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インド系文字などにおけるGHANAの〈GH〉の翻字

ツイッターでは #TwitterGhana#TeamGhana といったガーナ共和国《🇬🇭》関連のハッシュフラッグが目立っているのですが、ロッテのガーナチョコ🍫のツイッター絵文字や #プレミアムガーナ などのバレンタイン期間限定のハッシュフラッグも登場して注目されています。

今回はインド系文字などにおけるガーナの【Ghana】に含まれる〈GH〉の翻字について取り上げます。

インド系文字などの有声有気音によるGH表記

インド諸言語では英語の語頭の〈GH〉は有声有気音GHA《》[ɡʰ ガㇵ]で表記される傾向があります。

𑀖𑀸𑀦𑀸】ブラーフミー文字:パーリ[ガーナー]
घाना】デーヴァナーガリー文字:ヒンディー[ガーナー]、サンスクリット、ネパール[ガナ]、マラーティー
ग्हाना】デーヴァナーガリー文字:ロマーニー[ガーナー] - ロマーニー語デーヴァナーガリー文字に本来のGHA《》が採用されていないため、GA《》とHA《》の合字で示す。
ঘানা】ベンガル文字:ベンガル[ガナ]、アッサム、ビシュヌプリヤ
ਘਾਨਾ】グルムキー文字:パンジャブ[カーナー] - 語頭は高声調を含む無声無気音KA[kə˥ カ]となっている。
གྷ་ན་ ; གྷ་ན།】チベット文字:ゾンカ - 有声有気音GHA《》はGA《》とHA《》の合字となっている。チベット語では〈ཀ་ན་ ; ཀ་ན།〉[カナ]。
ꯘꯥꯅꯥ】マニプーリ文字:マニプーリ[ガーナー]
𑖑𑖯𑖡𑖯】悉曇文字:仏教梵[ガーナー]
ઘાના】グジャラート文字:グジャラート[ガーナー]
𑂐𑂰𑂢𑂰】カイティー文字:ビハール[ガーナー]
𑅘𑅐𑅧𑅐】マハージャニー文字:ヒンディー[ガーナー]
𑘑𑘰𑘡𑘰】モジ文字:マラーティー[ガーナー]
𑒒𑒰𑒢𑒰】ティルフータ文字:マイティリー[ガーナー]
ଘାନା】オリヤー文字:オリヤー[ガナ]
ᱜᱷᱟᱱᱟ】オルチキ文字:サンタル[ガナ] - 有気音はOH》[オホ]を子音字の後に置いて示す。
𑃕𑃠𑃢𑃙𑃢】ソラング・ソンペング文字[ガナ] - 有気音はJAH𑃠》[ヂャ]を子音字の後に置いて示す。
𑢫𑣙𑣁𑣓𑣁, 𑢫‍𑣙𑣁𑣓𑣁】ワラング・クシティ文字[ガーナ]
கா⁴னா】タミル文字:サンスクリット - タミル語では有声有気音を示す字母が存在しないため〈கானா〉[カーナー]でガーナを示す。サンスクリット表記用の上付き数字付きK行字母は、KHAக²》[kʰ カㇵ], GAக³》[ɡ ガ], GHAக⁴》[ɡʰ ガㇵ]となり、これらはユニコードに追加申請が出されたこともあった。タミル文字GHAの母音記号付き表記は《கா⁴・கி⁴・கீ⁴・கு⁴・கூ⁴・க்⁴ருʼ・கே⁴・கை⁴・கோ⁴・கௌ⁴・க்⁴》[ガㇵー/ギㇶ/ギㇶー/グㇷ/グㇷー/グㇷリ/ゲㇸー/ガㇵイ/ゴㇹー/ガㇵウ/ㇰ゙ㇷ]となる。
ఘనా】テルグ文字:テルグ[ガナー]
ಘಾನಾ】カンナダ文字:カンナダ[ガーナー]
ഘാന】マラヤラム文字:マラヤラム[ガーナ]
ඝානාව】シンハラ文字:シンハラ[ガーナーワ]
ဃာနာ】パーリ文字:パーリ[ガーナー] - パーリ文字はミャゼディ碑文などに使用されていた初期ミャンマー文字やその派生書体を指す ( 参考👉 https://the.nacos.com/information/character/charset/073.php ) 。現行パーリ文字はモン文字の派生でミャンマー系文字の基盤となったビルマ文字と同型で、ビルマ語では〈ဂါနာ〉[ガーナー]と有声無気音GA》[ɡ ガ]が先頭による綴りでガーナを示し、ビルマ語ではGHA《》もGAと同じ発音となっている。
𑄊𑄚】チャクマ文字:チャクマ[ガナ] - 子音字の単独表記がインド系文字の長音AAの系列に当たる。
ហ្គាណា】クメール文字:クメール[ガーナー] - 本来のGHAに当たる字母《》[kʰɔ̀ː コー]は無声有気音に発音が変化したことから、ゾンカ語チベット文字のようにHA《》とGA《》の合字で有声無気音ゴー[ɡɔ̀ː]を示す。
ꦓꦤ】ジャワ文字:ジャワ[ゴノ] - ラテン文字表記からの翻字。現行ジャワ文字における長音記号AAは〈ꦓꦺꦴ〉[ɡʰo ゴ]という風に母音Oを示す場合に限り用いられる。
ᬖᬦ】バリ文字:バリ[ガナ] - ラテン文字表記からの翻字。現行バリ文字における長音記号AAは〈ᬖᭀ〉[ɡʰo ゴ]という風に母音Oを示す場合に限り用いられ、ジャワ文字と異なり、ユニコードでは単独母音記号扱いとなっている。

