イノベーションを生み出すためのスタイルとは
石川善樹さんの「考え続ける力」という本を読みました。
この本は主に石川さんから見て創造性を発揮している人との対談を通じて創造的に考えるとは何かということを考えているものです。
具体的な思考プロセスやメソッドなどはほとんど書かれていませんでしたが、示唆に富むことがたくさん書かれていて、参考になりました。
まず、創造性とは、新しさと質の2つの変数によって定義しているとありました。入山先生の「世界標準の経営理論」では「知の探索」と「知の深化」という表現をされていましたが、新しいものを探すことと、個々のことを深く考えていくことの両輪が大切だと感じます。どちらかだけでは、イノベーティブなことは起こりにくい気がしています。
対談の中でも印象に残るものがいくつかありました。
1つ目は、日立製作所の小泉英明さんとの対談において、脳の動脈瘤を検出する装置の開発で、ちょっと思いついたアイデアを深夜の病院で模擬実験をして、実証したシーンを振り返り、「細かく計画を立てて、申請する中では本当に新しいことは生まれない」とおっしゃっていたことです。
大きな組織では上層部に申請していくにつれ、新規性は排除されることはよくあるのではないかと思います。一方、ちょっと手を動かしてみると、思いがけない発見をすることはよくあるので、フットワーク軽く試してみることの大切さは感じるところです。
私自身、頭の中で考えるだけでは真の創造性は発揮しにくいと思っていて、考えることと試すことのバランスをうまくとっていくことが重要ではないかと思っています。
2つ目は、パナソニックの濱口秀司さんとの対談において、トレードオフ構造を見つけることで、ブレークスルーが可能になると書かれていたことです。これは、当たり前のことを疑うことであったり、アブダクションのような考えを入れて、「これとこれがうまくいったら、こうなるのでは」と考えることだと思います。
目先の課題を手慣れた方法でさばいてしまうと、どうしても根本の問題に向き合うことができないのですが、そもそもなぜこれとこれが対立するのだろうと考えないと、1つ高い次元にはいくことができないので、トレードオフを見つけること、すなわち良いお題を設定していくことの大切さは痛感することです。
3つ目は、元「ほぼ日」にいらっしゃった篠田真貴子さんとの対談で、面白い仕事は何かと考えて、追求していくことの大切さが書かれていました。これは2つのポイントがありそうです。まずは自分でなくてもできそうな仕事をやらないこと、言い換えると、自分ならではの差異化ができそうな仕事に取り組むことで、something newが生まれるということです。もう一つは面白いと考えてのめりこめる仕事にこそ、考え続けることができるのだと思います。考え続けるからこそ新しさや深さが追求でき、創造的なアウトプットが出せるということだと思います。
この後者のほうは重要で、いくらフレームワークやテクニックを身につけたとしても、自分が面白いと思えないと本当に良い仕事はできないと感じているので、それはこれからも追求していきたいと考えています。
着眼点の広さと深さ、トレードオフなどの良いお題を設定すること、夢中になって考え続けられるような面白いテーマを日々探すこと、こういうことが創造性の発揮には大切なのではないかと思いました。日々の中で取り組んでいることもゼロではありませんが、もっとできそうなこともあるので、日頃からもう少し意識高め、行動に繋げていきたいと感じました。