【超ショートショート】バディ
一緒に刑事をやっていた、バディを組んでいた男が死んだ。
強盗を追っかけていて、その途中で犯人の持っていた拳銃に撃たれて、あっけなく死んでしまった。
奴は昔っから熱いところがあるやつで、ひとりで突っ走ることが多かった。分かっていたのに、俺は何もできずに奴が撃たれるのを見ていることしかできなかった。撃たれたのが俺だったらよかったのに……俺は今でもそう思っている。
奴は死ぬ前にこう言った。
「お前は死ぬなよ。生きて、この世界で最も熱い刑事だった俺のことを覚えておけ」
この手の言葉はある意味呪いだと思う。おかげで俺の頭には奴の言葉がこびりつき、奴の死に顔が記憶されてしまった。まったく、いい迷惑だ。
奴が死んでから、毎年奴の命日には墓に花をそえている。そうするのが人間というものだ。
だから、俺は今年も奴の墓にやってきた。だだっ広い茶色い地面がどこまでも広がっていて、たくさんの白い墓石が規則正しく地面に埋まっている。奴の墓石に行くと砂埃が積もっていたので、手で払う。そして色の悪い花を一輪、その上に置いた。
「なあ、俺そろそろお前のこと忘れたいよ。ずっとずっとお前の言葉が頭の片隅にあるおかげで、まともに眠れもしないんだ」
毎年同じ文句を奴にぶつける。奴は土の下で眠ってるばかりで答えない。
「お前は『死ぬな』とかいったけどさ、俺は死にたくても死ねないんだよ。そんでもって、忘れたくても忘れられないんだ。俺の体は無駄に頑丈で、頭にあるメモリーは無駄に優秀なもんでね」
花を置いて、立ち上がる。膝の調子が悪いので、関節から変な音がした。
「じゃあまたな。地球がまだ無事なら、また来てやるさ」
俺は奴の墓に背を向けて歩き出した。
今年で二千回目の墓参りはこれで終わりだ。あと何回奴の墓に来ればいいのだろう。人間すらいなくなったこの砂漠の地球で、機械の体を持つ俺は墓参りをつづける。
俺と地球、先に終わるのは一体どちらなのか……俺はバケツみたいな音がする、金属製の頭を拳で叩いた。
pixiv1000文字ショートに応募した作品です。
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