ドラマー目線からMODO DRUMを見る
先日IK Multimediaから無償で利用できる「MODO DRUM CS」が発表されました。気にはなってたものの、Superior Drummer 3持っていて優先順位が低かったので嬉しかった。
(Superior Drummer 3についての記事はここから)
少し触ってみただけでもわかる面白さ!また多少ドラムへの知識や視点があった方が上手く、面白く扱ってあげられるのかな。という気がしたので
ドラマー目線からMODO DRUMを見て使い方や活用方法を探っていきます。
参考になれば幸いです。
また何かあればコメントにどうぞ。間違えてることもあると思うのできちんと修正したいです。
まず、前提として
色んな記事やまとめがありますが、一番最初に生ドラムのプラグインを選ぶなら私はAddictive DrumやEz Drummer(①)がいいと思っています。
音も加工済みで、使いやすく、目的に沿った拡張がしやすい。曲を作り上げることがこの記事を読むであろう多くの方の目的のはずです。(打ち込みの)ドラムの手間は少ない方がいい。ここは共有しておきたい前提です。
更にもっと言うなら単純なフレーズでも人間が叩いた方がいい。
人間が曲自体を俯瞰してダイナミクスやフレーズで楽曲を盛り上げるのに無意識下で大小の、しかし無限で様々な判断をしてます。
生録は無理で電子ドラムでも打ち込みとは全然違います。(②)
そもそも全部を打ち込みでリアルを目指す必要はないのかな。という私の結論を元にこの記事を読んでいただければ。
基本的な機能解説は他に譲ります。まず端的に良かったところから!
①手に取りやすさはADかもしれませんが私の推しはEDです。ADはキーマップの配置が特殊で苦手意識があります。また、EDは拡張がイケてます。
※EZ3になってあまりにもEZが最強になってしまったのでこれから買う人には全員EDを勧めます。
これについては別記事書いてもいいかもしれないw
②というか、役割が全然違うように思います。差し替えの容易さでは電子ドラムが勝ります。けど生録頼めるならそれがベストだとも思います。笑
良かったところ
皮物の挙動が思ったよりリアル
振る舞いも追従する
MIDIとかは普通に使える
流石物理モデリング、スネアやキックなどの皮物のサイズやテンションを自由に変えることが出来ます。
私は深胴のスネアを作ったり、逆に薄いピッコロのスネアを作ってみたりして楽しかった…サンプルで用意されていることも少ないですしね。
タムはキットの個性なのでサイズを変えたいと思うことは正直無いですが、例えばキックをEQではなくサイズを変えることで量感を調整できる可能性があるのは物理モデリングでしかできない魅力です。
またテンションはともかくとして、ダンピング(ミュート)の設定が出来るのが素晴らしい!ドラムは音色作りで様々なミュートを多用しますが、(①)
ミュートの量を調整できるのはリアルな音色作りに貢献すると思います。
やりすぎるとオケ中で音が死ぬ可能性があるのでやり過ぎは注意しましょう。曲全体を再生しながらの調整を推奨します。
サイズと同じように打点を変えたり、スティックを変えることも出来ます。
いくつかTipsめいたことは後述するとして、驚いたのはキックのヒールアップ/ダウン(②)とビーターの変更が判別付くほどに分かること。
ヒールアップ+プラスチックのビーターはツインペダル的プレイで映えそう。ツーバスも試したいですね~
どうもCS版でもMIDIグルーブやミキサーのエフェクト類が全部ついてるそうです。破格ですよね。良くも悪くも海外の企業っぽい大雑把さだなぁと思ってしまいますが偏見でしょうか笑
手持ちが心もとない人は活用してもいいかも。レゲエのパターンとかありがたかったです。でもこれはジャンル的な拡張が期待できないということ…?
