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DNX中野 智裕氏が語るデータ領域の可能性 「日本企業のデータトランスフォーメーションを牽引するのはQuollioの使命である」

Quollio Technologiesは2024年6月、シリーズAラウンドにおいてDNX Venturesをリード投資家とし、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、およびIncubate Fundを引受先とした第三者割当増資により、7.5億円の資金調達を完了し、これにより累計調達額が10億円を突破しました
対談の中で中野氏に、Quollioに投資することを決めた理由やQuollioの可能性についてお聞きしました。

左: DNX Ventures Principal 中野 智裕氏
右: Quollio Technologies 代表取締役 CEO 松元
DNX Ventures Principal 中野 智裕氏
九州大学大学院総合理工学府卒業後、2006年にマツダへ新卒入社。北米向けセダン(Mazda6)の商品収益管理業務に従事。2009年にミシガン州のマツダとフォードのJV工場へ出向し、経営企画としてコスト企画管理等を担当。2012年にセールスフォース日本法人に転職、 Finance&Strategy担当としてSaaS事業及び組織の急成長に携わる。2016年に同社投資先のチームスピリットに入社、広範なコーポレート業務及びIPO/IR実務を担当し、上場後に取締役就任。同社退任後、2021年にHacobu入社、執行役員経営管理本部長としてコーポレート業務やガバナンス構築に従事。2022年にDNX Venturesに参画。

グローバルで見るとメタデータ領域は地域性があり、ローカルスタートアップが課題解決する必要がある

松元:本日はよろしくお願いします!まずは、Quollioに投資をすることに決めた理由をお伺いしてみたいと思います。

中野:よろしくお願いします。Quollioに投資を決めた理由は大きく3つあります。

1つ目は、データ領域の大きな可能性を感じていたためです。メタデータの重要性を直感し、しっかりと自分自身で理解を深めようと情報収集を行いました。実は私自身がこれまで経験してきた会社の中でも、データ分析におけるメタデータ管理の難しさを痛感していました。実際に優秀なアナリストが膨大な時間を費やして前任者からのデータ分析業務の引き継ぎをしなければならない状況を目の当たりにしてきました。外資系の米国本社で作成したレポートを日本版に作り変えるためだけに、わざわざ米国出張して2週間みっちりと使い方を学ぶなど、非効率な業務が蔓延していました。そういった現場レベルでの課題を肌で感じていたからこそ、その解決に資するソリューションを作っていたQuollioに惹かれました。

2つ目は、メタデータやデータガバナンス領域に強い地域性を感じたためです。メタデータ領域にチャレンジしているグローバルのスタートアップを観察した際に、それぞれの国と地域にマッチしたサービス展開をしていることに気付きました。一般的に、モダンなデータスタックの世界では、「Snowflake」などに代表されるような外資系企業のソリューションが数多く存在しており、果たして日本企業がその中で独自の立ち位置を確立できるのかどうかが懐疑的に捉えられがちな側面があります。しかし、私が目にしたのは、カナダやフランス、ベルギー、シンガポールなどの多くの国や地域を拠点とするスタートアップたちが、それぞれ特色あるアプローチでメタデータ関連の課題解決に挑んでいる姿でした。それぞれの国や地域の文化や商習慣などが色濃く反映された個性的なソリューションが生み出されている状況から、メタデータの特殊性を感じました。だからこそ、日本市場に適合したデータガバナンスやメタデータ管理手法を確立する余地は十分にあると考えたのです。

3つ目は、起業家である松元さんに圧倒的なファインダー・マーケット・フィットを感じたためです。難解で奥深いデータオペレーションの課題に真正面から向き合う真摯な姿勢に、大きな魅力を感じました。また、ディールに臨む姿勢からインテグリティの高さを感じましたね。実際に、誰とタッグを組むことがビジネスの成長と顧客貢献の最大化につながるのかを常に考え抜き、論理的な意思決定をしていると感じました。まさに、DNXが投資するべきアントレプレナーのペルソナにとても合致していましたね。

AIガバナンスの潮流も相まって、メタデータの価値は今後ますます高まっていく

松元:領域について深掘りさせてください。データ領域の最新のトレンドをどう見られていますか?

