見出し画像

猫とコーヒー

いまの猫と暮らしはじめて13年になる。
名前は『ゴールド』。変わった名前の名付け親は家内である。

関西(宝塚)に住んでいたとき、生後3ヶ月ほどの仔猫(ゴールド)を譲り受けた。室内飼いで数年一緒に暮らしたのち、高知の小さな町に引っ越した。もちろん猫も一緒である。

高知に来てから屋外に出るようになった。というか出してあげた。外の世界を知らずに一生を過ごすことに、個人的にずっと違和感を感じていたからである。

おそらくは、幼少期(昭和40年代)の記憶がそうさせたのだと思う。当時、室内のみで飼っている猫を僕はしらない(下町育ちなので、山の手の住宅猫事情は知る由もないが・・)

最初は、匍匐(ほふく)前進のように外を歩いていた猫が、走り回って近所の塀を飛びまわるのに、そう時間は掛からなかった。みるみる逞しくなっていく猫を見て嬉しくなっていく自分がいた。

あるとき、ネズミを捕まえて家に持ち帰ってきた。都会で見るグレーのドブネズミでは無く、ハムスターのようにかわいい薄茶の小さなネズミである。

『偉いね〜』と頭を撫でて褒めてあげると、とても嬉しそうである。しかし、ネズミのお持ち帰りも2度3度と回数が増えてくると、こちらも対処に困る。ネズミを食べる訳ではないので、生きたまま咥えて持ち帰ったネズミが家の中を走り回ることもしばしばである。

そんなある日、真っ黒でクチバシの赤い大きな鳥を持って帰ってきた。ハトと変わらない大きさの鳥である。見たことのない鳥だったのでネットで調べてみるとバンという水鳥らしいことがわかった。場所によっては絶滅危惧のレッドリスト(高知は大丈夫だったが..)指定の鳥である。流石にこれはまずいのでは・・と思ったが、手を合わせてこっそり庭に埋めてあげた。

***

ここまで書き進めて、当初の『猫とコーヒー』のコーヒーが出てこないことに気づく。猫がコーヒーが好きというわけではない。僕が猫とコーヒーが好きであるという話をしたいところだったんだけれど、猫の話を書いていると、どんどん猫の話が浮かんできて収拾がつかなくなりそうである。

まあ、そのくらい猫が好きということです。
子供の頃から猫が好きで、近所の猫を飼っているところに遊びに行っては、そこの猫と遊んでいた。両親(特に父親)が猫嫌いで、兄は猫アレルギーだったので自宅で猫を飼うことは叶わなかった(泣きのお願いで数日だけ拾った仔猫を飼ったことが一度だけある)

世の中には、猫好きの人と、犬好きの人に二分(にぶん)される。ずいぶん乱暴な分け方だとは思うけれど。どちらかひとつを選びなさいと言われたときに選ぶ方である。

僕は言うまでもなく猫を選ぶが、子供の頃はなかなか猫好きと言えなかった。犬好きこそ友好的で社交的で、社会的に好ましい人柄を象徴しているという、ある種の同調圧力的な雰囲気が昭和の時代にはあったように思う。

いまでは信じられないかもしれないが、猫好きというと『えっ・・』という一瞬の間のようなものが会話の中に生まれて、それまでの友好的な信頼関係が崩れるような感覚に陥ることが何度かあったように思う。

おそらくは、彼ら(質問者)が犬好きこそ正義であり民主主義の鏡であるというメンタリティを疑うことなく持ちあわせていたからだろうと推測する。猫好きは非国民であるとでも言いそうな人までいた。

何をもって猫好きを非難するのかというと、自由で気ままで、好き嫌いをハッキリ主張し、縦社会に属さない個人主義の象徴だからではないだろうか。御上(おかみ)や会社の上司にとっては扱い難い存在なのである。そんなことを時々ぼんやり思ったりして過ごしてきた。

ここ最近の猫ブームは、個人的には喜ばしい限りであるが、当初は驚きとともに多少の戸惑いもあった。単なる一過性のブームでは無かろうかと。『なめんなよ』のなめ猫のように(知ってるひとは40代後半以上かな・・)

いまでも、猫好きと聞くと親近感が湧くし、犬好きだと知ると少し距離を取りたくなる性癖というか習性のようなものがあることは否めない。偏見以外の何ものでもないことは重々承知のうえではあるが。

断っておくが、犬を毛嫌いしている訳ではない(実家で柴犬を飼っていた事もあります)。仔犬を見ると純粋に可愛いなと思うし、頭を撫でてあげたくなるときもある。ただ、飼い主には従順でいつも尻尾を振っているかと思えば、知らない人には吠えまくるという生き様というか、その性格に馴染めないという話である。

画家や作家、アーティストに猫好きが多いということも、僕の猫好きに拍車をかけたのかもしれない(ピカソや村上春樹の猫好きは有名ですね)好きな人物と趣味や嗜好が合うというのは、まんざら悪い気はしないものである。

***

そろそろコーヒーの話をしようと思ったけれど、長くなりそうなので、今回はこのあたりで。

また次回、コーヒーの話をしたいと思います。一年後かもしれませんが(笑








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?