフォントとブラウザに対応していれば使用できるようになり、対応フォントは和田研細丸ゴシックシリーズ(※トップ画像に使用)やにしき的フォント, Xim Sansシリーズなどがあります。

原則的に小書き仮名文字KEゖ・ヶ》[ka カ/ŋa~ɡa ガ/ko コ]と同じく漢字《個・箇》に対応し、個数の意で明確的に[ko]と発音する場合に対し用いられ、1個が〈1𛅕〉と書かれます。

津軽弁における用法では東奥日報社・刊『青森県百科事典』で、【屁ふり爺𛅕】【飯食われ嫁𛅕】などの項目見出しや文章に見られ、ひらがな表記による読み仮名にも小文字の《》が使用されていて、津軽弁独自の文字表記として伝えているものになっています。

津軽弁など日本語の方言における前鼻母音・鼻母音の表記に必要な小書き仮名文字N[˜ ン]は、ユニコード12.0でカタカナの U+1B167 KATAKANA LETTER SMALL N𛅧》のみが採用されたのですが、日本語や琉球語の諸方言表記で多用されているひらがな小文字は未採用となっている状況です。

発音仮名表記では白水社・刊『ニューエクスプレス・スペシャル日本語の隣人たちⅡ』の【シベ語】のページで、シベ語の語末における[q]音を示すためにコの小文字を採用しているケースが見られます。

津軽弁などの指小辞《コ》について

日本語の東北方言道南方言では指小辞として単語の語尾に〈-〉[-.ko]あるいは〈-ッコ〉[-.kːo]が使用され、本来は小さいものや親愛なものに対する名詞語尾の役割で、現在は名詞接尾語を示す役割を担っています。
》あるいは《》が由来と思われます。

指小辞《》の漢字表記は《》あるいは《》と思われ、前者は中国語〈-zi〉[-d̥z̥z̩ ヅ]やその派生である台湾華語〈-˙ㄗ〉[-d̥z̥z̩ ヅ]と意味が近く、後者は台湾語〈〉[-a˥˧ ア]や広東語〈-zi²〉[-ʦiː˧˥ ヅィー]と意味が近いものになっているのが奥深いです。

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北海道弁・道南方言で、外来語の指小辞では〈ッコ〉が使用される傾向があります。

・アイスッコ【アイス𛅕《🍦》】[æ.sɯ̈.kːo アェスッコ / ai.sɯ̈.kːo アイスッコ] - 道南方言。
・あせコ【汗𛅕《💦》】[a.çe̝.ko アヘコ]
・あぶらッコ【油𛅕《🛢️》】[a.m̆bɯ̈.ɾa.kːo アンブラッコ]
・あめコ【雨𛅕《☔》】[a.me̝.ko]
・いぬコ【犬𛅕《🐕》】[e̝.nɯ̈.ko エヌコ]
・うたコ【歌𛅕《🎤》】[ɯ̈.da.ko ウダコ]
・おにコ【鬼𛅕《👹》】[o.ɲï.ko オニコ]
・かぎコ【鍵𛅕《🔑》】[ka.ŋï.ko カキ゚コ]
・かぜコ【風𛅕《🍃》】[ka.ɲ̆ʤe̝.ko カンジェコ]
・こめッコ【米𛅕《🍚》】[ko.me̝.kːo]
・さけッコ【鮭𛅕《🐟》】[sa.ke̝.kːo]
・じッコ【爺𛅕《👴》】[ʣï.kːo~ʣɯ̈.kːo ジッコ~ズッコ]
・すしッコ【鮨𛅕《🍣》】[sï.sï.kːo~sɯ̈.sɯ̈.kːo ススッコ]
・ぜんコ【銭𛅕《🪙》】[ʤe̝ŋ.ko ジェンコ]
・つめコ【爪𛅕《💅》】[ʦɯ̈.me̝.ko~ʦï.me̝.ko]
・てッコ【手𛅕《✋》】[te̝.kːo]
・なべッコ【鍋𛅕《🍲》】[na.m̆be̝.kːo ナンベッコ]
・はるッコ【春𛅕《🌸》】[ha.ɾɯ̈.kːo]
・ほんコ【本𛅕《📕》】[hoŋ.ko]
・むかしコ【昔𛅕《🕰︎》】[mɯ̈.ɡa.sï.ko~mɯ̈.ɡa.sɯ̈.ko ムガシコ~ムガスコ]
・めがねッコ【眼鏡𛅕《👓》】[me̝.ŋa.ne̝.kːo]
・よめコ【嫁𛅕《👰‍♀️》】[jo.me̝.ko]
・りんごッコ【林檎𛅕《🍎》】[ɾïŋ.ŋo.kːo リンコ゚ッコ]