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回覧版 わてト隊レポート N0.5


Farewell My Lovely" PLUG”


Vol.1 大酒飲みと水澄まし  by Kenji Kubota

7~8年前、ウインドサーフィンにはまり込んでいた。僕は、雪の降る真冬もドライスーツを着込んで海に入っていた。冬場の強い北風は、流されることを考えると恐い日もあったが、その圧倒的なパワーとスピードは魅力的だった。

でも、春が待ちどうしいのはみんな同じで。3月に入って暖かい日が続くと風がなくても行きたくなる。で、いざ水に入るとこれが意外にも冷たい。外の気温が暖かい分よけいにそう感じるのかもしれないが、そのことを差し引いたとしても…である。

“海の季節はひと月おくれ”という話を聞いたことがあるだろうか?
湖や池にもこれと同じ理屈が当てはまるかどうかはわからないが、水深が浅い分早く暖まる気がする。

数年前の2月の暖かい日に、川下川ダムのインレットのシャローでたくさんのバスが泳いでいるのを見たことがあるし、去年の春先の権現ダムでは、表水温が7°C にもかかわらずトップで釣れたりした。小魚の集まるインレットや流れ込みには、バサーが思っている上に早くバスたちは集まっているのである。

春先のバス釣りというと、マッディーでシャローフラットな野池に行く人が多いと思う。僕もずっとそう考えてきたんだけれど、俗にいうハイランド・レイク(リザーバー)も年間水温の低さということを考慮すると、十分春先のトップウオーターバッシングが出来るのではと最近考えている。

午前中陽があたっていて風裏になっているワンド、岬、ゴロタ石、以外と岩盤もいいかもしれない。(黒っぽい石や岩は、太陽によって早く水温を上げるそうである。)まだ人の少ない春先のリザーバー、プレッシャーが低い分以外と楽しめるのではないか。そう考えると、有名所でランカーが期待できるところがいい。たとえば、4月初めの池原ダムあたりがいいのではないかと思うのだがどうだろう。

さて、前置きはこれくらいにして、前号で予告していた僕にとって忘れえない愛しいプラグたちの話をしてみたい。これらのプラグを使うとき、なにかのヒントにでもなってくれたらとそう思っている。

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BIG LUSH ( Skater )

このプラグを手にしたのは15年ほど前になる。当時高校生だった僕は、お年玉をはたいてベイトロッドとリールを買った。スーパーパルサーのトップウォーター用カーボンロッドとシマノのバンタムだった。(本当はFO-60とフルーガー2600が欲しかったんだけれど…)その時に買ったのがこのプラグで、確か1700円位したと思う。

ショア・バッシングでオーバーハングした木の下を狙っていくというスタイル主体のその頃の僕にとって、キャスティングにはかなりの勇気がいったのは確かである。初期タイプのビッグラッシュは、現行のものより少し短くてテール部分が太く、スパッとぶった切ったようなスタイルをしていた。

兎に角、動かなかった。あの頃を思い出すと、今でも胸の奥にちりちりとしたもどかしさがこみあげてくる。動きのイメージ(ウォーキング&ザ・ドッグ)は頭の中にあったし、時々、思い出したように首を振ってくれるんだけれど、ほとんどは真っすぐ手前に寄ってくるだけだった。


初期型ビッグ・ラッシュにて

ペンシルベイトの基本的な動かし方が良くわかっていなかったせいもあったが、今思うに初期型ビッグラッシュというのは、かなり玄人好みするプラグだと思う。ラインスラックを使いこなせる人にしか扱えないプラグ… そんな言葉が似合う、どこか融通の利かない職人的なものを感じるのは僕だけだろうか。

一匹も釣らずに失してしまったビッグ・ラッシュを再び手に入れたのは、5年ほど前である。色違いで4~5本買った。ハンドメイドのペンシルベイトにつきもののバランスのバラツキは確かにあるが、相対的に現行タイプはかなり良く動く。スライドの広いスケーティングを見せてくれる。

無数の歯形が残るそのうちの一本は、46cmを頭に50本は優に釣っている。2年ほど前、初期型ビッグ・ラッシュを譲ってもらった。使い比べてみたが、やはりむつかしい。でもそこがいいのかも知れない。

昨年の秋、高山ダムでスーパーストライカー FO-60と アンバサダー5500Cというタックルに、初期型のコーチドックカラーのビッグ・ラッシュを使って、40cmオーバーを立て続けに3本釣った。10数年前、夢見ていた世界がそこにあった。
Dreams come trueㆍㆍㆍ

僕はビッグ・ラッシュという名前が、ずっとビッグなバスがストライクラッシュするというところからつけられたと思っていたけれど、本当は"ふらふらの大酒飲み”という意味らしい。

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INNER HAND-W.B

初めて [ 手の中の水澄まし ] を目にしたのは、2代目のかえるのような模様をしたあれである。カタログには “だれにでも簡単に使える" ビギナーからエキスパートまで"とあった。こんなコピーと見た目の奇妙さですぐには買わなかった。持ち前のへそまがり根性が “だれにでも簡単に使える" ペンシルベイトを許さなかったのである。

ある日、ある釣具店でハトリーズのセールをしていた。少し前に手に入れたハイドSPが結構気に入っていたこともあって、ためしにインナーハンドも買ってみた。正直なところどんな動きをするのか? ということもずっと気になっていた(ハトリーズのプラグはどれを見てもいつもこう思ってしまう)


2代目インナーハンド 丸呑み

使ってみてそつがない動き、さながらクイックなレスポンスとでもいった感じ。「なんだか、ちがうんだよな…」というのがその時の率直な感想だった。

どちらかというと、その時いっしょに買ったエイビル・スピリット・ボーイの方が気に入ってしまった。少し頭をつっ込みぎみにストレスなしに軽くスライドする方が、僕の好みに合っていたのである。

それからしばらくして、別の店で黄色い台紙に貼り付けた初期型のインナーハンドを見つけた。希少価値ということで買ってみた。何かにつけ(小説家、ミューシャン、車等々)初期の作品に惹かれてしまうのは、僕の悪い癖(?)なんだがなぜだろう。


初期型のインナーハンドにて

思うに最初の作品というのは、始まりがゼロである。なにもないところから様々なものを吸収し、試行錯誤の末、出来上がるのである。途中で挫けそうになっても、抑えきれないハングリーな気持ちがそれを許さない。まさにクリエイティヴの塊だと思う(また、そうであってほしいと願う)

それだけに思い入れも強い。その思いが作品の魅力となって見る者の心を捉えるのではないか、そういった魅力がマイナーチェンジや同じような物を作り続けることによって、少しづつ色褪せていくような気がしてならない。

もちろん、そうじゃないアーチストもたくさんいる、でも、そうした人達にとっても初めての作品というのは特別なのだ。僕にある種の匂いと存在感を感じさせる。

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『わてト隊レポート』という30数年前に 綴られた文章群(1992年3月初版発行) 『わてト隊』 とは・・『わてらは、トップにこだわり隊』…

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