中野:データ領域の動向については、本当に目まぐるしいスピードで変化が進んでいて、投資文脈でも注目しています。メタデータ周辺についても、Quollioの直接的な競合とまでは言えませんが、問題意識を同じくするプレイヤーが国内外で増えつつあるのも確かだと思います。

メタデータについて興味深いのは、AI活用のアカウンタビリティを強化するソリューションの方向性です。例えば生成AIでは、出力されたコンテンツの信頼性を担保するために、ハルシネーションをどう防ぐかが課題となっています。その解決策の一つとして、出典元情報を同時に提示するなどの工夫が求められると考えています。AIを活用しつつも、それをブラックボックス化せずに一定の説明責任を果たせるような仕組みづくりが重要で、これはメタデータとの親和性が高いテーマだと感じています。つまり、モダンなデータ活用の世界においても、なぜその分析結果が導き出されたのかをユーザーフレンドリーに説明できる世界観が今後広がってくると思っています。それを実現するためには、メタデータやデータリネージの整備、分析プロセスの可視化など、さまざまな要素の組み合わせが求められます。Quollioが取り組むデータガバナンスの価値は、今後ますます高まっていくと考えていますね。

松元:確かにそうだと思います。トモさん(中野さんのこと、以下同様)がおっしゃったようにハルシネーションをどう説明可能にしていくかという、ブラックボックスをどうホワイトボックス化していくかということに関しては絶対にメタデータが必要で、メタデータの品質も求められます。日本はハンコ文化に象徴されるように、誰が同意し責任を持つかという問いに敏感です。分析した結果が外に出せないという事態にも繋がりかねないので、ビジネスシーンでAIを活用する場合、必ずメタデータが活躍すると考えています。

中野:そうですね。確かに日本においては責任の所在がどこになるのかというのは重要な要素になってきます。AIについての説明責任をベンダー側からプロアクティブに埋めていけると、企業のAI活用に加速感が出てくる可能性があると思いますね。

着実に実績を積み上げ、期待以上の結果を出した。Quollioはポジショニングを築き始めている

松元:この1年間でのQuollioの成長をどのように捉えていますか?

中野:この1年を振り返ると、Quollioの目覚ましい成長には驚かされることばかりです。シリーズAの資金調達を目指すにあたり、まずは松元さんと投資家サイドとの間で、どのようなマイルストーンを設定するのかすり合わせをしました。具体的な顧客数やMRR(月次経常収益)、人員計画、必要資金などについて、かなり細かいレベルまでイメージを共有しました。この1年をかけて着実に実績を積み上げ、期待以上の結果を出してくれました。スタートアップがコミットメントを口にするのは簡単ですが、それを実際の数字で証明するのは並大抵のことではありません。Quollioチームの実現力の高さは、本当に賞賛に値すると思いますね。

加えて注目すべきは、事業フェーズの変化に合わせて適切なタレントを集められた点です。スタートアップの初期メンバーは、どうしても同世代の仲間で固めがちですが、Quollioは世代に囚われない採用を実践してきました。事業の成長と顧客価値の最大化のために必要なスキルや経験を備えた即戦力を、国内のみならずグローバルな人材市場から発掘してましたね。多様なバックボーンを持つメンバーが一丸となって、それぞれの強みを最大限に発揮しながら成果を生み出すチームが出来上がりつつあるのかなと感じています。

また、この1年で松元さんがソーシャルメディアにおいて積極的に発信したり、ビジネスイベントなどにも数多く登壇したりしている姿を見てきました。「メタデータと言えば松元さん」というようなポジションを確立したと思いますし、これまでとはまた違ったレベルの存在感に到達したのではと感じています。DNXがアレンジした先輩起業家との交流する場も、うまく活用して、さまざまな知見をスポンジのように吸収している姿もたくさん見てきました。これから2年後、3年後となった時に、さらに素晴らしい経営者になっているのではと思っています。

2024年3月 業界団体(JDMC)データマネジメント2024での講演

日本企業のデータ&AI活用の未来は、Quollioにかかっている

松元:シリーズAまでの段階でトモさんがQuollioに期待していたことは何ですか?

中野:シリーズAまでの段階で私が期待していたポイントは2つです。1つ目がプロダクト・マーケット・フィットの兆しを感じたいということ、2つ目がレベニューオペレーションの再現性を見たいということです。この2つに関しては、概ね達成されたと考えています。期待していた2つのポイントをパキッと定義づけすることは難しいのですが、現状の顧客数やお客様からのフィードバックや感想をお伺いするなかで、Quollioのプロダクトが顧客課題にハマりつつあると確信できました。

今後は段々と競技が変わってくると考えています。シードやアーリーの段階では先ほどお話しした2つのポイントを預かった資金でどのように達成するのかという競技でした。しかし、今後はビジネスをよりスケールするために、マネジメントや採用の課題がどんどん出てきます。まだ見えていない課題に対して先読みして打ち手を考えていく必要があると考えており、さらに深みを増してくると思います。

松元:今後、我々に期待することは何ですか?

