部族から村ステージへ、グロースするスタートアップの5つの成長痛
こんにちは。Ubie 共同代表の久保です。
この度 Ubie はシリーズCラウンドの 1st Close として、35億円の資金調達を実施しました。
シリーズCを一つの節目として、この一年間の事業・組織成長における知見を共有したいと思います。
一年間の成長
この一年間は Ubieにとって、事業、組織ともに次のフェーズに移行する一年でした。
事業はユーザーグロースから収益化への大きな変化がありました。
生活者向けの「ユビー」はこの一年で月間利用者が100万MAUから500万MAUに成長し、医療従事者向け「ユビー AI問診」も300医療機関から、1,000医療機関様に導入いただけました。
急成長しているユーザーベースの上で、製薬企業様向けのビジネスにも本格的に取り組み始めました。
生活者を適切な医療機関・治療へ導くことにより、製薬企業様の求める潜在患者の発見につながるビジネスを軸として、様々なプロダクトの開発が進んでおり、現在では20社以上の製薬企業様と協業させていただいています。
組織に関しては、フルタイムの従業員が100人から200人へ増加しました。
Linkedin 創業者の Ried Hoffman の著書「ブリッツスケーリング」の中で定義するところの、部族から村ステージへの成長となります。
※ブリッツスケーリングの中では、各組織のステージは家族(~数十)、部族(数十)、村(数百)、都市(数千)、国家(万以上)と言われています。
このように事業も組織も大きな成長を果たしてきました。
一方で数々の失敗をしてきており、今回はそこで感じた5つの成長痛を赤裸々に公開しようと思います。
1.「金融商品としての Ubie」
昨年末に始まったスタートアップ投資に対しての投資スタンスの変化は、直近で資金調達をした私達にも激動を及ぼしました。また、シリーズBまでは一定のトラクションはありつつ、より先行投資的な意味合いで投資頂いていたこともあり、シリーズCラウンドでのグロース、バーン、マージンを非常に厳しく見られる環境へのギャップがありました。
こうした背景から会社が金融商品として見られているという意識を浸透させるよう、全社的なはたらきかけを行いました。
初期フェーズに入社したR&Dを得意とする人材ほど、直近の定量的なリターンよりも中長期的なアウトカム、ビジョンなどを重視します。そこで意識変革のために、敢えてこれまでとは真逆のメッセージとなる「PL思考」というショッキングな言葉を社内で使用して、改めて日々の業務と事業全体へのインパクトを一人ひとりに考えてもらうように旗を振りました。
2. 自律分散によるリソース管理の失敗
「PL思考」においてはどこにリソースを貼り、リターンを最大化するかは非常に重要です。
事業・プロダクト開発組織である Ubie Discovery (UD) では自律分散型組織を謳っており、リソースの配分も自分自身で決めることができます。人数が少ないときは、各メンバーがよりコンテキストを理解しており、自身で有効な意思決定を行えましたが、組織拡大するほど、全社観点で見てどのテーマにどのくらいの価値があるのかを理解しづらくなります。
そこで、UD ではユーザーストーリーごとのリターンとインベストをできる限り定量化したうえで、組織内で横並びに比較し、リソース配分をする試みもはじめました。
3. ガバナンスを再構築し、属人からシステムの意思決定へ
組織が小さいうちは人間に頼った意思決定が最も早くリターンも最大でした。
一方で、事業が更にグロースするためには早く小さく作るより、既存の資産を掛け算でどう大きくするかが重要です。リターンの最大化、リスクの最小化、コストの最小化を実現する最適な意思決定をするには、システムに頼った意思決定に移行する必要があります。
以前は0=>10の組織である Ubie Discovery (UD) と10=>100の組織である Ubie Customer Science (UCS) という2つの組織からUbieが成り立っていました。
全体リソースの最適化を図る Ubie Head Quarter (UHQ) という組織と、Corporate 機能 (UC), 0=>10フェーズプロダクトを担うUD、医療機関、製薬の各スケールを担う UCS、Ubie Pharma Consulting(UPC) という 5 つの組織へ再構成しました。
4. 事業成長を優先することによる負債
スタートアップでは初期フェーズであるほど、事業がそもそも成り立たないリスクが事業資産を失うリスクを上回ります。
Ubie でも一にも二にも事業成長を求めてきました。それと同時にビジネス、技術、組織、オペレーションなど様々なタイプの負債を溜め込んできました。
