見出し画像

近況と雑感

北陸新幹線の金沢〜敦賀間の延伸開業で、首都圏から北陸への人の流れが活発になりつつあるとの報。

京都住みの私にとっては、北陸に対する心理的距離は近い。大学の同級生は北陸出身が多かったし、サンダーバードに乗ってしまえば福井や金沢はあっという間に着く実感だった。

敦賀で乗り換えを余儀なくされる現状は、関西〜北陸の移動に対する心理的距離感が増してしまったように思われている方も多かろう。

乗り換え無しの直通運転や、同一ホームでの乗り換え、シームレスな移動による効果は、実際の移動時間以上の効果を生み出す。

京都市民にとって、北陸新幹線延伸に関する課題は、ニュースの切り取りによってこのように語られていることが多い。

①小浜〜京都間は殆どが山岳トンネルとなり、建設にあたっての自然環境への影響や、残土問題が懸念される。

②京都市内は大深度地下トンネルで建設する必要があり、地下水の関係上、伏見の酒造地区などに影響が及ぶ懸念がある。

③建設費、地元負担などを鑑みるに、敦賀を南下し小浜を経由せず、米原で東海道新幹線に乗り入れるルートを推す動きがある。

個人的見解を述べる前に、これらの課題を別の角度から検証する。

①について、長大な山岳トンネルから京都市内へ向かう難工事が予想されるが、既存市街地の少ない南丹市美山町、或いは京都市右京区京北地区に駅を作るメリットや意味を考えなければいけない。

小浜〜京都をショートカットするルートを考えた場合、明らかに湖西ルートが自明であるにも関わらず、滋賀県への働きかけ含め、意味のある論議になっていない実情。

②地下水が潤沢と言われる京都市内。地下を掘るのが良くないこと、のように報道されているが、実際のところ京都市内は市営地下鉄を含め4本の地下鉄道が市内中心部で営業している。地下水だけではなく遺跡、歴史的遺構の発掘調査など、課題は多いが、鉄道だけではなく共同溝など地下トンネルの工事は今でも市内随所で行われていることを認識のうえ報道されなければいけない。地下トンネル=悪、のようなイメージ戦略は思考停止に近いように思う。市内の美観を守るために、高架ではなく地下に様々なものを追いやってきた歴史がある。

③これから数十年先の、東海道新幹線、リニア中央新幹線のダイヤを予測する必要を感じる。現状の東海道新幹線のダイヤに、北陸新幹線直通を組み込むことは容易ではない。

米原は現在でも主要な乗り換え駅だが、ターミナルとしての機能を持つ駅ではないので、のぞみを停車させることは難しい。依って、乗り換え駅として機能させることは現状の東海道新幹線の行き届いたサービスを低下させることに他ならない。

米原から複々線で京都経由新大阪まで延伸、との案もどこかで見たことがあるのだが、比較的開発が進んだ琵琶湖南岸〜京都方面でのそれは、用地買収は容易ではないことが予測できる。

ここからは個人的なアイデアや疑問を投げかけていく。

京都市、京都府が北陸新幹線の恩恵を受けるためには、京都市ならびに周辺自治体にとって利益/恩恵があるものでないといけない。

現状、山岳トンネルと大深度地下で京都駅、そして京田辺市松井山手付近に新駅を作る計画とのこと。

現在もベッドタウンとして開発が進み、物流施設なども建設が進む松井山手地区への新駅は妥当だとして、果たして「新幹線」としての機能と関西から北陸への国土軸を、どう京都と結びつけるかというコンセプトが脆弱に見えている。

新幹線ができても、京都市民に恩恵がない、と言うふうに見えても仕方がない。

これは私からの提案だが、京都市が現状抱えている慢性的ないくつかの課題を解決させる方法として、「北陸新幹線建設に乗っかった」以下の提案をする。

①もし小浜ルートで建設される場合、市内への交通が脆弱で過疎化が進む右京区京北地区(周山付近)に新駅を作り、環境に配慮した町づくりを行う。

②もし小浜ルートで建設される場合、市内は西大路道地下、少なくとも金閣寺付近〜JR西大路駅区間に二層トンネルを建設し、地下鉄西大路線として「市民に対してしっかり恩恵がある」鉄道サービスを充実させる。その際、北陸新幹線のターミナル駅は、交通結節点として有用性が高い阪急西院駅付近か、地下鉄東西線西大路御池駅付近に設置するのが望ましい。

③もし小浜ルートで建設するならば、②の併設新線を市南部(または向日市境付近)で新幹線に乗り入れさせ、松井山手付近まで、あるいは新大阪までの一般新線として、比較的高頻度運転できるようにすれば、現状脆弱な学研都市〜京都市内のアクセスを強固なものにできる。

④もし米原ルートで建設する場合、複々線を余儀なくされる。滋賀県内駅についても検討の余地があるだろうし、現状飽和している京都駅への乗り入れを避け、山科にターミナル駅を設け、山科より南下、巨椋池付近より松井山手方面へ向かうルートを建設するのが望ましい。高さや容積率など建設規制が緩和された山科の再開発への起爆剤にもなろう。

⑤湖西ルートで建設する場合、並行在来線の湖西線を「一部利用する」建設はできないものか。ヨーロッパなど、高速鉄道でよく見られる運行方法を参照すべきである。例えば、高頻度運転の湖西線区間、京都〜堅田間ないしは近江舞子間は、新線を建設し、途中からは新幹線と在来線は秋田新幹線などと同じように線路共用にするといった、施設改良と共に新線を建設、在来線サービスの向上を行うといった施策を始めていくことも建設的ではなかろうか。また、このケースの場合だと、京都市内のターミナルは山科が望ましい。

思いつく限り私見を述べたが、インバウンド需要の高まりや混雑、市バス問題、京都市内や周辺の再開発、人口減少問題、土地価格の高騰などを一気にとは言わないが、抜本的に解決するためには、国家プロジェクトをうまく使って、しっかり市民や地域のものにしていくための具体性を持つ必要がある。

前時代的な賛否論争ではなく、具体的な議論が活発化されることを望む。

ここからは追記です。

つい先日、京都市内のルート選定について(小浜ルートがデフォルトなようではあるが)、JR京都線のJR桂川駅付近にターミナル駅を設ける、という案が出された。

恐らく、京都駅のキャパ問題と、京都市内の地下水問題をクリアするための代案だと思うが、発展著しい再開発エリアではあるものの、交通結節点としての利便性はいまひとつで、寧ろ市内中心部に乗り入れる阪急京都線の桂や洛西口へのアクセスを重視した方が良いように思う。

私は、北陸新幹線が京都にもたらす最大のメリットは、市内交通の充実を図るための新線を併設する(上記参照)ことだと思っているので、桂付近を通るにせよ、西大路通地下を通るメリットを追求できないか、と思っている。

桂川駅に通すくらいなら、東西線を当初の計画通り洛西ニュータウンまで延長し、洛西に新幹線駅を作る方がいいのではないか。

そもそも。

ちなみに私は完成時期や工費なども鑑みて、湖西ルートが議論されないことに憤りを感じている。小浜市に通すことが必須なのであれば、敦賀〜小浜間は支線にすればよい。本線は、琵琶湖の北側を通れば良いはずだ。それなら30年もかからないだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?