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バカでないとゼロイチの事業はつくれない

こんにちは。Ubie 共同代表の久保です。
ゼロイチの事業をつくっている皆様に対しては失礼なタイトルかもしれませんが、日々新しい事業を企画・実行していく中で改めてバカであることの重要性を感じたので詳細について書いていこうと思います。
どうやってゼロイチの事業をつくっていくかに興味がある方の参考になれば幸いです。

今まで成功してきているスタートアップはバカなアイデアばかりだった

ゼロイチで事業をつくると言えば、やはり頭に浮かんでくるのはスタートアップ企業でしょう。大成功を収め、世の中のスタンダードになったスタートアップのメンバーは優秀な人ばかりで合理的な人が多いと思われがちですが、実は起業当初は周りの人々からクレイジーと思われていることがほとんどです。
著名なアクセラレーター Y Combinator のポール・グレアム氏もほとんどのスタートアップのアイデアは最初は悪く見える、クレイジーであると言っています。
例えば Airbnb については以下のようにエッセイの中で言及しています。

実際、私たちがAirbnbを投資した時、少しクレイジーすぎると考えていました。それほど多くの人が他人の家に泊まりたいなどと考えないと思ったからです。投資をした理由は、投資家たちが好きすぎたからでした。オバマとマッケインを使ったシリアルを売っていたと聞いた瞬間から、彼らの受け入れは確定していました。そして、彼らのアイデアには正しい方向のクレイジーさがありました。


他人の家に泊まるというコンセプトは Airbnb が存在していなかった当時の世界だとバカげたアイデアに思われていたでしょう。Airbnb 以外にも、Facebook, Uber, Twitter, Instagram, PayPal, などのスタートアップは現在の巨大なビジネスになる前にいくつもの投資家から断られてきました。マーケットが存在し、ビジネスが成長するということを客観的に証明することができなかったのです。

なぜバカになることが重要なのか

「Googleは10番目の検索エンジンだ」と言われるように、大成功したスタートアップの多くはそれまでに何度も試されてきた古びたアイデアからスタートしています。つまり過去に失敗した(と感じる)ビジネスであるということです。そうしたビジネスをもう一度やろうとしている起業家を見ると、周りの人は「きっとまた失敗する」、「答えは既に出ている」と考えるでしょう。
しかし、一見するともう答えは出ているように見えることも、変数を変えると、全く違うことが真実だったとわかることがよくあります。人はコンセプトや表層だけを見て成否を判断しがちですが、実際にはビジネスの変数は想像以上に多岐に渡るからです。

そのようなビジネスの例として Facebook と MySpace の対比がよく挙げられますが、SNSビジネスの変数は簡単に思いつくだけでも以下のように多岐にわたります。

・最初にどのコミュニティーに入ったか
・コアバリュー (出会いか、音楽か)
・クローズドネットワークか、オープンネットワークか
・ビジネスモデル
・インターネット文化の浸透度
・実名、匿名
・モバイルの普及
・.....

ビジネスを進展させていく上では上述のように様々な変数の意思決定をしなければならず、そのうちの一つが鍵となって大成功を収める例もたくさんあります。


Facebook が成功する前、MySpace が一番のSNSだったため、多くの投資家は同様のビジネスに見える同社に対しても成功しない方に賭けていました。
このようにほとんどの人は反対するような状態で、その集団だけが違った考えを持っている状態が「バカ、クレイジー」と言われる状態です。
周りから見るとクレイジーだと言われても自身の仮説を信じて行動する起業家が最終的に圧倒的な成功を収めることができるため、バカになることが重要であると考えます。

大企業の中で新規事業を成功させる難しさ

近年では大企業においても既存のビジネスモデルの変革が叫ばれており、社内新規事業の立ち上げがしばしば行われています。しかし、実際には大きな障壁があると考えます。組織が大きくなればなるほど、意思決定に対する決裁が増えていき、バカなアイデアが葬られるからです。

多くの人が目を通す場所に、ゼロイチの事業を置いてしまうと事業の穴の多さから、ステークホルダーから見ると「あの事業は◯◯の理由で失敗する」、「もっと基幹事業に投資すべきだと」となります。事業の担当者は外部のステークホルダーを説得するために、元の尖ったアイデアではなく、みんなが納得するようなものへとアイデアを変更していきます
しかし、そうなってしまっては多少の成功はできても大成功はできません。論理的に証明されているきれいなアイデアは、他の事業者が既に実現しておりその企業が得られる果実はもう残っていないからです。

Google や Amazon や Facebook などのテックジャイアントでさえ、初期にあったそれぞれのスケールしたビジネス以外でのビジネスを作り出すことには苦労しています。その打開策として、M&A で事業拡大をするのが主流になっていることもその難しさを表していると感じます。