Ghana】ラテン文字:フィジー・ヒンディー[ガーナー] - 英語と同じ綴り。フィジー・ヒンディー語ラテン文字では長音記号やそり舌音を示す下ドットなどの拡張文字が使用されないことから、フィジーだけでなく、インドでもデーヴァナーガリー文字の代わりにネット上で用いられ、外来語や固有名詞は原則的に英語と同じ綴り字となる。
Ghānā】ラテン文字:パーリ[ガーナー]、ヒンドスターニー[ガーナー] - 20世紀中頃までインド諸言語翻字用ラテン文字を一部改造した表記法―パーリ語の〈C, CH〉がヒンドスターニー語では〈CH, CHH〉という風に一部異なる―が、ヒンディー語とウルドゥー語と完全に分離される以前のヒンドスターニー語の正書法のひとつとして用いられていた。

گهانا】ウルドゥー文字:ウルドゥー[ガーナー]、シンド[ガーナー] - シンド語では有気音字母を示す拡張アラビア文字が多数作成されたが、GHA《گھ》とJHA《جھ》[ɟʰ ヂャㇵ]は有声無気音子音字とヘー・ドーチャッシュミーھ》との合字で示すルールとなっている。

有声摩擦音によるGH表記

アラビア文字からの翻字などでは有声摩擦音に当たる字母で表記されます。
かつてアラビア文字を使用していたチュルク諸語などでは、ロシア語の〈Гана〉[ガーナ]の表記に合わせて、有声破裂音による字母が用いられます。

غانا】アラビア文字:アラビア[ガーナー]、モロッコ・アラビア[ガーナー]、チュニジア[ガーナー]、ウルドゥー[ガーナー]、ジャウィ[ガーナ] - 国や地域によって有声硬口蓋摩擦音[ɣ グ]か有声口蓋垂摩擦音[ʁ ル]のどちらかの発音となるが、日本語翻字では共にガ行で表記される。エジプト・アラビア語では有声破裂音による〈جانا〉[ガーナー]で示す。
غنا】アラビア文字:ペルシア[ギャナー]、タジク[ギャノー]、南アゼルバイジャン[ガナ]、北ロル - アゼルバイジャン語ラテン文字での表記は〈Ğana〉。
غەنا】アラビア文字:ソラニー[ガナー]
غەنە】アラビア文字:ウズベク[ガーナ]
ޣާނާ】ターナ文字:ディベヒ[ガーナー] - ガーナのアラビア語表記〈غانا〉を拡張ターナ文字で置き換えた表記。20世紀後半頃まで新聞や書籍などでアラビア文字との混ぜ書きが行われていた。
ⵖⴰⵏⴰ】ティフィナグ文字:アマジグ[ガーナー]、シルハ

ग़ाना】デーヴァナーガリー文字:ヒンディー[ガーナー] - アラビア語経由での借用語。ウルドゥー文字でガーナが〈غانا〉と表記された場合の翻字。

Ghana】ラテン文字:フラマン[ガーナァ] - 日本語ではオランダ語の〈GH〉は北部オランダ語の無声硬口蓋摩擦音[x ハ]に基づきハ行音で転写されるが、ベルギーのフラマン語では有声硬口蓋摩擦音[ɣ グ]、南アフリカのアフリカーンス語では有声硬口蓋破裂音[ɡ グ]とそれぞれ発音が異なる。
Gha-na】ラテン文字:ベトナム[ガーナー] - ベトナム語では〈GH・Gh・gh〉は《E, I》の前に来る有声硬口蓋摩擦音[ɣ グ]を示すが、例外的にガーナの表記にも用いられる。
Yn Ghaney】ラテン文字:マン島[アン・ガーナ]
Gʻana】ラテン文字:ウズベク[ガナ]
Ğana】ラテン文字:クリミア・タタール[ガナ]
Hana】ラテン文字:ベラルーシ[ガーナ] - キリル文字表記〈Гана〉の語頭が有声摩擦音で発音される場合のラテン文字表記。
Ɣana】ラテン文字:カビリ[ガナ]、シルハ、ダグバニ - エウェ語にもこの字母が採用されている。
Ƣano】ラテン文字:タジク[ギャノー] - 一部地域におけるタジク語のラテン文字正書法ではヤナリフ表記が1990年代に復活し、使用されている。
Гана】キリル文字:ベラルーシ[ガーナ] - ベラルーシ語GHEГ・г》[ゲー]は原則的に摩擦音GH[ɣ グ]だが、英語などからの借用語では破裂音G[ɡ グ]に発音が変化する。ユニコードの《Г》の字母名が〈GHE〉となっているのはベラルーシ語の発音を反映した要素が含まれていると推測できる。
Гъана】キリル文字:クリミア・タタール[ガナ]
Ғана】キリル文字:ウズベク[ガナ]
Ғано】キリル文字:タジク[ギャノー] - ペルシア語では長母音アーを示すアラビア文字アリフا》に対応するキリル文字がオーО・о》となっている。
Գհանա】アルメニア文字:アルメニア[ガーナ] - 有声軟口蓋摩擦音専用の字母ガド《Ղ・ղ》ではなくギームԳ・գ》とホーՀ・հ》の連字で示す。
Ղանա】アルメニア文字:西アルメニア[ガーナ]
ᒑᓇ】イヌイット文字:イヌイット[ガーナ]