①ガムテープ等のあり合わせの物でミュートしたり、製品としてはリングミュート、ジェルミュート。財布を載せてミュート、なんてものもあります。
②踵を上げるか下げるかでやりやすいプレイが変わります。アップでは足の重みを活用でき、連打のフレーズでも音量感が保たれます。ダウンでは繊細なコントロールがしやすくキックでニュアンスをつけたいジャンルでは好まれます。実際はこの両方を使い分けることが多いです。
悪かったところ
サンプリングの金物がイマイチ
Roomがちゃちい
ミキサー画面のちぐはぐさ
シンバル類は日本の大学でも研究されてた記憶がありますが、物理モデリングがまだ及んでいない領域のようで金物はサンプリングです。
その金物の質感がとにかくイマイチ…どうして…
太鼓がリアルに聞こえれば聞こえるほど差が際立つのもあると思います。
どうにかならなかったんでしょうか。正直、これに関しては嫌いです。
デフォルトの音のはずですが、他のモデルだと良いのがあるんでしょうか。
またルームの音が嘘くさいです。狭めならともかく広めの空間は使わない方がいい気がします。音のお尻ががちゃつく感じ。
パラアウトして手持ちのお気に入りのリバーブを使うといいかも。結果としては曲中では混ぜやすくなるのかな。
ドラムはミキシングが大変な楽器なのでミキサーは重要です。
前述の通りフルで使えるエフェクトは効きいい感じで、バスやエフェクトが収納されてすっきり見えるなど良く見えます。
が。全体的にMODO DRUMの構造と嚙み合っていない、ように感じました。
物理モデリング特有の動作と古典的なミキサー画面がちぐはぐなのです。
1.開いたEQは画面を広く占有するのに、アナライザーがついていない。
折角物理モデリングでサイズを変えてEQとは違うアプローチで質感を変えられるのに、アナライザーが出ず変更を視覚的に確認できないのは惜し過ぎる。
2.クラッシュがOHにいない。
ここが一番の混乱ポイントなんですが、通常録音するならOHにはドラムキット全体の音が入ります。しかしMODO DRUMではOHからクラッシュ類が省かれている。
OHも物理モデリングの一貫ということなのかもしれません。ライドやハットが入るのはなぜなのか分からないけど…
逆にそれが分かりやすい人もいると思います。例えばクラッシュのみを上げたければ直接音量を上下できるわけですからね。
(収録されている奏法的にもクラッシュにはヒットとチョークしか収録されていないので、OHはビートに関連するものだけ関係するってことなんですかね…?書いてきてまたちょっと混乱してきました。笑)
細かいところではプリセットのパン振りが極端めで金物と皮物のちぐはぐさに拍車をかけていたこと。真横にシンバル振られているようなプリセットで位相の反転が「Drummer⇔Audience」と書かれたボタンで切り替わるのは設計思想が見えなくて混乱します。
色んな所で言われてる負荷の問題はさほど気になりませんでした。プロジェクト最後までフリーズさせないタイプのプラグインではないでしょうし。
活用方法
ここまでの良かった点と悪かった点を踏まえて活用方法について考えてみたいと思います。
色々悪いところを言ったものの、意外と曲中で使うには合理的なのかもしれません。生モノのドラムとして考えず、物理モデリングで調整できるワンショットを作るイメージ?
となるとポップスやメタルなんかのトリガーが多いジャンルで活躍できそう。その意味ではロック、ブラックミュージック系に向かなそうかな。
そこから派生した活用方法として分かりやすいのはいわゆる「部品取り」
お手持ちの音源や録音にキック重ねたりするの凄く使いやすそうです。
変わり種だとコンサートスネア的なプレイできないかな?