拡大する組織がバカを生み出し続けるにはどうしたらいいか

では組織観点で見た時にゼロイチの事業を作り続けるにはどうしたらいいのでしょうか。
私は2つの要素が大切であると思っています。1つ目は組織をゼロイチの部分とそうではない既存の事業を伸ばす部分に分けるということ。2つ目は事業ではなくヒトに対して投資をするということです。

組織を新規事業とそれ以外で分ける

組織ではどんなときでも優先度が重要です。近年目標管理として一般的になってきたOKRでも、フォーカスの概念が重視されています。一方で事業の根幹となるビジネスと新規事業を同じ物差しで測ることは難しく、フォーカスの範囲から外されることも珍しくありません。

刻一刻と変わっていくマーケットやビジネスの状況を加味しながら頻繁にリソースの投下先の変更が求められる現代では、外部環境の変化がある度に新規事業の大切さを説き続けるコストが必要です。そのコストは思っている以上に新規事業に対して負担を強います。
そこで、私が提案するのは本業と新規事業で組織を分けてしまうということです。それにより説明のコストを省くばかりでなく、長期の投資ができるようになります。
大企業にあるR&Dの組織との違いは、技術シーズをつくるということだけではなく、現実のビジネス価値に直結するような、事業開発のロールを他の組織に分けるという点です。


事業ではなくヒトに投資する

2つ目は事業ではなく、ヒトに投資するという考え方です。事業に投資するという意識の下では、その事業がうまくいかない、ROIが低いと判断された段階で投資が途絶えるということが起こります。しかし、ヒトに投資するという判断だと、仮に想定していた仮説が誤っていてもピボットすることが可能になります。
実際にシードフェーズへ投資しているベンチャーキャピタルにおいては、投資先であるスタートアップの市場やビジネスに関心もありますが、チームを最重要視すると言うキャピタリストも多くいます。これはスタートアップが成長していく過程でピボットするということは当たり前となっており、不確実性が高いことが起きても適切に課題に対処していけるチームの力が最重要だと考えているからです。

バカの力は鈍感力

組織的な観点でクレイジーな新規事業をつくる話をしてきましたが、個人としてバカになるにはどうしたらいいでしょうか。ここで言うバカになるというニュアンスは論理的な判断をしないということではなく、人からバカにされ続ける状態でも耐え抜けることを指しています。

私はバカになる力は鈍感力であると考えています。新規事業を立ち上げると、初期段階であるほど周りの人たちにバカにされることの連続です。周りの声を気にしないという鈍感力が強くないとその度にモチベーションを落としてしまい、推進力を失います。そして、優等生ほど、もっともそうな周りの意見を重視し挑戦をやめてしまいます。他人の意見を適切に無視できる鈍感力がないと、事業を継続することは難しいでしょう。

バカになるにはどうしたら良いか

才能や感じ方だけに依存するのではなく、バカであることを容認する組織、チームを作り上げることで後天的にバカになることができると考えています。
鈍感力が高くても、人間は一人で誰も支援者がいない状態で活動を続けるのは心理的負担が大きいため、バカに付き合ってくれる仲間や、イノベータと言われる顧客を早期に見つけることでモチベーションを保つことが重要です。「スタートアップはオカルトだ」と、言われるのはまさにバカがバカを集めて、新たな社会のスタンダードになるための重要な要素です。

余談ですが、「裸の男とリーダーシップ」という動画はまさにバカがバカを呼ぶ、スタートアップのオカルトを表現している素晴らしいものなので、ぜひご覧いただきたいです。


Ubie Discovery での取り組み

私が共同代表を勤める Ubie Discovery では同時多拠点突破を掲げています。スタートアップとしては変わっていますが、新規事業を生み続けるために、0 -> 10 のビジネスをつくる組織である Ubie Discovery と 10 -> 100 フェーズの事業を拡大させる Ubie Customer Science で、PMF と Growth の役割を分けています 


また、Ubie Discovery においては ホラクラシー という組織フレームワークを取り入れており、それぞれの現場の当事者が意思決定をできるようにしています。 そうすることで新しい事業をつくるときに決裁のハンコリレーをなくすことができ、バカなことをチームの意思決定で実行できるようにしています。一見すると、経営者としてROIを最大化することを放棄しているように見えるかもしれません。しかし、そうすることが新しい事業を生み続け、市場の変化に対応してROIを最大化していくことに繋がると信じています。


まとめ

ゼロイチの事業がバカでないとつくれない理由や、どうやってバカな意思決定も許容する企業をつくるかについてお話させていただきました。新規事業はクレイジーであることが必要条件であるということを私自身信じていますし、日夜ステークホルダーにバカにされながらも自身の信じる新規事業にコミットしている開発者の方に少しでも応援になればとも思ってこの記事を作成しました。


We’re hiring

Ubie Discovery ではバカな意思決定をして、新たな事業をつくっていただける仲間を今後も絶賛採用しています。新しい事業をつくりたい方、医療という課題だらけの現場へ飛び込んで社会課題を解決したい方はぜひご連絡ください。


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