VRChatにおける謎「Dahlia」調査記録〔⑧冥府へ〕[Brutalist Office]
多くのDahliaワールドを見て来てから、いくつかの世界で、どうしても腑に落ちない事があった。
基本、Dahliaワールドをアップロードする主要な四名は、全てがDahlia関係であり、いわゆるプライベートワールドの様なものは挙げていなかったのだ。
しかしこの「Brutalist OfficeI」だけは勝手が違い。いくら探しても、例のDahliaマークが見つからず、写真の通り、堂々とオーナーの名前を掲げていることからも、本当にまさか個人的なワールドか?と疑問を持っていた所だった。
Brutalist OfficeI
しかし、同時に、目をそらせない存在がある事も確かだった。
いつかは開けようと思って、ずっと先延ばしにしてきた番号錠の扉。
しかし、何をどう入れても開かない。
ヒントらしきもの、PCのデスク周辺や、本棚、ホワイトボード、意味ありげな立体絵文字、最奥にある月のオブジェ…
棚の数、本の数、部屋の数、椅子の数、窓の視野から逆算出するビルの部屋数、植物の葉の枚数、照明の数、アップロード年月日、エレベーターの製造年月日.…
ダメだ、即物的な物で、糸口が見つからない。
そもそもBrutalistオフィスって何だ。
ブルータリスト?
ブータリズム?
調べてみると面白いことが解ってきた。
素材そのままの粗野な印象の建築か…
今はともかく、当時の建築界では、鬼子だったわけだ。
ざらざらとしたコンクリートの質感。
わからないこともないけど.…
ざらざら…
むき出しの…
そういえば、
この「月」、なんでいわゆる私たちが見てる表側でなく、ざらざらな裏側で置かれているんだろう?
この面の中心あたりのクレーターの名称に、ヒントでもあるのだろうか?
Webを開き、月の調査を始める。
.…
.......…
なんだこれ?
.…これ、月じゃないぞ?
唐突に事態は動き始める。
月ではないなら、何なんだ。天空の星々には違いないだろうが。
水金地火木土天海
地球、木製、土星は当然違う。
水星、金星、火星、天王星、海王星。
あ、
惑星の中で、鬼子として惑星より準惑星になり、2006年に太陽系第9惑星の地位を外された、冥府の王。
冥王星だ。
注目すべきは割り振られた6桁の数字。
あれは、第9惑星であった地位を退いたときに、新しく与えられたナンバー。
それが彼にとって、屈辱であったかなどと感情移入するつもりはないが、彼自体が「小惑星」認定された確かな証だ。
間違いないだろう。
私はもう一度、息を整えて、番号錠の前へと立った。
急いてはいるが、震える手で入力するのは冥王の怨嗟の6桁番号。
入力が終われば、くぐもった音と共に室内へ通される。
入れた.…
倉庫だ。
外の様子とはずいぶん違う、埃臭いようで、暗く、何かが鬱積している。
視界の端で、Dahliaのシンボルを確認する。
ここも確かに、やはりDahlia世界だったわけだ。
少しの安堵。
しかし次の瞬間には背筋が凍った。
彼女がいる。
.…
彼女が誰なのかは、以下のリンクより
「ঔৣৡۣۜ͜͡ৡঔ ウサギ耳の少女 ঔৣৡۣۜ͜͡ৡঔ」をお読みください。
そう、彼女に会ったのは三度目。
一度目は、「Cat tail」
二度目は、「intro」
彼女の居るところでは、大きく事象が歪むことが観測されている。
そして、今回が三度目だ。
警戒心が厳戒態勢を告げている。
一歩、二歩。
彼女と対峙して触れると、
何があったかは伏せておくが、
視覚と聴覚を一時的に奪われた後、彼女は姿を消していった。
その奥の扉が開くことは無く、戻って確認すると、当然入ってきた扉も施錠されていた。
「ははははは.…」
私は乾いた笑い声を出していた。
今では記憶に遠くなった「Cat tail」での最初の出来事を思い出し、その符合に奇妙な懐かしさを覚えていた。
困惑とも、喜びともわからない心持ちで、私は世界を後にした。
- The investigation will continue. -
◇無言者の走り書き
・Brutalist OfficeI
※現在では、「Edge of Memory」のワールドから選択制ポータル限定でアクセス出来るようになっています。「Nectar」→「Brutalist OfficeI」で選択し、世界に進入してください。
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