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野菜の栄養について(ビタミンC編)

知ってるようで知らない野菜の栄養、少しづつ勉強している。今日はビタミンCについて。

ビタミンとは

ビタミンという言葉はよく聞くものの、定義を語ることのできる人は限られる、と思う。自分も語れないので、辞書を引こう。

ビタミン〖Vitamin〗
栄養素の一。生物の正常な発育と栄養を保つ上で、微量で重要な作用をする有機化合物の総称。普通、動物の体内では生成されず、外界から摂取しなければならない。不足すると特有の欠乏症状が現れる。脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに大別される。最初は発見順にA・B・C…とアルファベット順に命名されたが、その機能から命名されたものもある。 大辞林

ビタミン単体の世界初抽出は日本人の鈴木梅太郎先生の功績だが、命名者はポーランドのカシミール・フンク先生である。ちなみに鈴木梅太郎先生の見つけたのはビタミンB1なので、ビタミンBの話をするときにまたご登場いただくかもしれない。

ビタミンC

ビタミンCの正式な名称は、L–アスコルビン酸という。
Lの字は、アスコルビン酸に光学異性体が存在していること、その左手系であることを表している。ちなみにちなみに、右手系か左手系か、というのは生物にとってはとても大事なことであったりする。左手系のグルタミン酸はみんな大好き旨味成分であるけれども、右手系のグルタミン酸には旨味は無い、とされている。ちなみにちなみにちなみに、"L"は左手系だが右手系は"D"で表される。ややこしいが、LeftのLではない。ギリシア語のlevo(左)、dextro(右)であるらしいですね。

われわれ人類はビタミンCを合成することができないが、体内でビタミンCを合成出来る動物もいる。これらの動物は食べ物によって外部からビタミンCを摂取する必要がなく、つまり定義からすると「ビタミンでは無い」ということですね。というか、哺乳類では体内でビタミンCを合成できない動物の方が少数派であり、ほとんどの動物がビタミンCを必要としないのだった。ビタミンCを必要とする少数派の動物としてはモルモットなんかがいます。この、「ビタミンCを体内で合成できる動物やできない動物がいる」という事実は、進化論の中立説という学説の有力な論拠となっている。中立説というのはざっくりいうと、生物の進化というものは偶然の作用が大きいよ、という話なのだが、詳しく解説するには時間と余白(時白、という言葉があっていいと思う)が充分でないのでまたいつか。

ビタミンCは、飲料なんかの抗酸化剤として添加されていたりする。ビタミンC自体がとても酸化されやすく、本来の飲料の成分が酸化されないように身代わりの防壁になってくれるのだ。(ちなみに、大切なものを守るために大切で無いものを身代わりにする、というのは非常に汎用性の高い戦術である。戦車の装甲にも爆発反応装甲といって同じような対策が利用されていたり、梱包材のプチプチなんかも同じ役割だ。身を守るためには、まず真っ先に、何が必要で無いかを見極めて犠牲にするのが大切である。ときめかないものを捨てる近藤麻理恵さんメソッドもこの延長線上にあると思う。)
この抗酸化剤作用は体内でも有用に働き、体内の活性酸素の除去や、他のビタミン(ビタミンEだ)の酸化状態からの再生や鉄の還元による吸収効率向上などなどでよく働いてくれている。

ビタミンCは体の組織、コラーゲンなどの合成に必要不可欠であり、これがビタミンCのビタミンたる所以である。ビタミンCが不足すると体組織の新規合成が阻害され、傷が治りにくくなったり、壊血病といって全身の血管組織が崩れて歯が抜けたりする状態になるので、気をつけよう。といっても、人間の体は通常ビタミンCを備蓄しており、90日くらいの間全くビタミンCを摂取できないときに壊血病になるという。上記したビタミンC合成能を人類が失っているという話だが、こういう備蓄があることで合成能がなくても致命的で無い、まあいうて90日もあればなんかビタミンC食べるっしょ、というカラクリになっているのだね。

ビタミンCの人体への吸収だが、酸化しちゃったビタミンCを摂取しても体内で還元できるので、料理をあれこれしても基本的にビタミンC量が変化することはないと思っていいらしい。野菜を切りすぎると酸化していかん、とか、熱を加えると分解されていかん、とか言われるが、研究ではそれらの影響が否定されているとのことである。ただし1点だけ、ビタミンCは水によく溶けるため、煮汁を食べるならいいが茹でるだけならなるべく短い時間で茹でるようにするといいだろう。

まとめ

ビタミンCはビタミンなのだった。

参考文献

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