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揺れる雨傘

ゲロゲロ。
降ってきた降ってきた。
雨はやっぱり気持ちいいなあ〜。
ゲロゲロ。

ゲロゲーロ、人間が来たぞ。
あいつら雨の日は足音が聞こえないんだよな。
気がつくとすぐそばにいるんだ。
もう逃げられないぞ!
死んだふりをするしかない!

「ママ!ケロケロがおるよ!」

ああ、来るな、呼ぶな、向こう行け!

「ママはカエル嫌いだよ。ぬるぬるしてるから」
「かわいいよお、ほらツンツン」

あーーツンツンすんな!触るんじゃねえ!

「ゆいちゃん、さわらないの!」
「だってかわいいもん、ツンツン」
「やめなさいって!」

ママの言うこと聞けよ!!

「何やってんだー」

うわっ!なんか新手が来た!
もう覚悟するしかない。
母さん、先立つ不幸をお許しください。

「パパ!ケロケロおるの!かわいいよね!」
「おーおーカエルか!パパは嫌いじゃないぞ!小さい頃は苦手だったけどな!」
「なんできらいだったのー?」
「ぬるぬるしてるやん。ぴょんぴょん飛ぶし。ゾーーっとする!」

お前、とってもいいやつやな。
お前がカエルだったら友達にしてやりたいわ。

「なんで今はきらいじゃないの?」
「カエルはすごい生き物だからかな」
「この子、すごいの?」
「すごいぞー。ゆいにできんことをいくつもできる」
「へーへーすごい子なんだあ!じゃあツンツンしたらダメだね!」
「ツン!くらいならいいかな」
「じゃあもうひとつツンする!ツン!」
「おうち帰ったらちゃんと手を洗おうな!」
「うん!」

お母さんが持っていた雨傘を、お父さんが持つと、お母さんはゆいちゃんを抱き上げました。
ゆらゆらと揺れていた傘は揺れなくなりました。

ゲロゲロ。
おれも母ちゃんに会ってみたかったな。

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