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三渓園で蓮を見る

この三連休に鎌倉でのお茶会に参加させてもらうことになった。せっかくなので他にもお茶にまつわる場所を訪れようと思った。

最初に思い浮かんだ場所は、神奈川県立金沢文庫だった。
今、「茶の湯以前ー中世鎌倉の「茶」」という珍しいテーマの特別展が開催されているのだ。

日本文化を代表する「茶の湯」。その成立以前には、どのような「茶」をめぐる世界がひろがっていたのでしょうか。神奈川県立金沢文庫が管理する国宝 「称名寺聖教・金沢文庫文書」は、中世東国の茶に関わる歴史と文化を伝える 貴重な史料群です。鎌倉時代を生きた人びとが贈答し、愛飲した茶、鎌倉仏教、 とくに密教儀礼の場で用いられた茶など、中世には多種多様な茶の用途や機能がありました。「茶の湯」成立以前の、日本中世の茶の歴史と文化の諸相を、 ゆかりの文化財を通じてご紹介いたします。

金沢文庫

しかしちょうど南海トラフ巨大地震の注意を受けた直後だったので、公共交通機関は徐行しての運行、行政機関も警戒態勢。もしかしたら美術館も安全のために休館になるかもしれない。電話をして開館状況を確認したところ、休館とはならないが、お目当てだった青磁の壺や香炉の展示は取りやめるそう。

これを聞き、行き先を三渓園に変更した。
しかしこれが正解だった。

三渓園といえば、景勝に指定される日本庭園や見事な建築物が有名な場所だ。
かつて茶道雑誌「なごみ」で、隈研吾さんとハナさんがここで対談していたな。ということは、茶室もあるのかな?

よくよく調べてみると、京都や鎌倉から移築された茶室かあるようだ。これはぜひとも、行ってみよう。

そして何より、7月末から8月のお盆にかけて、蓮の花が見ごろを迎えるという。
ちょうど「観蓮会」という名のもとで7時から開園していることで、開園時間に合わせて訪問することにした。

翌日、7時の開園に合わせて訪問した。園にはすでに何人もの訪問客が蓮の池を囲っていた。

蓮の花にはいろんな種類があると思うが、この池に植わっている蓮は、とても背が高い。青々と伸びた茎に、大きな葉っぱ。ところどころにピンク色の花が、太陽に向かって花びらを広げていた。

中でもよく撮れた1枚が、こちら。

蓮ってこんなふうに育つのか

蓮というのは不思議な植物で、花の命は4日も持たないらしい。

1日目、2日目、3日目と、色や咲き加減が変わっていくのだが、4日目には花びらが落ちて蓮の実の入った花托部分だけが残る、はかない花だ。

おまけに開花するのは午前中の早い時間帯に限る。

あたりは蝉の合唱に、鶯の鳴き声が混じっていた。じっとしているだけで汗がたらたら流れるのだが、蓮の花を見ていると、心がざわつくというか、不思議な気分になった。

仏教では、蓮の花は極楽浄土に咲くと言われている。

それは蓮が根を張るのが泥の中であり、泥沼から茎を伸ばすにもかかわらず、汚れのない美しい花を咲かせることに由来するようだ。

汚れのないピュアさを象徴するのならどうして心がざわつくのだろう。

この日は朝から暑く、気温は37度くらいまで上昇した。早起きは三文の徳と言ったもので、早朝の蓮観賞で朝からよいものを見させてもらったが、結局敷地内を見終えた頃には11時近くなっていた。

茶室といえば、織田有楽斎が立てたと言われる茶室を原三溪が移築後に増築した春草廬をはじめ、大徳寺の金毛閣の手すりの木材を用いた金毛窟など、想像を遥かに超えた由緒ある建築物を目にしては、暑いながらもついつい長居してしまった。

また、敷地内には蓮の花に鎮座される仏様の像があり、展示室にはこの庭園を生み出した原三溪直筆の蓮の花の掛軸が展示されていた。

出世観音

あぁ、そういえば。
しばらくおばあちゃんのお墓参りに行っていない。

祖母、祖父達が眠るお寺には池があり、そこには蓮が浮かんでいる。もしかしたら睡蓮だったかもしれないけれど、とにかくお盆中にはいつも、美しい花が咲いているのだ。

蓮の花を見てざわざわしたのは、きっとおばあちゃんの仕業かな。
このお盆にはお線香をあげに行こう。

気づいたら喉が、全身がからからだった。
自動販売機で500mlのペットボトルを買い、その場で一気に飲み干してバス停に向かった。

暑い夏はもうしばらく続きそうだ。


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