中野:今後はさらに経営者として違う競技をしていくつもりでパワーアップしていくことが求められます。IPOなどが近づいていくなかでQuollioという会社のガバナンスをどうしていくのかということも考える必要があります。そして、多くのステークホルダーがいるなかで、会社が自分のものというよりは公のものになっていく感覚を味わうことになると思います。
そのような状況の中で、悩みも深くなっていくと思うので、真剣に一つひとつの課題に向き合って、3年後や5年後に経営者としてパワーアップしている姿を見たいですね。

その一方で、ビジネス面での話をすると、シリーズAまでにメタデータやデータガバナンスがバーニングペインであるということをより一層感じました。ことデータに関して、日本のエンタープライズ企業は数年レベルでグローバルの企業に遅れをとっている状況で、どのようにエンタープライズをデータをもってEnableできるかということをどんどん突き詰めて欲しいです。ペインはもう証明されているので、どういうスピードで実装してデリバリーできるのかという点においてQuollioの責任は非常に大きいと思っていますので、自分たちがやらないと日本企業がさらに遅れてしまうというような意気込みでペインを解決してほしいです。

松元:おっしゃる通りですね。この領域を担える立場になっていることはすごく幸せなことだと思うと同時に、「ウチがやらなければ、他に誰がやるんだ?」とも思っています。実際にリード数も増えてきており、お客様も他に頼る場所がないという状況。逆にいうとウチはアウトサイダーでありながらお客様の真横1cmであり、やりやすい位置にいるっていう話だと思っていますし。その点において、Quollioの責任の重さを感じていますね。

新しい価値観を生み出し、世の中に大きなインパクトを与えてほしい

中野:私たちVCの仕事の醍醐味は、集めたお金の様々な投資先へのアロケーションを通じて、様々なアジェンダにアドレスし、社会をアップデートしていき、インパクトに間接的に関与することだと思います。同様に、Quollioの場合、様々なエンタープライズのお客様のデータを通じて、社会をアップデートしたりより良いものにしていく可能性を秘めた、大きな使命を持った会社だと思いますので、そういう意味では似ていますね。大きなテコになる存在として、Quollioが世の中の変革に関与実装する姿に期待したいです。

その中で、Quollio自身がこの領域の規範となることが重要だと思います。データオペレーションという言葉もまだ日本では浸透しているとは言えず、これから普及させていかなければならないですよね。多くの日本企業が変革の大きな壁に直面しているなかで、Quollioの事業が拡大することは、新しい働き方や価値観を生み出すことにも繋がると考えています。そのためにも、日本特有の所与をクリアしていかなければならず、例えば日本特有のSI文化やコーポレートITエンジニアの不在など、考慮すべき事は少なくありません。Quollioには、グローバルの成功事例を単に真似るのではなく、日本の実情に合わせた施策をどんどん試していってほしいと考えています。今回のラウンドで、必要な資金は手に入れたと思うので、これから思いっきり暴れてほしいですね。

松元:これからも変わらぬご支援をよろしくお願いします。本日は貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。

中野:こちらこそありがとうございました。今後もDNXができるサポートは全力でさせていただこうと思います。これからのQuollioの活躍を楽しみにしています。


積極採用中!
Quollioでは、チームを強化するため積極的に採用を行っています。注目の高まるデータマネジメントの領域で活躍する人材を募集しています。
採用情報 | Quollio Technologies

株式会社Quollio Technologiesについて
世界中の情報と知を繋げ、人々や企業が繋がり、新たな価値創造を促進する未来を築くことをミッションとしているデータテクノロジーパートナーです。Quollioは、メタデータ管理技術とソフトウェア開発力を軸に、企業のデータにまつわる経営課題を解決し、社会のデータ & AIからの価値創造を促進します。

【会社概要】
会社名:株式会社Quollio Technologies
会社URL:https://quollio.com
所在地:東京都千代田区麹町5-3-23 日テレ四谷ビル
代表取締役:松元 亮太
事業内容:データインテリジェンスに関する製品の開発・提供