例えば、初期からある問診のロジックを持つシステムは実質レガシー化しており、現場の生産性や開発速度に影響を与えていました。当時は事業状況を鑑みて返済を見送ってきたという過去がありますが、もう少し早く手をつけておけばという後悔もあります。
上記は一例ですが、漸進的なフェーズの変化に気づき、マインドセットを変更することの難しさを感じています。。
私自身がこれを強く意識できるようになったのは、本来はこのフェーズでは必要な状態がつくれていないことにより、会社を去っていくメンバーが出てきてからです。
現在では負債のバランスに対してより自覚的になり、一つひとつ対応を進めています。
5. 情報伝播の難しさ
特に組織の人数が150人程度を超えてきた際に大きな情報伝播の変化を感じました。私自身が発言した内容の真意やコンテキストが伝わらないと感じることが増えてきたのです。
ブリッツスケーリングの中でも、ステージが進むにつれてコミュニケーションは対話から放送に切り替えるべきだと言われています。
一方で情報の透明性の重要さにも改めて気づきました。Ubie では透明性が非常に重視されています。
常日頃しているような様々な困難や失敗に直面したときでも、Ubie のメンバーは透明性が保たれていることで自立的に課題を解決していきます。
今後も透明性を重視しながら、放送型と対話型のコミュニケーションを構築していく必要があります。
成長痛を経たからこそ得られているもの
ステージが変わる中で起きた変化や課題を述べてきましたが、それらを踏まえた上で、グロースステージのスタートアップだからこその面白さがあると感じています。
それはやはりスケーラブルであること。
toC・toBサービス共に月間500万人・導入医療機関1000以上と、それぞれのユーザーにとってなくてはならないサービスに成長する中、このプラットフォームを活用してビジネス的にどういったテコを効かせるかが重要になってきています。「国内最大級の患者プラットフォーム」から得られる、症状と病気のデータは唯一無二であり、そのデータを使い新たなビジネスの構築する、その可能性は無限大にあると考えています。
プロダクトに関しても、一つひとつの開発に対するインパクトが大きく、社会価値創出を感じられるフェーズです。医療は人の営みを支える根幹を支えるもの。Ubieは日本のみならず世界中の人を適切な医療へ案内するプラットフォームを目指しており、圧倒的スケールと揺るぎない堅牢なシステムの構築という、今まで以上にスペシャリティが求められます。医療という高いレベルのセキュリティとサービスレベルを両立させるという、世界でも稀に見る使命があります。
一方で、フェーズが変化しても変わらずに残していきたいものもあります。それはUbieそのものがゼロベースであるべき姿を考え変わり続けること。一般的にスタートアップは成長すればするほど挑戦がしづらくなります。一方で Ubie は常にゼロベースから、その時その時のフェーズに合ったシステムを考え・作り続けてきました。
一例を挙げると「組織を分けること」、「評価をなくす」、「ホラクラシー導入」などは様々な人から、本当にうまくいくのか疑念を持たれました。
これもフェーズによって変わっていくものだという考えが社内に浸透しているから挑戦できていることです。「医療という分野で世界に貢献していきたい」という根幹は変わりませんが、その実現のためにベストな方法を模索し続けること、過去に1mmも捉われず変化し続けること。そして、変化を楽しみながら(バチバチの議論もしながら)挑み続けてくれるメンバーがいること。これこそがUbie最大の強さでありアセットであると自負しています。
さらに、人材はジェネラリスト型メインからスペシャリスト型へとタイプを拡張させています。Ubie Discoveryでは柔軟性よりも経験を重視した Focus という新たな人材タイプの採用に力を入れはじめ、その他の組織でも、マネージャー職としてスタートアップを成長させてきた人材の採用なども進んでいます。今まで以上に多様なバックグラウンドやスキルを持つ人材が集まるようになりました。
カルチャーを維持しながらも新たな人材要件を策定するのは決して容易ではありませんでしたが、だからこそ頼もしいメンバーが日々増えています。
まとめ
近年のUbieのステージ変化を赤裸々に綴ってみました。
この記事で言及した内容に限らず、本当にさまざまな変化を体験した1年でした。辛いこともありましたが、その度に助けてくれたのはメンバーたちのロバストネスでした。ゼロベースで常に考える、自分たちも変化に対応していくことを良しとし、共に闘ってくれたメンバー、関係者の方々に改めて感謝します。
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8/2には共同代表の阿部とともにこれからのUbieをお話するイベントを開催予定です。ぜひご参加ください。
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