Play AreaをCCでコントロールできるので繊細なプレイできるのでは…
ハイハットでも出来る模様です。これは他でも出来るので一応ですが。
好きなドラマーを見つけてそのセットやプレイを参考に出来るのもMODO DRUMでは突き詰めることが出来ます。
例えば大人気ドラマーである玉田豊夢さんを例に挙げてみます。
左手のスティックに注目してください。チップが太い、どころか普通に棒みたいなのが分かると思います。
打点が太くなることで音も太くなる…ということですね。
このようにドラマーの中には左右非対称スティックを使う人もいます。この動画でも奏法も左右非対称ですしね
しかしこの世のあらゆるドラム音源はサンプル時に右と左を別に録音することは無いはず。しかも右と左の「組み合わせの違い」なんてサンプルでやるわけありません。
しかし、MODO DRUMなら左手側を「NoTip」にすることで再現出来ます。
キット全体のサイズ感やプレイをトレースしてもいいでしょう。口径や深さを同じにするだけでもサウンドがかなり近づくはずです。
まとめ
唯一無二の音源で可能性があるからこそ少し書きすぎてしまった…
ものすごく面白い音源です。技術的に新しいもの大好きなので終始興奮しながら触れました。
購入を検討してる人に考えて欲しいのは、
「MODO DRUMに何を求めているか」です。
これはどんな買い物にも言えることかもしれないですし、
過去の自分を全力でぶん殴る言葉でもありますが…w
凄く尖ったことが出来ます。あり得ないセット構成とか。
それをする必要があるかどうか。一度立ち止まって考えてみて欲しいです。
あなたがやりたいことは、製作か、音作りか。
私は最初のドラム音源の一つにこれを買うことは勧めません。
二個目三個目ならむしろ良い選択肢になりうると思います。
使いこなすならドラマー向けだと思いますが、前述の通り今は動画で古今東西の素晴らしいドラマーを探すことが出来ます。いい時代ですね。
買う人は自信もって買ってもろて!毎回新鮮な気持ちで触れそうです。
ここまで読んでくださった方の何かの参考になれば幸いです。
記事としてはここまで!
以下は細々とした要望だったり、私が使うなら…って設定とかを。
改善案&Tips
改善案
・スティック以外で叩けるようにしてほしい。可能であればブラシ。
これが出来たら他のメジャードラム音源と更に差別化出来るはず。
ブラシは難しくとも、ロッドやマレット、手で叩くとかはあっていいはず。
・もっとキット構成に自由度を。
折角の物理モデリングなんだから狂ったこと出来ないと面白くない。
スネア複数、などもっと実践的でもキットの自由度は高められるはず。
リバーブも今の無難で微妙な空間だけでなくトンデモ空間追加してほしい。
・シンバルの物理モデリング化orハイブリッド化
ロマン的にはオール物理モデリングを是非目指してほしい。
ここ最近シンバルも加工が流行っていたのでそれを再現できるといいな。
皮物と金物のチグハグさはやはり収録方法の差なのでしょうか?
Tips
・セッティング一例
いくつか見て欲しいポイントとしては右利き想定として
・スネアは中心からずらす。(良く鳴ります)
・左手は中心からより外、エリアも広め(利き手ではない方をルーズに)
・右手は中心寄り、Volumeを上げてます。
タムも同様の発想、プレイヤー側に寄せると「ぽい」です。
めんどくさがらずビート時のスネアは左で叩くようにしましょう。
もっと極端にした方がサウンド的には分かりやすいですし、そこまで破綻しないと思います。私がこういうのは気持ち寄ってる位で十分派なだけです。
・キットのチューニング
曲のキーに合わせるのをよくやります。
キックは弄りやすいと思います。ルートに合わせれば間違いなさそう
スネアやタムは難易度高いので慣れてきた方向け。3,5を中心にするといいのかな?多点キットでは弄れないですw
最後は耳でチェックしてくださいね。
・シンバルもチューニングできる。
物理モデリングではないですがシンバルもカスタムできます。
Dampを弄ってもいいかも?あんまり音自体が好きではないうえに極端な設定には耐えられなさそうな雰囲気があったので存在をお知らせする程度に。
というか、Customizeの画面で各マイクを統合してバスをミキサーで弄っているイメージなのか?
スネアの表と裏にボリュームあるのもマイクと思って使うといいのかも…
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